道诡异仙

きりしま つかさ

文字の大きさ
500 / 809
0500

第0545話 司天監

しおりを挟む
身を囲む李火旺は相手の言葉を信じない態度を見て、はっきりと述べた。

「司天監大人に会わせてくれれば、彼が私の影を見れば虚偽かどうか分かるだろう」

鞭子男が指先で厳しく李火旺を示そうとしたその時、彼の顔色が変わった。

わずか一息迷った後、左へ二歩下がって囲みを開いた。

「有戏」(ゆうけい)

気を取り直した李火旺はすぐに悟り、先ほど自分が司天監に聞こえたことを察知したと確信した。

彼は意を決して拳を握り、その道を通って中へ向かっていった。

小さな林を抜けるとすぐさま巨大な馬車が小川に停まっていた。

牽く名馬は草を食べながら水を飲んでいた。

「司天監大人にお目にかかります!」

李火旺が馬車の簾に向かい礼をした時、初対面だった司天監が再び現れた。

遠目から見た頃とは違い、今や至近距離でその顔を見た李火旺はようやく監天司最高権者の容貌を認識した。

彼は通常の人より明らかに背丈が高く、それだけでなく体格も大きく、まるで一号サイズの人体のように見えた。

その巨大な身体は赤い道袍に包まれており、影が見えないほどの広さだった。

それが非常に神秘的な印象を与えた。

遠目から見た頃、李火旺は司天監の赤い道袍が単一色だと誤解していたが、よく見ればその赤の中に深紅色の文字が流動していることに気づいた。

李火旺の視力は優れており、文字の筆画までも詳細に確認できた。

しかし、その文字を理解することはできなかった。

w*****打不出来*********

(ここは原文通りに空白を維持)

それは女書よりもさらに奇妙な文字で、一画一画が独自の体系を持ちながらも、文字と絵の間を行き来するようなものだった。

警戒したように一瞬見た後、李火旺は視線を地面の枯草に戻し、急いで本題に入った。

「司天監大人にお伝えします。

わたくしがあの隠されたサイコロの場所を見つけられるかもしれません!そのサイコロは非常に巧妙で、私の能力では対応できず、天下のためならその首を斬っていただけませんか」

司天監の声には重みがあり、性別や年齢が判然としない特殊な響きだった。

しかし李火旺はそれどころではなく、彼の質問に答えようとしていた。

「詳細は要らない。

すでに耳に入っている。

ただ一つ聞きたいのは、貴方が上極灌口を知ったのはどこからか?そしてどうやって見つかったのか?」

(ここは原文通りに空白を維持)

「偶然に触れただけです」李火旺が説明した。

「偶然? ふん、現代の若者は嘘もここまで巧妙なのか。

」その言葉と共に複数の視線が彼の背中へ集中し、特に脊髄剣(せきずいけん)に注目していた。

司天監の発言を聞いた瞬間、李火旺は焦りを感じた。

「大人!なぜ枝末節な質問をしているのですか?わたくしがサイコロを見つけられるというのに!」

「急がれるのか?」



「司天監大人」李火旺の声が一気に高くなり感情も昂ぶってきた。

その日、あの塵忘道が我らを辱め監天司を無視したように見せつけた時、監天司の一員として胸中に燃える怒りは抑えきれない。

「それだけではない。

上京城中の民衆が死傷者続出している!今やその罪人である骰子を捕縛する機会だ。

この下としては一刻も早く」

「だから貴方は本座を利用したいのか」

司天監の言葉に李火旺の心は冷え込んだ。

相手の警戒心が尋常ではないことに気づき、正直に告白した。

「この下は利用などせずに、ただ監天司と同様に骰子を討つべきだと存じます」

「まあ貴方だけは率直だな。

確かに本座もその意図でいる」

李火旺の心がようやく安らぐ間もなく司天監の口から新たな言葉が発せられた。

「しかし今は些か用事があるため、しばらく手を離す必要がある。

いずれ再び」

「まだ待つのか?」

李火旺は不意に視線を乗物内の監天監官の頭部に向けると暗闇を見据えた。

「司天監大人!今この時機に、それほど重要な用事とは?」

監天司の奇妙な服装が僅かに震え、まるで首を横に向けていたようだ。

「貴方には分からない。

この世には彼より重要なことが山ほどあるのだ」

「よし承知した。

その間も貴方は暇なら上極灌口を探して本座に秘め事を教えてくれないか?」

李火旺は内心拒否の言葉が止まらないが、現状では監天監官が自らの敵である骰子を討つことに同意している限り、時間待ちでも構わないと考えた。

李火旺は彼の他に何を考えているのか分からない。

今はただ一人、骰子の首を取ることだけが願いだった。

「安心しておけ。

貴方が上極灌口の秘め事を持ち帰れば、本座も手を離す時期を迎えよう」

李火旺がその最後の一言の意味を理解した瞬間、周囲の全てが煙のように消えていた。

木々や小川、巨大な乗物などすべてが霧散し、左側には上京の城門が並んでいた。

李火旺は立ち尽くすばかりで何が起こったのか悟れず、先ほどの出来事が夢だったように感じた。

「数を追うと変化する。

形に応じて消え去る術は『幻』『化』と呼ばれる。

大梁司天監の術は確かに凄まじい」

地に残された深い馬車痕を見ながら、诸葛淵が初めて敬意を込めて語った。

「幻術?」

李火旺は新たな言葉を咀嚼しながら考えた。

自分が城門から出てきた後、経験した全ての出来事が虚構だったのだ

その事実に気づいた時、李火旺の心は冷え込んだ。

もし相手が自分に危害を加える気なら、貴方などと云う言葉さえも虚偽だったかもしれない

あの大戦の直後、李火旺は現場に不在だったが、監天司最高権者の実力の凄さをようやく肌で感じた。

その言葉に頷きながら李火旺は心の中で「確かにそうだ。

この司天監が味方なら越したことはない」とつぶやいた。

そう思えた時、李火旺は脊髄剣を抜き、美人痣の付いた細身の少女に向かって言った。

「待たせたな。

大齊で再び上極灌口を探そう」

「ええ」その女は笑みを浮かべて甘く応えた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

白き魔女と黄金の林檎

みみぞう
ファンタジー
【カクヨム・エブリスタで特集していただきました。カクヨムで先行完結】 https://kakuyomu.jp/works/16816927860645480806 「”火の魔女”を一週間以内に駆逐せよ」 それが審問官見習いアルヴィンに下された、最初の使命だった。 人の世に災いをもたらす魔女と、駆逐する使命を帯びた審問官。 連続殺焼事件を解決できなきれば、破門である。 先輩審問官達が、半年かかって解決できなかった事件を、果たして駆け出しの彼が解決できるのか―― 悪しき魔女との戦いの中で、彼はやがて教会に蠢く闇と対峙する……! 不死をめぐる、ダークファンタジー! ※カクヨム・エブリスタ・なろうにも投稿しております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

処理中です...