道诡异仙

きりしま つかさ

文字の大きさ
692 / 809
0700

第0755話 破局点

しおりを挟む
玄牝が声東を張って一部兵力を誘導したとしても、ここに残った祭神の護衛は法教の手先ではないと李火旺は確信していた。

旋光鏡に映る巨大な赤点を見やると、周囲から立ち上る線香の煙が雨雲を包み込む様子を凝視した。

彼は手中の嵴骨剣の柄をきつく握りしめた。

「玄牝が言うように、私が死を命令しても即座に従うのがお前たちだ。

今こそ決断の時だ」

「彼らが何を祀っているのか分からないが、阻止する必要がある。

私も仲間と共に突っ込む。

結果は天命に任せるだけだ。

進もう」

李火旺の一喝で、その男たちは二言も無く雨の中へと飛び出した。

たちまち戦闘が始まった。

「ぷっち」という音とともに、紫穗剣が相手の腹部を突き刺した。

反撃する敵の爪が李火旺の腹に食い込んだ瞬間、二人は同時に動き始めた。

痛みを感じるのは明らかに李火旺ではない。

彼は口を開けて喉から無数の触手を吐き出し、相手の顔面に覆い被せた。

その隙に剣を引き抜き、敵の体を二つに斬り裂いた。

近くの線香球を足で潰すと同時に、李火旺は満足そうにはならなかった。

この類の怪物は数え切れないほど存在するからだ。

雨雲が戦場全体を包み込む白煙の中で、巨大な神像の笠に流れ込んでいくのが確認できた。

儀式は進行中であり、彼らの暴走を許すわけにはいかない。

何としてでも阻止しなければならないのだ。

李火旺はすぐさま死体を引き寄せ、血まみれの腹部を開きながら娘を吐き出した。

その瞬間、彼自身が炎に包まれた。

天外の巴虺もその気配を感じたのか、李火旺の身体から次々と裂け目が生まれ、炎が傷口から這い上がってきた。

「ああ!! 巴虺め、お前のくそったれ!!」表情を歪めた李火旺は膝をついて叫んだ。

なぜか痛みがさらに増していた。

自身の体に降り注ぐ雨で炎が消えた瞬間、再び燃え上がるのを見て彼は原因を悟った。

口を開けて天からの水滴を舐めると、その味が塩辛かったことに気づいたのだ。

玄牝の警告通り、ただの神ではなく、自分自身も危機に立たされていた。

立ち上がった李火旺の周囲から炎が四方八方に広がり、彼は旱魃のように周辺を焼き尽くす存在となった。

その変化を見た怪物たちが内臓を垂らした足で囲み込むと同時に、彼らの身体が獣へと豹変し、赤い布条を振り回しながら襲いかかってきた。

李火旺は腹にナイフを入れて焦げた皮膚を剥ぎ取った。



皮肉が引きちぎられ飛び出すと、その血みちがチキンレッグの男を包み込み、パリッと焼ける音が連続する。

彼は必死に抵抗しても離さない。

李火旺は小石を口に入れて嚙み砕き、吐き出すと炎と血で覆われた歯が飛び出した。

空中で爆発したその歯は扇形に広がり、四方八方に炎の雨を降らせる。

李火旺が群衆の中を縦横無尽に斬っている時、空から二羽の鳥が現れた。

人間の頭を持つ鳥と馬面を持つ鳥が、神像の巨大な笠を周回しながら「出秧 接眚 出秧 接眚」と不協和音で歌う。

その声と共に赤い布が微かに震え始めた。

李火旺はそれを感じ取り焦りながらも、次第に手数が荒くなりきった。

チキンレッグたちは李火旺から逃げ出すばかりでなく、彼の攻撃を避けるように動いた。

李火旺と他の修真者が全力を尽くしても、空気中の白煙は薄まったものの消えることはなかった。

祭りの儀式が終わらない。

「遅い!もっと早くしないか!!」李火旺は胸の皮肉を引きちぎり、肋骨を開きながら体内から取り出した蠕虫を炎と共に撒いた。

神像が動く音が頭上に響くと、彼は再び阻止しなければ終了だと悟った。

修真術で思い浮かべるものの全てが蒼羌登階以外の術法しかなかった時、断腕の趙加宝が熱風を耐えつつ近づき、司天監からの封筒を手渡した。

「李真人!これです」

「なんだよ封筒じゃねーか?あいつは誰だ?」

そう言いながらも李火旺は急いで開け、炎で燃える前に内容を確認した。

「何だって!? あの連中が送り出した術は最初からなかったのか!? オレの修真能力に依存していたのか!!」李火旺の瞳孔が縮まった。

まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。

しかし驚きの余地はない。

すぐに次のページを読み進めた。

「李火旺、貴様はまだ記憶しているなら、オレは貴方を連れて行けない。

これが破釜沈舟だ。

退路がないからこそ全力を出せる」

「でも大丈夫だ。

生きてる道がある。

貴方が青丘からここに戻れたのは修真が完成した証拠だ。

危険に遭遇したらその術で解決するんだ。

貴方の修真で生み出すもの、この状況を打破できるものは何か?」

「オレの修真で生み出せる、この状況を打破できるものか?」

様々な経験が脳裏を駆け巡る。

李火旺は急に瞳孔を細め、額に手を当てて修真に入った。

白い影が空中に浮かび上がるが、彼の頭蓋骨は青筋立てて膨張し続けた。

赤布が動き出すと同時に、李火旺は背中の剣を地面に突き立てた。

その剣柄を見つめながら修真を続けると鼻血が流れ血管が破裂し頭蓋が割れ始めた。

対して剣の周囲には白骨が生え始め、最初は骨だけだったものが皮膚や紺色の衣服まで成長した。

「パチッ」と折り畳まれた扇子が開き、龍鳳の文字が飛び出した。

「天生我才」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

白き魔女と黄金の林檎

みみぞう
ファンタジー
【カクヨム・エブリスタで特集していただきました。カクヨムで先行完結】 https://kakuyomu.jp/works/16816927860645480806 「”火の魔女”を一週間以内に駆逐せよ」 それが審問官見習いアルヴィンに下された、最初の使命だった。 人の世に災いをもたらす魔女と、駆逐する使命を帯びた審問官。 連続殺焼事件を解決できなきれば、破門である。 先輩審問官達が、半年かかって解決できなかった事件を、果たして駆け出しの彼が解決できるのか―― 悪しき魔女との戦いの中で、彼はやがて教会に蠢く闇と対峙する……! 不死をめぐる、ダークファンタジー! ※カクヨム・エブリスタ・なろうにも投稿しております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...