国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0008話「指紋の照合」

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古いデスクトップパソコンがカREAKと音を立てながら動き始めた。

熱風がケースから吹き出し、部屋中に広がる。

しばらくすると液晶画面の右側に、マッチング率が高い20個の指紋が表示された。

江遠は焦らずにお茶を飲みながら最初の指紋を開いた。

十七叔の死でフル回転していた刑事チームが一気に緩んだことで、江遠も法医の日常に戻っていた。

特に仕事らしい仕事がなかった。

一方で、システム報酬「重慶式単指紋分析法——弓型紋鑑定(lv3)」を使い始めた江遠は、練習用の教科書と公開資料を少し使ってから実戦に移った:まず弓型紋を見つけて、それが誰のものか特定する。

最初に選んだのは隣県隆利県の強盗事件で採取された指紋だった。

命案を選ばなかった理由は「命案必破」の指導下では命案が極めて重視され資源も多いため、未解決になる前に何度も照合されているから。

未解決の命案として残っている場合は、その指紋は既に県警の痕跡捜査員が複数回照合し、それでも一致しなければ現場に戻って再採取を試みる。

全て失敗した場合、市警刑事技術中隊や省庁への依頼になることもある。

もし省庁レベルで依然として一致しない場合は、重大未解決事件に関連する指紋の照合会戦が定期的に開かれる。

参加者は各省庁や公安部の刑事技術専門家や若手エリートだ。

江遠はlv3級の卵炒飯を食べていたので、lv3弓型紋鑑定に過度な期待はしていなかった。

卵炒飯は美味しくても光を放たない。

つまりlv3弓型紋鑑定は凄く優秀だが超人間的ではない。

ましてや江遠が照合可能な指紋データベースは限定的で、最初の指紋から命案に挑むのは挫折しやすいと思った。

強盗事件の方が適していた。

まず普通の強盗事件は省庁レベルの大案件にはならないし、県警では十分な重視度があるため、痕跡捜査員が採取時に丁寧に対応したはずだ。

最終的にデータベースに登録された指紋と事件の関連性も高い。

江遠がその指紋画像を開いた瞬間、驚きを禁じ得なかった。

採取時の状況は分からないが、ぼやけていて残り半分程度しかなく、幸い親指部分だけが残っていたので照合の根拠があった。

変形した指紋もまた別の問題だった。

この状況は、普通の人が勤務時間に押した指紋とは全く異なる。

専門技術なしでは、単に特徴点をマークするだけでさえ困難で、どの指のものか判断すらできない。

システムが自動的にマッチングさせた20個の指紋は、当然ながら全て一致しなかった。

江遠もくじけなかった。

この指紋はそもそも現地の鑑識で一致せず、システムに送信されたものだからだ。

現地で一致しない理由は技術的な問題か、あるいは指紋データベースに該当するものが存在しないからかもしれない。

後者なら江遠にも手が出ないが、前者を賭けていたのだ。

指紋マッチングを行う鑑識警察官にとって努力は必須だ。

努力した上で運に頼るしかないからだ。

江遠は指紋比対の画面を閉じ、Photoshopで疑犯の指紋画像を開き直すと、その残り形態を詳細に観察し、コントラストと明度を調整し始めた。

極めて丁寧な作業だったため、わずかにも鮮明さが増しただけで30分近く費やされた。

しかし「磨刀不誤砍柴工」の真髄を知る江遠は、全ての準備が整った後、再び指紋画像を見つめるとき、より鮮明に紋路の流れが見えてきた。

次に江遠は中心点を微調整した。

残り形態が酷いだけに中心点自体が不明確だったため、そのままにしておくとシステムが勝手に推定してしまうからだ。

江遠は紋路の流れを目で追って新たな中心点を設定し、ソフトに戻して条件を修正し、確定ボタンを押した。

また20個の指紋が一致しなかった。

中心点をさらに微調整して再マッチング...

今度は3番目の指紋に江遠の視線が釘付けになった。

一般人から見れば弓型や斗形など同系統のものと区別するのが困難だが、常に指紋を見続けている人間にとっては、それぞれの特徴が「老母猪の顔の雀斑」のように慣れ親しんだ感覚になる。

江遠は3番目の指紋をクリックして画面右側に表示し、原指紋を開いて左側に並べた。

両者の類似点が一目瞭然になったのだ。

この段階では単なる特徴点の照合ではなく、直接的な類似度で判断する。

1対1の場合、人間の目はコンピューターよりも遥かに優位だ。

「一致した!」

江遠は内心でつぶやきながら肩の力を抜いた。

そのままマッチングした指紋を提出した。

規則通り、その指紋は省庁の専門家に送られ、確認後無事に承認されれば、関係先に通知され、現地が逮捕を実行する。

もちろん現地の刑事部隊も問題ない。

江遠はそれ以上気にしない。

伸び伸びと体を伸ばし、軽く運動してから時計を見ると、帰宅時間まであと少し。

単純で清廉な、死体なしの法医学者の生活だ。

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