国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0057話「勲功」

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午後。

明日が高く澄み切った空を照らし、山頂の石は日光で熱くなり、少年の股間のように灼けた。

砂利と砕けた鉱石が風に震え、粗野で犬ですら避けるようなものだった。

「大壮、座れ」李莉の声は軽やかで脆い、人々の心に微風を運ぶように響く。

長陽市の刑事たちが日光から身を隠しながら疲れと暑さに喘ぐ中、李莉の声を聞いた瞬間、皆の心が冷房室の中に沁み込んだようだった。

「これはどの部署の?」

「こんな柔らかい子が警察だと犯人さんも甘やかされて死んでしまうだろう」

「考えてみれば犬になってもいいかもしれない」

休憩時間中、無駄に雑談する群像が広がる。

指導官たちは石を並べて座り、周囲の警員たちの議論を聞き流す。

指揮車はすぐ近くにあり冷房が効いていたが、誰も乗り込む気にはならなかった。

今日の作業は多方面協力体制で、省庁から長陽市局、寧台県刑捜、森林公安、現地派出所まで、柳景輝が招いた記者数名と警犬中隊を含む複数機関が参加していた。

こんな環境では、どんなに苦労を嫌う者でも前人後に見せたくない。

最悪の場合、犬の前で恥をかくのは避けたいものだ。

「あと十分休んでから坑道に入る。

警犬はもう十分休みなさい」長陽市刑捜支隊の現場指揮官余温書が指示した。

この事件の規模は言うまでもなく、関わる各方面への影響力もあって、誰も無駄にすることを恐れなかった。

白忙しくても一生かけて何も得られないよりはマシだ。

柳景輝が汗を拭いながら頷くと、山に入った後は彼が沈黙するようになった。

報告書には記載されていない複雑な廃坑だった。

三百近い人員を集めれば登山道も詰まるが、中に入ると一斉に散開し、どこへ向かうのか何をするのか分からないように見えた。

近くの樹陰で大壮は同じ様子だった。

目の前の食器には慣れ親しんだ骨なし鶏腿肉、新鮮なチキン、大きな牛肉ブロックと豊富な野菜が並んでいた。

顔を上げる必要もなく、訓練士李莉が長い脚で作った料理の見た目と匂いは明らかだった。

普段なら大壮は少し心理的準備をしてから安心して食事をするものだ。

しかし今日は違った。

大壮の隣には隆利県の功績犬黒子がいた。

黒子の食器には骨なし鶏腿肉、大きな牛肉ブロック、さらに巨大な牛肉ブロック、卵、生クリームたっぷりのヨーグルト……その輝きと見た目は見るだけで涎が出るほどだった。

しかも黒子にはもう一つ別の食器があり、肉粥や謎の内容物が入っていた。

犬が二つの食器を持つなんて聞いたことがない。



警犬のいない世界。

ペット犬も軍犬も存在しない。

大壮が警備学校に入学した時、教官から教えられた最も基本的な知識は「一頭一食器」だった。

それが全ての基礎であり、知識の礎石だった。

その日、礎石は砕けた。

隣県の隣犬が二つの食器を持っていたのだ。

大壮だけではなく、長陽市警備犬部隊の虎子と豹子も銅色の目を丸くして中央にいる黒子を見つめていた。

尾びれをゆらゆらさせながら前方を見据える黒子は、周囲の視線など無関心だった。

大壮や虎子・豹子は尻尾が硬直し、信じられないという表情で見守っていた。

李莉は自警犬の大壮の様子を見て半身を下ろしてささやいた。

「大壮さん、比べないでください。

お歳も召されてるから養生が必要です。

任務中は食べ過ぎると眠たくなるので効率が落ちますよ」

隣の訓練士も同様に膝をついて説得した。

「警犬同士の比較は食事でも服装でもありません。

戦闘力こそが勝負です。

あの子は二等功章受賞者ですから日常の給与が高いのは当然でしょう。

我々もこの任務で二等功を取れば、毎日90元の給与になるかもしれませんよ」

警犬たちは黙っていた。

半時間後、訓練士の一喝で警犬たちが指定方向へ進み始めた。

江遠は出動命令を受けず「指導陣」に残り相談役として待機していた。

長陽市刑務警察部隊の支隊長余温書は指示を出し終えると熱いお茶を口にした。

「小江さん、緊張してますか?今回はあなたの脚本通りです」

江遠が我に返ると慌てて否定した。

「いいえ、些細なことしかしていません」

「微量証拠という言葉は二十年前から聞いていました。

実際の捜査で役立つのは本当に少ないものですよ」余温書は舌を鳴らしながら続けた。

「些細な手がかりも今や重要な証拠になるのです」

「私は微量証拠の採取だけならできますが、現場検証や分析は省庁の専門チームに任せてます」江遠は謙遜した。

余温書は江遠を指して言った。

「あなたこそ本質を見抜いています。

我々支隊の微量証拠実験室が報告する際、検査能力や手段の多さばかり強調しますが現場での採取技術は触れません。

現場側も技術面に詳しくないため両者が連携できないのです」

「技術員と現場の知識格差」省庁の三级警部補高強が頷いた。

「例えば指紋採取のように、現場で正確に採取できなければ痕跡検証室は技術を発揮できません。

江遠さんの指紋採取技術は326事件で活躍しましたよ」



「江遠の本職は法医だ。

話せば、俺が警官になったばかりの頃、技術員ってのは小江みたいな存在だったんだ。

文武両道で指紋足跡も解剖も毒物分析も弾道鑑定もできるし、銃撃事件なら弾道を調べることもできる……」余温書は江遠を見ながらますます感心していた。

現在の能動的な刑事は珍しくないが、警察学校卒業生の身体能力はまずまずで、長年刑事をやっていると体調を崩すものだ。

普通の技術員も珍しくないが、大学生が溢れかえり、ある職種が出れば争って応募する。

関連専門知識があれば日常業務はこなせる。

しかし、犯罪捜査に技術を使うのではなく、単なる後付けの鑑定書を出すような技術員は非常に希少だ。

長陽市刑事公安部には腕利きは多いが、それだけでは満足できない。

将軍なら部下が多いほど嬉しいものだ。

余温書が口を開く前に、彼の腰間の無線機がザラリと鳴った。

「4号位置に異変あり、人員を井戸へ降ろす準備中」

無線から警犬の唸り声も聞こえた。

これまで黙っていた柳景輝は地図を取り出し、そこに立てた。

「通風井だ。

深さ60メートル」柳景輝がため息をつき、複雑な表情で江遠を見やった。



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