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第0149話「危険」
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午後六時。
勤務時間終了の際、私服を着た警察官たちが次々と事務所から出て行き、各自帰宅準備に取り掛かった。
清々しい日差しの中に漂う新鮮な空気を吸いながら、多くの人々は恍惚としているように感じた。
未解決事件が積み重なるという状況がまた始まったのだ。
例年通り、そのような事件が発生すると、全署のトイレで走り回らなければならない。
専門捜査班は二週間連続で事務所に泊まり込み、各部署は深夜まで残業し、報告書を提出する際にはどう書けばいいか分からないほどだった。
通常、一件の殺人事件が発生すると、上下関係全体を一週間も揺るがせ、専門捜査班は一ヶ月間も追及することになる。
これは標準的なケースだ。
ただし、一ヶ月経っても未解決の案件がある場合、専門捜査班は疲れきっているし、解決不可能な事件は未解決ファイルに置かれるのが一般的だった。
かつてはそのような未解決ファイルに落とされた事件がほとんど解明されることはなかった。
それが未解決事件が特に重視される理由の一つだった。
その難易度は超絶的だ。
発生時に即時捜査を開始した専門捜査班が、優位な状況でさえも解決できなかった案件が、解決されたというケースがある。
ただし、事件が連鎖的に発生している場合は別として、そのような解決事例には研究に値する要素が多かった。
今回の事件はたった一日で解決したのだ。
専門捜査班のメンバーも驚きを隠せない。
一般巡査たちにとってはなおさらのことだ。
彼らは夜間用の寝袋を準備しておいたのに、上級部局から帰宅許可が出たと知らされ、むしろがっかりしていた。
事務所で一週間過ごすのは苦痛そのものだったかもしれない。
しかし家に一日も戻れない状況では、妻とも子供とも会わずにいられ、同僚たちと一緒に寝泊まりできるというのも人生の至宝のような体験だったのだ。
結局、良いことも悪いことも起こらなかった。
人々は普段通り、事務所を出て、門限を超えて家に帰った。
その表情は奇妙で、何やら不思議そうだった。
江遠だけが意気軒昂といった様子だ。
足跡鑑定の特異性は高くないものの、現在江遠が掌握している技術と比べれば十分な補助になる。
江遠は歩きながら人々の歩く姿を観察していた。
男性も女性も若い者も年老いた者も、歩行の仕方はそれぞれ異なる。
ある足跡鑑定の専門家が本を執筆しようとしている際、二十代前半の人々の足跡を判断するのが苦手だったという有名な話がある。
そこで彼は特定の道路で人々の歩く様子を観察していたところ、ある二十歳前後の男性が突然跳び上がったのを見た。
その瞬間、彼は悟りを得たのだ。
江遠も得られた情報を足跡から検証し続けている。
江村住宅街を通る道路のうち、一部区画が掘削中で地面に散乱した足跡がある場所では、特殊な足跡の所有者を推測できた。
例えば杖をついて1号棟に向かう人物は三爺様だろうと、若い女性の歩幅から体格や筋肉質さを感じ取り、六堂妹の存在が頭に浮かんだのだ。
再一人荷担重物、単独で背負う重量は百斤(約45kg)に達し、まさに……一具の遺体の重量だった。
江遠が身を凍らせるように驚き、慌てて詳細を観察した。
地面の足跡は複数人分の荷担があった。
江遠が眉根を寄せた。
若者同士のロマンチックな遊びなら一組の足跡も許されるが……二組の足跡が前後に並ぶのは何事か?
二人一組で何か犯罪を働いたのか? 江村ニュータウンはその名の通りに裕福だが、現代では珍しい強盗や組織的な強奪などはほとんど発生しない。
稀少な海鮮料理も食べられるが、稀少な銃弾も食卓に並ぶのが常識だった。
江遠が険しい顔で家路を急がないまま、重い足音の方向へと進んだ。
掘削現場を通り過ぎた後も足跡はしばらく続いた。
江遠が顔を上げると、なんと自宅の建物に到着していた。
「自家が最も危険だ」という確信が芽生えた。
富士町は全県で最も金持だが、江遠にも敵対する人物は存在した。
この状況では警察へ通報するのが正解だったが、我慢できずエレベーターに乗り込んだ。
階数を押す際、意図的に二つ下のボタンを押した。
ドアが開くと江遠は警戒しながら降り立ち、消防階段を上った。
自宅前では人声が賑やかだった。
「眉根を寄せた」江遠が首を突き出すと、十七叔の家のような惨状ではない普通の食事会場に気付き、ほっと息をついた。
テーブルには一頭分の牛肉が並び、酒器類も整然と並んでいた。
「遠哥、どうして階段で上がってきたんだ?」
江永新が玄関から声をかけた。
「遠君帰宅!」
廊下にはシャンパングラスに白ワインを割った叔父たちが笑顔で挨拶。
彼らのTシャツ姿は西洋風パーティーとは明らかに違っていた。
「遠君、遠君!」
山叔と富士町が現れた。
山叔は訪問客らしく一頭分の牛肉を持参し、富士町が鍋から煮た肉を切り分け始めた。
江遠が我ながら呆れる。
「自分が狂っているのか……? こんな重い荷物を運んでくるなんて、自分の家に来ようとしているのか……」
「鍋に入りきらない部分は冷蔵庫の倉庫で保管している」
「あぁ、腿と頭は事前に切り離してあったんだな」
「そうだ。
搬上させた」
江遠がため息をついた。
「そう考えれば普通だよ。
一太刀の牛肉の重さは外見似た若い女性くらいか……価格も同じくらいだろう」
「不用意に重い贈り物だね、山叔」江遠が礼を述べた。
「当然だ」山叔は爽やかな表情で言った。
「我々全員が騙されたんだから、単独の被害者じゃない。
私が犯人を捕まえた話をしたら皆大喜びだった」
山叔の様子からは全く金銭的被害を受けたとは思えなかった。
富士町は黙って息子に「スープか肉か」と尋ねた。
「両方」
富士町がキッチンに戻り、大きな椀を手に取った。
隣の板の上で切り分けた牛肉を数切れ入れ、スープを注ぎ、再び鍋に戻し、もう一度スープを注ぎ、ネギやニンニクを散らし、岩塩とコショウを振りかけ……。
香り高い牛肉スープが完成した。
江遠が椀を持ち上げ鼻を近づけると、その深みに思わず息を飲んだ。
「お待たせ」富士町が切り分けた肉を添えた。
「これもどうぞ」
江遠は椀をテーブルに置き、山叔の顔を見つめた。
勤務時間終了の際、私服を着た警察官たちが次々と事務所から出て行き、各自帰宅準備に取り掛かった。
清々しい日差しの中に漂う新鮮な空気を吸いながら、多くの人々は恍惚としているように感じた。
未解決事件が積み重なるという状況がまた始まったのだ。
例年通り、そのような事件が発生すると、全署のトイレで走り回らなければならない。
専門捜査班は二週間連続で事務所に泊まり込み、各部署は深夜まで残業し、報告書を提出する際にはどう書けばいいか分からないほどだった。
通常、一件の殺人事件が発生すると、上下関係全体を一週間も揺るがせ、専門捜査班は一ヶ月間も追及することになる。
これは標準的なケースだ。
ただし、一ヶ月経っても未解決の案件がある場合、専門捜査班は疲れきっているし、解決不可能な事件は未解決ファイルに置かれるのが一般的だった。
かつてはそのような未解決ファイルに落とされた事件がほとんど解明されることはなかった。
それが未解決事件が特に重視される理由の一つだった。
その難易度は超絶的だ。
発生時に即時捜査を開始した専門捜査班が、優位な状況でさえも解決できなかった案件が、解決されたというケースがある。
ただし、事件が連鎖的に発生している場合は別として、そのような解決事例には研究に値する要素が多かった。
今回の事件はたった一日で解決したのだ。
専門捜査班のメンバーも驚きを隠せない。
一般巡査たちにとってはなおさらのことだ。
彼らは夜間用の寝袋を準備しておいたのに、上級部局から帰宅許可が出たと知らされ、むしろがっかりしていた。
事務所で一週間過ごすのは苦痛そのものだったかもしれない。
しかし家に一日も戻れない状況では、妻とも子供とも会わずにいられ、同僚たちと一緒に寝泊まりできるというのも人生の至宝のような体験だったのだ。
結局、良いことも悪いことも起こらなかった。
人々は普段通り、事務所を出て、門限を超えて家に帰った。
その表情は奇妙で、何やら不思議そうだった。
江遠だけが意気軒昂といった様子だ。
足跡鑑定の特異性は高くないものの、現在江遠が掌握している技術と比べれば十分な補助になる。
江遠は歩きながら人々の歩く姿を観察していた。
男性も女性も若い者も年老いた者も、歩行の仕方はそれぞれ異なる。
ある足跡鑑定の専門家が本を執筆しようとしている際、二十代前半の人々の足跡を判断するのが苦手だったという有名な話がある。
そこで彼は特定の道路で人々の歩く様子を観察していたところ、ある二十歳前後の男性が突然跳び上がったのを見た。
その瞬間、彼は悟りを得たのだ。
江遠も得られた情報を足跡から検証し続けている。
江村住宅街を通る道路のうち、一部区画が掘削中で地面に散乱した足跡がある場所では、特殊な足跡の所有者を推測できた。
例えば杖をついて1号棟に向かう人物は三爺様だろうと、若い女性の歩幅から体格や筋肉質さを感じ取り、六堂妹の存在が頭に浮かんだのだ。
再一人荷担重物、単独で背負う重量は百斤(約45kg)に達し、まさに……一具の遺体の重量だった。
江遠が身を凍らせるように驚き、慌てて詳細を観察した。
地面の足跡は複数人分の荷担があった。
江遠が眉根を寄せた。
若者同士のロマンチックな遊びなら一組の足跡も許されるが……二組の足跡が前後に並ぶのは何事か?
二人一組で何か犯罪を働いたのか? 江村ニュータウンはその名の通りに裕福だが、現代では珍しい強盗や組織的な強奪などはほとんど発生しない。
稀少な海鮮料理も食べられるが、稀少な銃弾も食卓に並ぶのが常識だった。
江遠が険しい顔で家路を急がないまま、重い足音の方向へと進んだ。
掘削現場を通り過ぎた後も足跡はしばらく続いた。
江遠が顔を上げると、なんと自宅の建物に到着していた。
「自家が最も危険だ」という確信が芽生えた。
富士町は全県で最も金持だが、江遠にも敵対する人物は存在した。
この状況では警察へ通報するのが正解だったが、我慢できずエレベーターに乗り込んだ。
階数を押す際、意図的に二つ下のボタンを押した。
ドアが開くと江遠は警戒しながら降り立ち、消防階段を上った。
自宅前では人声が賑やかだった。
「眉根を寄せた」江遠が首を突き出すと、十七叔の家のような惨状ではない普通の食事会場に気付き、ほっと息をついた。
テーブルには一頭分の牛肉が並び、酒器類も整然と並んでいた。
「遠哥、どうして階段で上がってきたんだ?」
江永新が玄関から声をかけた。
「遠君帰宅!」
廊下にはシャンパングラスに白ワインを割った叔父たちが笑顔で挨拶。
彼らのTシャツ姿は西洋風パーティーとは明らかに違っていた。
「遠君、遠君!」
山叔と富士町が現れた。
山叔は訪問客らしく一頭分の牛肉を持参し、富士町が鍋から煮た肉を切り分け始めた。
江遠が我ながら呆れる。
「自分が狂っているのか……? こんな重い荷物を運んでくるなんて、自分の家に来ようとしているのか……」
「鍋に入りきらない部分は冷蔵庫の倉庫で保管している」
「あぁ、腿と頭は事前に切り離してあったんだな」
「そうだ。
搬上させた」
江遠がため息をついた。
「そう考えれば普通だよ。
一太刀の牛肉の重さは外見似た若い女性くらいか……価格も同じくらいだろう」
「不用意に重い贈り物だね、山叔」江遠が礼を述べた。
「当然だ」山叔は爽やかな表情で言った。
「我々全員が騙されたんだから、単独の被害者じゃない。
私が犯人を捕まえた話をしたら皆大喜びだった」
山叔の様子からは全く金銭的被害を受けたとは思えなかった。
富士町は黙って息子に「スープか肉か」と尋ねた。
「両方」
富士町がキッチンに戻り、大きな椀を手に取った。
隣の板の上で切り分けた牛肉を数切れ入れ、スープを注ぎ、再び鍋に戻し、もう一度スープを注ぎ、ネギやニンニクを散らし、岩塩とコショウを振りかけ……。
香り高い牛肉スープが完成した。
江遠が椀を持ち上げ鼻を近づけると、その深みに思わず息を飲んだ。
「お待たせ」富士町が切り分けた肉を添えた。
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(。-人-。)
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