国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0183話「複雑な気持ち」

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「また中だ?」

先入室したのは伍軍豪だった。

ドンバーンと上階の音が半分の廊下まで響き、声は一階全体に届くほど大きかった。

伍軍豪が部屋に入ると、信じられないという表情で固まった。

彼は釣り人だ。

毎日水库で釣りをしているが、たまに二十キロ級の大魚を釣るだけ。

長い間見つからないのは三十キロ級の魚で、ほとんど自分で釣ったものではない。

江遠は隣の席の若い男のように見える。

赤い帽子と黄色いベストを着ていて、新入社員らしく、一投ごとに五十キロの大魚を釣り上げる。

まだみんなが興奮している間に「また中だ」と叫んだ。

伝説的な成果!

実際に目撃しなければ伍軍豪は水库にそんな大魚がいるとは思えなかった。

通常の県警でも、普通の年では命案未解決事件を解決しないものだ。

戦力ランキングで未解決事件を三百点とし上位無制限に設定する理由がある。

「同一認定です」と江遠は淡々と言った。

彼の姿勢は釣り上げた大魚を持つ釣り人そのもの。

声調も態度も傲慢ではなく、肩に乗せた獲物がそれこそ傲慢で豪放だった。

伍軍豪は自然とため息をついた。

寧台県警重案一課の事実上の组长である彼は、未解決事件を解決したことがない——正確には逃亡犯を逮捕したことがある(公安部の分類では未解決事件に含まれる)。

しかし刑事として、未解決事件を解決したことはない。

多くの刑事も同様だ。

伍軍豪は突然江遠を見つめながら「昔から指紋を学んでいればよかった」と言った。

隣の席の厳革と王鍾はかつて指紋を専門にしていたそうだ。

伍軍豪は鼻高々に笑った。

吴君は噴き出して「厳革と王鍵は指紋を専攻したんだよ」と付け足した。

江遠は謙虚さを装うように「たまにはあるけど、多くの重大犯罪者は再犯するんですよ。

この容疑者みたいに十年前(事件発生から七年後)喧嘩で派出所に行き指紋を残し、六年前も同じ理由で行っていたんです」

未解決の罪人は逆に気安く行動する。

偶然殺人したなら隠遁生活が可能かもしれないが、強盗殺人犯は捕まらない限り規律を守る可能性は低い。

江遠が比中させたのはそういう人物だった。

彼は十年前(事件発生から七年後)喧嘩で派出所に行き指紋を残し、六年前も同じ理由で行っていた。

江遠は当地の派出所の指紋採取技術の低さにため息をついた。

過去の全省規模の指紋データベース作成時には一度でもヒットしたはずだ。

ドンバーン。



黄強民は軽やかな足取りで法医検視室へと向かった。

最近の訪問頻度は、これまでの10年間を合わせても類を見ない。

「江遠(こうえん)」と呼びかけると、

「黄隊長(こうたいちょう)。

報告に行くべきです」と江遠が慌てて立ち上がる。

功績を挙げた時ほど言葉に気をつけねばならない。

例えば土地収用期の家は、取り壊された分だけ補償が増え、

その際こそ地域活動への積極参加が求められるように。

同様に釣り人が持つ魚の大きさと礼儀正しさには比例関係がある。

これは他人へのアドバイスを提供する妨げにならない。

黄強民は江遠の態度を好んで、口角が66.6度まで上向きになるほど笑う。

「電話でいいよ。

貴方が事件を解決してくれれば最高だ。

形式的な手続きは不要さ」

伍軍豪(ごぐんごう)らは大隊長と会ったことが少なかったため、

この光景に驚きの表情が浮かんだ。

「嫌疑者の所在は特定できた?」

と黄強民が尋ねると、

江遠は頷いて「住民登録情報から長陽市へ移動したと思われます」と答える。

黄強民は特に驚くこともなくうなずき、「老伍……」と呼びかけると、

「黄隊長!」

と伍軍豪が即座に応じる。

「この逮捕作業はお前に任せる。

江遠……」と黄強民は江遠を見やった。

重大な命案の解決で三等功賞か褒状を受ける可能性があるため、

単独での解決と実刑執行が重要だ。

江遠はその点にあまり関心を持たず、連続して積年の未解決事件を解決したことで、

自分の基準(閾値)が上がったようだった。

「引き続き未解決事件の捜査を続けます」と江遠は首を横に振る。

「構わないよ。

この先は積年の未解決事件を担当してほしい」と黄強民は即座に了承し、

伍軍豪に手を振った。

伍軍豪はすぐに部屋を出て行ったが、

このような案件の場合、犯人を特定すれば逮捕の難易度は低い。

しかし逆に失敗は許されない。

普段から大らかな伍軍豪も、任務時はきっちりと真剣になる。

命案未解決事件の犯人は特に油断できない。

「疲れたなら帰って休め」と黄強民が江遠を振り返る。

「それなら僕は宿舎で寝ます。

昨日も徹夜でしたから」江遠は考える。

もしオフィスに残れば、いずれかのタイミングで同僚たちが訪ねてくるだろう……

警察仲間にとって連続解決という事実は刺激的だ。

山南省でも類似の状況は10年以上前のことだった。

当時はDNA鑑定室が設立され、大量の未解決事件が解決された時期だった。

ある県では「全ての未解決事件を解決する」というスローガンまで掲げられたほどだ。



山南省のいくつかの県はその後も恥をかいたが、全国的には数県が未解決殺人事件を完全に解消するという驚異的な成果を上げた。

時を経て犯罪者は賢明になり、過去の成功を再現するのは時期が遅すぎた。

連続で未解決殺人事件を解決することは想像を超えるものだった。

江遠はすぐに去り、法医検視室も静かに戻った。

自宅では何も考えずに長時間眠り、その後事務所に戻って案件を選んだ。

17年前の未解決事件まで遡り、さらに以前のものを探すのは本当に困難だった。

DNA鑑定で解明可能なものは既にほぼ網羅されていたし、指紋鑑定可能な条件も酷いものばかりだった。

実際、各省庁が毎年発表する未解決事件解消報告を見れば、大多数はDNAと指紋による解決であり、伝統的な刑事の手掛かり追跡三原則は過去数年にわたり繰り返し試みられていた。

1日が過ぎた。

何も起こらなかった。

吴軍は満足げだった。

これが普通の事務所の雰囲気というものだ。

江遠も受け入れ、吴軍を送り出し、自ら他の事件の指紋鑑定に没頭した。

調整された総攻撃態勢を簡単に無駄にするわけにはいかない。

次の日、伍軍豪らは容疑者を寧台県に連行した。

過去の未解決事件の容疑者は犯した犯罪を忘れ去っていた。

彼自身が言うように「終わったことだ」というのがその理由だった。

実際、伍軍豪らが身分を明かすまで自分が誘拐されているとは知らなかった。

わずか2日間の取り調べで容疑者は白状した。

黄強民は前警視長を招き報告を受けた。

伍軍豪が事件を説明し、「容疑者崔亮は地元国営企業の臨時職員で、金銭目的で犯行に及んだ。

被害者とは知らず、農村信用組合近くで取引が多い人を見つけて尾行し、偏僻な場所で強盗した」と続けた。

「崔亮はその方法を何度も成功させたが、今回は被害者が哀願し関係性を説いた。

崔亮の所属企業にまで話題になった」

「崔亮は恐怖を感じて殺害を決意し、被害者を指定場所へ追い出し跳ね飛ばした…」

70歳近い前警視長は静かに話を聞き続け、退出するまで一言も発しなかった。

黄強民が江遠に会釈して追いかけて行った。

二人はそれぞれタバコを手に、複雑な思いを抱えながら並んでいた。

昨日書くのが遅くなり章を終わらせなかったので寝たというメッセージで締めくくる。



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