国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0223話 文書鑑定

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監視室。

黄強民(こうきょうみん)はタバコを吸いながら、雷鑫(らいしん)が犯人を取調べている様子を見つめ、口を滑らせた。

「予審担当の連中、態勢を張るというよりは、何か意地悪そうに構えているように見える」

「この若造、運が良すぎるんじゃないか?」

「ここでは少し本質的な話が出ているようだ」

すると白躍群(はくやくぐん)が余裕の表情で袁家(えんけ)の長と次男を引きずり出した。

黄強民は目を見開いた。

まさかこの事件が自分たちの頭に舞い戻ってくるとは?

しかも、袁家の入室侵脱被害者から殺害計画の容疑者へと立場が逆転したのか!

黄強民は瓜田でサルのように飛び跳ねていたが、突然十一二歳の少年を見た。

項(くびもとに)に銀輪をつけ、鋼叉を握りながら。

黄強民は胸を押さえ、深呼吸しながら江遠(こうえん)を見る。

「これで大変なことになった」

江遠は自信満々に答えた。

「事件があれば解決すればいいんだ。

関係ないさ」

「他人を指嗾して殺させるような事件は最も厄介だ。

基本的には口供以外の証拠がほとんどないからね」

黄強民は頭の中を裁判で悩ませる思考が駆け巡りながら、周囲にいる警官を見回した。

「それに袁建生(えんけんせい)の二人息子に関わってくる。

当然建元社(けんげんしゃ)の継承問題も絡むからね。

あー、大変なことになった」

黄強民が言わないのは、これは単なる捜査や事件解決の範疇を超えた事柄であるということだ。

建元社は清河市(せいがいし)の主要納税者であり、特に民間企業の中では優れた存在。

清河市に20年も根を下ろしているからこそ、遠隔地の県警刑事課長ひとりで手をつけるような相手ではない。

事件解決は可能かもしれないが、それ以外の問題については、正直なところ黄強民には関与する資格すらない。

「上部に報告しよう」

黄強民はこの種の困難な状況に慣れた鳄(かぐや)のように、少し困惑した表情を浮かべた。

清河市にとって建元社が上市目前で最も繁栄している時期だ。

皆が収穫期を迎え、木陰で満腹になるつもりだったのに、肥料争奪戦まで争うとは!

江遠は取調べの様子を見ながらも、すでに定罪ではなく、裏切り者の特定に思考を移していた。

彼らが現在掌握している情報によれば、袁家の長男袁語明(えんごめい)と次男袁語朗(えんごろう)には嫌疑がかかる。

そして、直接殺害したのではなく、他人を指嗾させた可能性が高い。

その場合、作動時間や能力も必要ないため、指嗾の方が容易だ。

黄強民が言った通り、指嗾は口頭で済むものだから、基本的には口供以外に証拠がない。

口供なしでは立証できない。

利益関係という手もあるが、それは先に利益を支払った場合のみ有効だ。

袁家の長男と次男がこの事件において支払うべきは情報料だろう。

彼らが白躍群(はくやくぐん)に約束したものは、今後の数年かけてゆっくりと返済できるものだったはず。

しかし、その人物も予想していなかったのは、白躍群の不在場証拠が崩れた後、彼の精神状態が完全に崩壊し、次の数年など構わなくなっていたということだ。

間もなく白躍群のカメラが回収された。

黄強民はそのまま画像捜査班へと向かい、技術員が即座にデータ解析装置に接続した。



はくえつぐんはカメラにパスワードを設定した意味がわからなかった。

現代の警察はそのようなデバイスでデータをコピーし、自動的にリスト化して分析レポートを作成するのだ。

コンピューターやPDA上で直接操作される。

最近撮影された数枚の写真がすぐに表示された。

やはり袁語堂(えんごうどう)がハードトレーニングをしている様子や誕生日を祝う場面、縛られている姿だった。

最後には白躍群(はくえつぐん)が複数回撮影した一枚の紙片があった。

「黄強民に言われなくても」というメッセージが書かれていた。

ネットワークセキュリティ技術員が即座に微信アカウントをシステムに入力し、検索を開始した。

現代のサイバーセキュリティは微信や支付宝などのチャットアプリとインターフェースを持っている。

警察が電話番号を入れれば会話記録が閲覧可能だ。

現在の詐欺行為は横行しており、サイバーポリスも同様の方法で犯人を追跡する。

白躍群の微信アカウントは明らかに新規登録だった。

連絡先は彼一人だけ。

友達申請後に大量の画像が送られてきた。

画像鑑識課の警察官たちは全ての写真を保存した。

そこには白躍群から袁語堂への催促メッセージと位置報告が記載されていた。

時間ごとに記録されたログを見ると、袁語堂の行踪を知る人は多いものの、実際に監視するか何らかの手段で確認する必要があった。

例えば白躍群自身も当時の袁語堂の状態について詳しくは把握していなかった。

そこから何か発見できるかもしれない。

最後に袁語堂の位置報告が更新された後、その微信アカウントからはメッセージが送られなくなった。

画像鑑識課の警察官たちは写真を見終わった後、沈黙に陥った。

あるいは自己閉鎖状態に入ったと言えるだろう。

映像から犯人を探すことは常人の直感に合致する方法だが、画像鑑識警察にとっては時間と精力を大量に消費する作業だ。

例えばスマートフォンの盗難事件で被害者が監視カメラの確認を求めても、多くの場合警察は見向きもしない。

まず事件が実際に発生したことを証明する必要があるからだ。

犯人が顔を隠すと主要な監視カメラではその行動を撮影できない。

失主が「あの男だ」と叫んでも警察にとっては不十分だ。

次に安全確保の上で追跡する場合、監視カメラのルートをたどって犯人の住居や移動手段を探る必要がある。

例えば城中村に住んでいれば、または監視カメラがない区間があれば、あるいは犯人がナンバープレートが鮮明な車を使わなければ捜査は進まない。

最終的に逮捕したとしても、スマートフォンの評価額が3000円や5000円程度なら起訴基準に達しないのだ。



当然、目の前の事件は追及し続ける必要がある。

だがどの方法で追及するかが捜査官を悩ませる点だ。

江遠が近づいてきた、「そのメモの写真をコピーして私のメールに送ってくれないか?」

「えぇ、すぐやりますよ」捜査官が即座に応じて操作を見せた。

江遠に渡すと尋ねた、「文書鑑定に出すんですか?これだけの文字なら難しいかもしれません」

「うん、まずは自分で見てみるわ」江遠は清河市に名だたる文書鑑定専門家がいないことを知っていた。

だが自身がLV3の文書鑑定スキルを持つため、文字数が少ないこと自体を問題視しなかった。

ファイルにとって文字数の少なさと多さは別の見方があるからだ。

例えばこの写真には「」という記号と数字列だけが映っている。

一般人なら筆画や字形などから比較するだろうが、江遠が最も注目したのはアラビア数字だった。

アラビア数字は漢字と比べて単純に見えるが、鑑定可能な要素は意外と多い。

現代では書く機会が減りつつある中、経済事件などでは文字数が少ない分野だからこそ、数字の出現頻度が高いのだ。

しかも中国の刑事警察だけでなく、世界中の文書鑑定専門家もアラビア数字を研究する。

円の描き方だけ取ってみても、0689は完全に閉じた形で、235は半分開いている。

また円の筆跡方向では時計回りが2358、逆時計回りが0と6となる。

単に円の描き方からも個人の筆跡特徴を読み取れる。

例えば14679の書き始めや終わり方、線の延長部分、数字の傾斜角度なども鑑定ポイントになる。

連続する数字同士の間隔や文字の接続方法、高低関係なども検証項目となる。

結局文字数が少ないのは問題ない。

手掛かりはいくらでもあるのだ。

江遠は黄強民にメッセージを送った、「黄隊長、建元社の手書き資料で文書鑑定の比較が必要です」

黄強民「誰が鑑定する?」

江遠「私がやりますよ、まずは自分で試してみます」

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