国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0231話 彼女の足

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清河学院は三面が街、一面が川に接している。

学生たちはその三面に複数の穴を開けた。

一メートル五六センチの高さの大きなものもあれば、腰を曲げて通れる程度の中大のものもあり、さらに小さいものは外送用の隙間すら作れないほどだった。

赤い塀に刻まれた傷跡を見ると、それぞれの穴が成長しているように見えた。

もし学生たちが通り抜ける際に手で触れたとすれば、その穴は普通のドアと同じ大きさになる可能性も十分にあるだろう。

清河学院では定期的に高い塀に穴を開けさせないように取り締まりを行う。

発見された穴は簡単に塞がれ、周囲は強化されるため、学生たちが再び穴を掘る際に危険が生じないよう配慮されていた。

校長の秘書が、穴の向かいにある小料理店の監視カメラ映像を警察に渡した。

その映像にはカメラが直接穴を見張っている様子が収められ、出入りする人々の顔まで鮮明に撮影されていた。

「学生たちはこのカメラについて知っていますか?」

江遠は最近卒業したばかりで、その映像の脅威性を直感的に感じていた。

「知りたいなら知るでしょう」校長は満足げに笑った。

「貴方たちの言葉で言えば、このカメラの目的は捜査用であって証拠用ではないんだ」

証拠として使うのは一度きりだが、捜査用であれば何度でも利用できる。

学生が密かに出かける際には通常カメラを避けないし、避けることもできないため、その存在さえ確認できれば学校には証拠に使えるカメラが無数にある。

江遠は校長の顔を上から下まで見回した。

国字顔の男は正義感に溢れて見えるが、実際には左鼻孔の方が右より小さく、何かしら陰険な印象を与えていた。

「役立つのか?」

校長は親しげに尋ねつつ、警察の操作を観察していた。

その様子は曾卓琥の学生たちと酷似していたが、今回は警察の動きが理解しやすかった。

校長・衡文宣も学んだように満足げだった。

「まあ、何があるか分からない」江遠は曾卓琥の数名の学生を見やると、彼らに一抹の同情を感じた。

警察はカメラ一台ずつ捜索を続け、盗賊を見つけ出すまでに5つの穴を調べ上げた。

江遠はもう飽き飽きしていたが、「これなら門限を緩和した方がいいんじゃないか」と思った。

映像では明らかに二人の盗賊が順番に腰を曲げて出て行き、スーツケースを運ぶ様子が確認できた。

通りすがりの学生たちも手伝っていたようだ。

しかしカメラは彼らの下半顔まで覆い隠した姿を捉えていた。

警察官は呆れながら言った。

「今の学生たちは一体どうなっているんだ?こんな格好なのに誰か通報するのか」

江遠はその意見に賛同できなかったが、盗賊たちの顔を見るとまたもや納得せざるを得なかった。

「そうだ。

もしサルがスーツケースの中に入っていたら、鳴かないわけがないでしょう?」

江遠は曾卓琥に尋ねた。



「声を出すはずだ」曾卓琥は首を横に振った。

江遠が頷きながらも薬品を使った可能性は口に出さなかった。

「そろそろ指紋採取だな」江遠は動画画像の洞窟天井部分を軽くタップした。

荷物を持っていた女性はスーツケースを持つため出入口で壁に手を添えたが、彼女は手袋をしていなかった。

この酷暑では顔を隠すのは日焼け対策だが、さらに手袋をするのは苦痛そのものだ。

しかしサルを盗んだ際には二人とも手袋をしていたのだろう。

外に出た後で脱いだに違いない。

動保楼から十数分後に気づかれたというのも偶然ではなかった。

こうした露見する窃盗は少なくない。

素人なら「自分が犯行したら全身を包んで、門前まででも外さない」と考えるかもしれないが、実際には難しい。

これはプロの犯罪者の専門性が現れる部分だ。

彼らは必ずしも事前に訓練を積んでいるからこそ、そうした状況に対処できるのだ。

サル泥棒の二人が手袋をずっとしていた理由は想像力不足ではなく、物理的に不可能だったからかもしれない。

例えばスーツケースを持ちながら手袋をして烈日の中十数分歩くと疲れるし、荷物を落とす危険もある。

その場合、道端で手袋を外して休憩するか、汗を拭いて再開するか。

あるいは電話やスマホを使う際にも手袋は邪魔だったかもしれない。

サルの梱包時に手袋を外す必要があったり、サルに薬を飲ませたり注射をする際にはそのような操作が必要だった可能性もある。

結局犯罪行為は知性と体力の両方が求められるもので、実行中に意図しない問題や困難が必ず発生する。

未訓練の者が完璧にそれを乗り切るなら特務工作員として推薦したいところだ。

刑事科の人間は絶対に完璧犯罪を信じない。

普通の警察も同じく疑わない。

彼らは投入を増やすことで成果を得ると考えるからだ。

江遠のような人材こそがその「投入」の一部である。

一大群人がぞろぞろと洞口へ向かう。

江遠自身が指紋採取用の土産を持参した。

この指紋採取は容易ではなかった。

まず位置を特定するのが困難で、複数人の重ねた指紋があるため専門技術が必要だった。

江遠の対応策はまずレンガの位置を特定し写真撮影・番号付けしてそのまま実験室へ送り込むことだった。

これは寧台県警ではなく清河市警の実験室に依頼したため、後で証拠として保存する必要があったからだ。

これらの作業が終わると江遠は悠々と曾卓琥の事務所に戻り、彼の動画編集を手伝い始めた。

学生たちは感服し、一方では映像技術に熱心に取り組みながらも、江遠のためにお茶や水を運び回っていた。



再遅れば、数名の女子生徒が事務室に押し入ってきた。

曾卓琥は目をつぶって見ている。

彼には口出す資格などない。

ただ傍らで様子を見ながら、なるべく崩さないように気をつけているだけだ。

女子たちにとって、背丈の高い江遠は外見では80点満点といったところだが、今日は何か特別な光を放っているように見える。

「江法医さん、あなたがブロックを採取したのは、上から指紋を採取するためですか?」

女子たちは江遠がパソコンで読めない命令文を入力している様子を見つめながら、今日のニュース事件について質問を投げかけた。

江遠はうなずき、「そのとおりです」と答えた。

質問したのは細身で平胸の少女だった。

尖った顎とネットアイドルのような顔立ちが特徴で、今日は上品なメイクをしていて見事に可愛らしい。

甘い声で尋ねた。

「指紋を採取したら、それで犯人を特定できるんですか?」

「一致すればいい」

「一致とはどういうことですか?」

「指紋データベースと照合するということです」

「指紋データベースって何ですか? その中にない場合は照合できないんですよね?」

「そうだ」江遠はそう言いながら、質問した少女の足元を見やった。

今日は数人が同じような質問をしていたが、ここまで詳細に尋ねる人は初めてだった。

すると学生会の女子が鼻を膨らませて言った。

「うちの学校の生徒なら逃げられないわ」

「なぜですか?」

甘い声の少女は興味津々に見つめた。

学生会の女性は舌打ちをして、彼女を見やった。

「あなたは毎朝の早朝運動で指紋認証が必要でしょう? そのシステムにはあなたの指紋が保存されているんです」

甘い声の少女は驚きの表情を浮かべた。

その反応は明らかに普通ではない。

江遠は思わずその足元を見やった。

するとその少女はドアから出て行った。

江遠は動かなかった。

曾卓琥も何かおかしいと気づいたのか、急いで言った。

「追いかけてあげない?」

「追えない距離だよ」江遠はそう言いながら電話をかけ始めた。

単独で逮捕するのは危険だから隊長が禁止しているのだ。



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