国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0436話 合意

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翌日の正午。

会議室にて。

江遠積案専門チームが会議を開催中の際、黄強民から電話がかかってきた。

「江遠、貴方たちは安心して待機を。

帰りたいなら帰っても構わないし、侯楽家その小気味悪い奴のことは気にしないでくれ。

命案だぞ、今や自分でやるほど気が狂っているんだ。

頭がおかしくなったんじゃないか」

黄強民は大声で叫びながら、周囲に聞こえるように意図的に声を張り上げていた。

「彼ら以前から自分でやっていたんじゃないですか」江遠は笑みを浮かべた。

「それならその成績を見れば分かるだろう」黄強民は鼻を鳴らして返す。

「とにかく貴方の手元にある案件に集中しろ。

北京まで飛ぶのは数時間のことだ。

もし北京で命案が発生したら、我々がバタバタと駆けつけるなんて理屈にも合わないだろう」

「その通りです」江遠は外回りを長くしていたせいで管轄権の問題にあまり注意していなかったが、ここでは黄強民が全て整理してくれたおかげでスムーズだった。

「とにかく簡単な案件なら侯小気味悪い奴一人でやれるし、我々が必要ない。

複雑な案件なら親子でもないのに一生面倒見続けるわけにはいかない」

黄強民は朗らかに続けた。

「いずれ彼が再び連絡してこなければそれで終わりだ」

その言葉に江遠も頷いた。

簡単な案件なら不要な協力は意味がない。

刑事事件と会社プロジェクトでは異なる性質のもので、その後の手続きも多くかかる。

警察側から見れば単純でも送検後に問題が生じるケースは少なくないし、死刑確定までの厳格な審査プロセスも考慮する必要がある。

特に致死量を追求する場合、数年経って再調査されるケースもあるのだ。

そのため簡単な案件なら江遠が現場に足を運ぶ必要などなかった。

彼には自分の案件で選択肢を選べるし、協力度や投入期間よりも移動時間は問題にならない。

電話を切った江遠を見ながら王伝星が言った。

「侯大隊長が外に出した第三班の人員全員が戻ってきていない。

昨日午後から今に至るまで帰っていないようだ。

呼び戻すつもりはないのでしょう」

唐佳が尋ねた。

「本当に誰一人として呼ばれていないんですか?」

「いいえ」王伝星は断言する。

「康州の進捗が順調との話で、案件も複雑ではないため侯大隊長はこのまま単独解決を図りたいのでしょう」

もし無事に積年の未解決事件を解決できれば、侯楽家は新たな問題を起こしたくなかったのだ。

先日出動させた人員を呼び戻すと優柔不断な印象を与えてしまうし、数百キロ離れた場所から往復させるのは疲労も甚だしい。

一時二三日使えないと判断しているのだろう。

命案において最も重要なのは最初の二十四時間だが、さらに帰還する人員が少なければ不足し、多ければ商家兄妹の案件に影響が出る。

逆に精鋭を呼び戻すのも不自然だし、そうでないなら意味がない。

結局隆利県は二つの作戦を同時に展開する能力もなく、ましてや遠征部隊と現地対応という構図ではなおさら不可能だった。



侯楽家は甘蔗の両端で幸せを手に入れたいという欲望を持っていたが、その可能性に疑問を感じていた。

彼は節約癖があり、運試しをしてみたくてならなかった。

黄強民はそんな彼を許すつもりなどさらさらない。

隆利県の事件に関与するかどうかさえも黄強民は明確でない。

天下には無数の案件があるからだ。

侯楽家が自分の親子であるわけでもないのに、他人の仕事を引き受けさせる義務はないという考えだった。

江遠は黄強民の考え方を理解していた。

彼自身もあまり気にしていなかった。

現行犯と未解決事件の難易度は比較できないものだ。

特に命案未解決事件はレベル3から始まると言っても過言ではない。

たまにレベル2.5の案件がある場合は特別な事情が絡んでいる。

一方、現行犯殺人事件の場合、最も一般的なのはレベル0.5のケースである。

指紋やDNA証拠があり、凶器も現場に残っている。

さらに周辺の監視カメラ映像で証拠を補完できるものだ。

レベル0.1の案件も存在する。

自首した犯人や犯罪現場で呆然といる者、共犯者が仲間から憎まれるケースなど。

江遠は現在人員が潤沢で技術力もあるため、より大規模な事件に手を伸ばす傾向があった。

ただし、大規模案件でも小規模案件でも投入する人数は変わらない。

「昼食は豪華にするか?」

江遠が会議を終了させた。

安海市の503号事件が解決したことで、江遠の未解決事件対策班にとって唯一注目すべきは商氏兄妹の事件だった。

しかし、その案件も専属メンバーには関係ない。

そのため、対策班にとっては貴重な休整期を迎えた。

この休整期の長さは黄強民が主導権を持ち、柴局(※注:原文中の「柴局」はおそらく「柴田局長」などの役職名を指すが、正確な訳語が不明なため仮に「柴局」と表記)も関与する可能性があった。

董冰が言った。

「朝聞いたんですが、隆利県で特徴的な螺蛳魚の店ができたと。

試してみませんか?」

「螺蛳鱼?」

江遠が聞き返した。

「螺蛳粉のタレで煮た魚ですよ」と董冰は期待を込めて説明した。

「誰も螺蛳粉を嫌わないですよね?」

周囲を見回す江遠。

刑事たち全員が黙り込んだ。

捜査中に臭い足と老朽化した酸菜麺を食べることもあるからだ(※注:「臭脚丫子」はおそらく「腐った足のにおい」という意味で、ここでは冗談めかして表現されている)。

刑事の初歩的な訓練として、師匠の臭い足を嗅ぐことさえある。

螺蛳粉が嫌いな場合は師匠の焼き魚を食べればいいという心配りもあった。

李記斑魚庄に入ると、大きな養殖池があり、その上には「李記斑魚庄」と書かれていた。

警備意識の高い刑事たちが店内のスタッフに視線を向けた。

点菜係の女性は落ち着いて言った。

「当店は以前『李記斑魚庄』と名乗っていましたが、業態を変えました。

斑魚か黒魚をご希望ですか?」

「斑魚でいいです。

何匹でも構いません」と申耀偉が率先して注文をした。

全員が大部屋のテーブルに座り、すぐに賑やかさが戻ってきた。

螺蛳鱼が運ばれると、酸いもと腐ったタマネギのような強烈な臭気が鼻孔を突いた。



螺蛳粉のスープは、とろける斑魚肉を煮込み、Q弾感と酸辛さが絶妙で食欲をそそる。

米飯派には黄みたましい濃厚スープをかけ、一口肉片一口ご飯で至福の味わい。

「もう少し魚を追加して。

10匹ほど増やしてくれないか」江遠も美味しさに感動し、即座に追加注文した。

総量的には多すぎたが、みんな最後まで完食した。

「速食版より断然上品だわ」唐佳は半分多くご飯を食べ、腹をさすりながら締めくくる。

「鮮煮の螺蛳粉、特にこの酸笋の風味が際立って。

斑魚の切り身も薄くて素晴らしい……」

「そうだよ。

酸味にはレモンとトマトを使っているけど、見えないからこそ心地いいんだよね」

「あの酸笋の臭みも快適だわ」「独特な臭みが魅力的」

「確かに強烈だけど他とは違う種類の臭いさ」江遠はスープをすすりながら爽やかに笑う。

酸臭好きと嫌いの人々が黙然としている。

「よし、サービスの方にお会計して。

午後は各自でどうぞ」法医である江遠は、彼らの沈黙を当然視していた。

色彩鮮やかな黒を見た者だけが、白の多様さを見るという諺がある。

解剖室での昼夜を問わず過ごしたからこそ、調理場の賑わいに浸れるのだ。

SNSで繰り広げられる言葉数万語なしには、バレンタインデーの汗だくもない。

「帰ろうか」江遠がスマホを取り出すと、オーナーが笑顔で近づいてきた。

「江さん、このお代は誰かさんが支払ってくれました」

江遠が眉をひそめる。

「他の人には払わせない。

我々で払うべきだ」

警察官として他人の物は受け取れないし、江村の人々も必要ない。

その時侯楽家がドアを開けて入ってきた。

「江さん、通りかかったんだよ。

この一戦は隊費でどうでしょう?隆利県に来たら飲んで遊ぶのが当然だ」

侯楽家は大笑いする。

誠実な笑みを見た江遠は、彼が黄局と交渉を済ませたことを悟った。

**(ここに補足が必要な部分)**

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