国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0453話 爆発事件

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朝早く、二頭のドーベルマンが玄関を出ると、芝生に足を踏み入れたその瞬間から走り出した。

普段は江家の居間にいても楽しさはあるが、芝生と比べれば、スルメイリメンとフーテンチャンを食べているようなものだ。

どちらもおいしいし、満足できるが、飛び跳ねて喜ぶのはやはりフーテンチャンの方だろう。

ケンジの手には二本の犬のリードが握られていた。

両手でリードを掴みながら、芝生の外側を走り回る。

なぜなら、ドーベルマンたちが飛び出すと通りに人がいるかもしれないからだ。

この江村小区は元々大きな芝生地帯はなかった。

開発当時は各家各戸が畑を作りたいと土地を確保していた。

鶏や豚の飼育を考える人もいたが、結局は失敗した。

しかし、自治会の管理下にあるこの小区は最近二年ほどで様子が変わった。

特に江遠三郎が理事長に就任してからは、畑の位置を再編成し面積を縮小。

鶏や豚の飼育を禁止し、芝生と緑地の面積を増やしたのだ。

一部の老人は不満だったが、この小区には若い住人が多い。

都会に慣れた若者たちは新しい計画を支持したため、反対意見も弱まった。

ドーベルマンたちが楽しげに遊ぶ中、遅れて江富と江遠が階段から降りてきた。

芝生の上に犬の便が転がっているのに構わず、彼らは犬を誘い出した。

お祭りで体を動かした後、みんな怠けていた。

お祭りで食べ物をたくさん食べたし、寝たし、豚のように脂肪を蓄えているように見えた。

小区内をうろうろと歩き回るだけだ。

少し派手な家では今日から旅行に出かける準備をしている人もいるだろう。

江富と江遠はどちらも動きの少ない性格だ。

自宅の一室で故人を偲び、関帝に祈り、紙おがみを焚いて線香を上げた後、小区内を散策するだけだった。

遠くのビル群を見つめながら、江富はため息をつく。

「もし私が牧場を持っていたら、毎日牛肉を煮て食べられるだろう。

今はただビルばかりで、気分が悪い」

「お父さん、あのビルもうちのものだよ」江遠は彼の視線の先を見つめた。

「だからこそ牧場の方がいいんだ」

「もし私が牧場を持っていたら、牛種改良に没頭して、煮て食べやすい品種を作り出すかもしれない」

「市外で土地を買って」

「でもその土地は二十キロも離れていた。

面倒だったからやめた。

その後高速道路が建設されて取り壊されたんだ。

賠償金でビルを建てた」

江富は肩を落とした。

「もし私が牧場を持っていたら……」

線香の煙が風に流れる中、二人は黙って歩き続けた。



江遠は身を翻して電話を受けた。

「江遠、休養はどうだ?」

黄強民の声は温かく玉のように滑らかだった。

成年粗皮浮水硬甲老鰐が満腹になったようなその声色に、江遠は眉根を寄せながら答えた。

「まだだよ。

家で過ごすのは快適さうな」

「何か案件があるのか?」

黄強民は鼻息を荒くして笑った。

「まずは曲安県の事件から始めよう。

今回は指名されたんだぜ」

「えっ、何の事件だい?」

江遠がゆっくりと立ち上がり伸びをしながら答えた。

「曲安駅爆破事件は知ってるよ」

江遠は一瞬ためらって続けた。

「聞いたことあるけど、難易度が高いんじゃないかな?」

駅爆破事件という名前からも明らかに、死者が出るような大規模な事件だ。

発生直後から省公安機関の注目を浴び、その後の捜査は波乱続きで一時的にテロと見なされる可能性すらあったが、未解決のままとなっている。

江遠は具体的な詳細は知らないものの、その複雑さは明らかだ。

難易度が高いと言わせられるようなものではない。

さらに爆破という方向性も江遠にはまだ触れたことがなく、法医学人類学の専門知識を活かす余地は限定的だった。

死者の身元が判明しているため、江遠にできる仕事は限られていた。

黄強民は「ん」と鼻で笑いながら信頼感を込めて言った。

「曲安県警が初めて挑戦するんだから要求があるのは当然さ。

駅爆破事件は彼らの最重要未解決事件なんだよ。

難易度が高いことは確かだけど、我々にできるならやるし、できない場合も恥ずかしくないさ。

省公安機関が当時指揮を執った丘岳という人物さえ今は誰も覚えていないんだから」

「誰だっけ?」

江遠が尋ねた。

「丘岳だよ。

俺は最近アーカイブを調べてみたんだ」

江遠は笑って答えた。

「分かったわ。

準備して出発するわ」

「待ってるぜ。

曲安で会おう」

黄強民はこの案件に強い関心を持っていたようだった。

この事件が解決されれば、清河市の「命案未解決事件集中解明キャンペーン」が正式に始動することになるだろう。

こうした活動は各省市県や中央省庁ごとに隔年で行われ、要求される成果も異なる。

例えば清河市の場合、最初の取り組みでは三件から五件程度の未解決事件を解決するのが普通だったが、難易度が高い案件では逃犯一名を逮捕するだけでも評価対象となる。

結局、どのくらい捜査に成功したかは参戦側の力量次第だ。

ランキングは競争関係だからね

重要なのは隆利県と曲安県、寧台県などで未解決事件が解決されれば、他の区県への圧力が山のように積み重なるということだ

風が強まる中、黄強民の仕事はより容易になるだろう。

当然、各県庁も地域特性を活かし独自の手立てで命案解決を目指すことも可能だが、もし解決できなかった場合に備えて——。

江遠は清河市の各警察署や県警の能力を熟知しており、彼らがこの競争で勝ち抜ける可能性を高く評価していなかった。

結局、彼らの敵は江遠自身であり、味方は永新と志洋だったのだ。

電話を切った江遠は永新に連絡し、志洋に全員集合を指示した。

同時に父と強舅にも声をかけ、シャワーを浴びて服を着て地下駐車場へ向かった。

永新的車が既に待機していた。

永新やドライバーたちの運転は江遠自身よりも速く安定しており、車内で他のメンバーと連絡を取りながら状況確認ができる利点があった。

高速で曲安県警本部を訪れた際、刑事課長と公安部長が会議室に待機していた。

黄強民が江遠らを紹介した後、即座に捜査会議が始まった。

曲安県警の刑事たちは態度は良好だが、士気は低く沈んでいた。

心理的ケアなどできるはずもなく、江遠は責任ある警察官のように真剣に担当員の説明を聞き始めた。

爆発物は手提げ式非常灯で、駅出口から30メートル先のゴミ箱そばにあった。

そこは多くの乗客がバス停車場を選ぶ場所であり、当時は駅内で給水作業が行われていたため、バスが短時間停車して乗客を降ろす慣習があった。

事件は8年前に発生し、省庁も重大な不特定多数への爆破と判断し精鋭チームで捜査していた。

証拠物としては二つの部分が重要だった。

「まず被害者側だが、曾国庆は近くの車屋の店主。

深夜まで修理作業を続け、翌日凌晨4時頃バイクで帰宅中にその爆発物に接触した。

もし曾氏が触発しなければ、朝5-6時にここで待機する人々がいたはずだ。

曾は即死し左腕が飛ばされ右目玉も失われ全身多所に炸裂傷を負った」

「次に爆発物だが、黒色火薬で構成され——**の陰線からプラスチック被覆を剥がした約1cm長さの電熱ヒーター。

4本の5号南孚電池を直列接続し、溶接痕のある抵抗体で点火された」

爆発物は扇形に広がり爆心から20m先まで可視化され、人体組織は18mまで飛散していた。

現場には血跡や衣服の破片が多く、道路面には明確な炸裂痕はなかった。

江遠は担当員の背後のスライド写真を見ながら話を聞いていた。

現場状況は惨憺たるも、8年経過した今では彼のスキルでも突破口が見つからないほどだった。

「証物と写真は揃っているか? すべてから調べ直せ」江遠は捜査概要を聞き終えた後、何の意見も表明しなかった。

通常の会議なら分析や解決策の提示があるべきだが、彼には全く頭が回らなかった。

黄強民は満足げに口角を66.6度上げながら曲安県警刑事課長らに褒めちぎった。

「江遠はこうした静かな捜査で名を成すんだ。

たまに写真を見ればバッと解決するんだよ」

刑事課長らも賛辞を連発した。

「凄いですね」「寧台江遠、名うての実力者!」

「凶気立つ!」

江遠は黄強民を見上げると、技術職が営業マンを見るような感覚に陥った——もっと謙虚に褒められればいいのに。



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