国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0489話 運命定型曲

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「江法医……その指紋はどこから採取したんですか?」

趙靖はペットボトルの水を一気に飲み干し、節約やトイレ問題など些細なことには一切気にしていなかった。

趙靖は江遠が何か密閉された容器(例:手袋箱)から複数の指紋を採取したのではないかと考えていた。

登録物証の警官はそんな深い考察を持たず、単に「複数箇所から指紋とDNAを採取しました。

いくつかの物証が収集されていますが、証拠箱の中です。

ご覧になりたいですか?」

と答えた。

「いいや」趙靖は首を横に振った。

痕検は基本的に個人作業であり、技術も発見能力も自身のものだ。

他人の成果を見ても何ら役には立たない。

現場に戻ると江遠が助手と共に忙しく働いていた。

痕検に徒弟を持つのは一般的だが、その多くは短期間で独立し、指導者は現場から離れてしまうのが常だった。

趙靖のような地位にあると、職務がないため手下もいないが、役職を得てからは現場作業から離れる傾向があった。

腰を揉みながら足を動かし、身体の不快感を軽減した後、マスク・手袋・足カバーを再装着してゆっくりと現場に戻った。

彼は中年で、普段は案件に七分力しか使わない。

十分力を出すのは必要ないからだ。

その能力なら省内でも通用し、十分力を出しても解決できない事件は存在した。

今日は趙靖が完全体を発揮することを決めた。

しばらくぶりの十分力状態だったため、業界関係者も忘れてしまっているかもしれない。

彼は3M製の手袋を既存の手袋に重ねて装着し、激しい動作にも耐える二重保護を施した。

趙靖の秘技は単純だが、技術を最大限発揮するためには最適だった。

油锯を持つ光頭強(※アニメ『熊出没』のキャラクター)のように、一人で鋭く切り刻むイメージだ。

「うーん……」

彼は電気鋸のような音を口から発し、一寸ずつ慎重に調べ始めた。

江遠が山南省の指紋専門家であり、省内の指紋作戦で過剰に活躍した経歴があることを知っていた。

しかし趙靖は痕検のスペシャリストとして、指紋だけではなくより広範な技術を掌握していた。

彼は自己を励まし、自信を持ちながらも手元の作業を止めず、頭脳は高速で回転した。

痕検の最も重要なのは思考であり、警察的な思考だけでなく犯罪者の視点での想像力が必要だった。

自分が犯人ならどう侵入するか、鍵を開けるか昼間から侵入するか、どこに手をかけるか、身体がどの場所に接触するか、髪や皮膚の断片がどこに落ちるか……

もし自分が殺人犯だったら、どうやって殺すか?埋伏するならどこに身を隠すのか?撤退ルートには何を準備しておくべきか?

大車の運転手に偽装した犯人が自分を守るためには、手袋は必要だろうか?車内でエアコンを使うべきか?料金所で窓を開けるべきか?

趙靖は次第に幻想(または思考の濃厚な汁)の中に浸り、粘着質で困難な中を進んでいく。

同時に江遠も調査スピードを上げ始めた。

暗くなる前に収集した証拠は翌日より価値が高い。

特に犯罪現場の車両遺骸は調査が進むにつれ状態が変化し、今後の損傷度は数ヶ月分に匹敵するだろう。

明日には雨風がないとしても夜間の冷えや朝露、昼前の陽光がさらに証拠を破壊する。

可能な限り高価値目標を今日中に収集する江遠は趙靖と比べて明らかに優位だ。

まず犯罪現場調査Lv4を持つ江遠は、指紋検証でLv3とLv4の二重装備。

これらだけで十分強力。

趙靖も平江省トップだが山南省より遅れ、壮年期の専門家として最高でもLv3.5程度。

日常的にはLv3初級。

しかしLv3の壁を超えた時点で既にエリート中のエリートで個人的に実績がある。

ただし趙靖は天が与える食事レベルだが江遠は天が自ら料理するレベル。

陶哲轩7歳で微積分を独学、8歳でBasプログラムを使った完全数の本を書いたように、牛かどうかは自己と周囲との比較で分かる。

しかし成年後も各方面の天才に吊るされる。

江遠は犯罪現場調査Lv4+指紋検証Lv3+法医物証学Lv4+工具痕跡検証Lv6という超強力な装備。

さらに新規取得した車両痕跡鑑定Lv3も今日の調査に合致する。

このスキルだけで趙靖と均衡できるが江遠は比較せず自然に他の痕跡検証を手伝う。

趙靖も相当だが江遠は余裕で上位判定。

このレベルの痕跡専門家なら二次調査の余地さえ残せるという実力そのものが優位性だ。



比べて他の指紋鑑識官のレベルは参差不齊で、上手いのはLv.2基準をクリアするが、下位はLv.1強程度だ。

このクラスの鑑識官はミスしにくいが、品質と効率のバランスには差がある。

例えば優等生に試験時間を与えても、開講日なら90点以上、満点も可能だが、実際の試験では絶対に達成できないように。

江遠が一声かけて手伝いを始めた。

相手は長陽市刑科センター所属の指紋鑑識官だった。

空を見上げて江遠を見つめ、ため息をつくと黙々と作業を続けた。

「断るわけにはいかないし、勇気を持って頼んだところで、自分の仕事だけやればいいのか? 実はできない」

さらに重大な未解決事件の捜査中なら、普通の刑事は単なる部品扱いだ。

進捗を阻む行為は許されない。

江遠が現場遅延の原因となれば抗議できるが、明らかに足を引っ張っている今では殴られるだけだ。

規律ある組織では些細な不満など考慮しない。

「手伝ってくれよ」江遠が手招きすると、指紋鑑識官は馬蹄鏡を片付けて軽快に鉄棒を持ってきた。

江遠と牧志洋も加わり三人で大きな鉄塊を引っ張り上げた。

江遠がライトを当てて粉末を撒き、シャッターを切って指紋採取を始めた。

一人助けるのが終われば二人目へ、全ての巡回が終了する頃にはまだ暗幕は訪れていない。

未だに趙靖が割り当てた区域だけが未調査だった。

「そろそろいいか、犬を出すぞ」江遠が天候を見ながら大壮に出動を指示した。

大壮は李莉が担ぎ込んでいた。

使用されたのは地元の竹籠。

深さと重量バランスが適切で軽量だ。

警犬の体力や持久力は犬種比では優れているものの、人間の耐久力は超常的。

さらに密林の中なら通常は犬を連れてこない。

大壮はまず江遠の匂いを嗅ぎ、堂々と現場へ入場した。

今夜は征服の曲が奏でられる。

人間か犬かどちらかに成り果てよ!

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