国民の監察医（こくみんのかんさつい）

きりしまつかさ

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第0610話手口

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ポンキチヨウは一名の部下を連れて深夜便で春秋航空に乗った。

長陽市に着いたのは翌朝だった。

江遠が用意したエランフェア（エルファ）に乗り込むとすぐに眠りについた。

朝、走馬道派出所の勤務時間にはすでにポンキチヨウが門前に立っていた。

警視補の肩書は目を引く。

「ポンさん。

大変でしょう。

無事でよかったですね」江遠はエランフェアが到着したと聞きつけて家を出てきた

「ええ、順調でした。

江さんにお気遣いいただけたのは本当に嬉しいです」

江遠は「最近時間に余裕があるから興味があればもう一度説明しますよ」と続けた。

「ぜひお願いします！」

ポンキチヨウが何度も頷いた。

彼は洛晋市局で植物学の教授たちを動員し、法医植物学を使った捜査手法を開発していた。

確かに手間はかかるものの、無線索案件にはその知識が唯一の突破口となる。

江遠も最近ではポンキチヨウの取り組み方を理解するようになり、それが彼を思い出させたのだ。

江遠から見れば、ポンキチヨウに教えるのは苦労したが、彼が得た知識を実際に活用していることは事実だった。

さらにポンキチヨウは洛晋市局刑事部第四大隊の本格的な警官であり、その立場上その知識を使うことが許されていた点も重要だった。

王伝星のような頭の良い若い警官なら、学んだ法医植物学を教授と結びつける方法や案件に活用する術はまだ習得が必要だ。

「中に入りましょう。

所長を紹介します」江遠がポンキチヨウを連れて部屋に入った際、「帰りの飛行機代は私が買いますよ、遠慮しないで」と付け加えた。

ポンキチヨウは笑みを浮かべた。

「申し訳ありません。

急な出張だったので現金で払うべきでしょう」

谭靖がすぐに迎えに出た。

表面上ではポンキチヨウは走馬道派出所の支援に来たとされていた。

省外の警視補が県内の派出所を支援するという方法自体、谭靖は聞いたことがなかった。

彼も少し興味を持って、その外省の上級警官がどのような手腕を見せるのか観察していた。

会議室に入るとポンキチヨウは江遠を上座に据え、丁寧に質問を始めた。

その態度は師匠に対するように見えたが、実際には江遠の方が年若い。

谭婧は内心でそう思いながらも笑顔を保った。

やがて劉文凱も刑事部から駆けつけ、江遠の積案班メンバーと走馬道派出所の職員たちが集まった。

彼らは「油耗子（燃料泥棒）」事件について話し合い始めた。

「我々がこれまでに解決した事件から見ると、盗油グループは二つのタイプがあります。

一つは緩やかな組織構造で、犯行前に臨機応変に組み合わせるため、一網打尽にするのが難しいものです。

もう一つは長期的な協力関係を築いた固定グループです。

通常、固定グループの破壊力と能力は高いと言えます」

「現在観察されている状況では、盗油グループには少なくとも一台の油タンクが必要です。

これは改造車で、ほとんどが盗まれたものですが、一部は背負式トラックを購入したケースもあります。

20年以上前の高級輸入大型車が主で、後部と荷室全体を燃料タンクに改装し、600リットル以上収容可能です。

現在の市場価格は約1万元です」

「次に地下油庫ですが、実際にはトラック一台程度のものが多いです。

少し隠れた場所にある場合は規模が大きいと言えます。

これらの仲介業者は200リットルのタンクで油を運び、1200元左右で現金取引し、それを常連客に販売します。

市価より1元安い1.5元で」

江遠らは真剣に耳を傾けていた

谭靖が説明した内容は、100年前なら盗賊の秘伝とされた手口でもあり、現在も一定のハードルがある

しかし谭靖が詳細に説明したため、江遠らはすぐに理解できた

文凱が尋ねた「この地下油庫はどう運営しているのか？電話で連絡するのか？」

「電話・微信・電報など全て可能です」谭靖指を折りながら続けた「一般的には盗賊がメッセージを送ると彼らが回収し、購入希望があれば配送します。

仲介業者としてのサービスです」

文凱の表情が引き締まった「つまり私は盗油したら、その場で仲介業者を呼んで取引して、さらに盗み続けることができるのか？」

「理論上は可能です」谭靖少し間を置いて続けた「ただ過酷すぎるので、一般的な盗賊は嫌がるでしょう」

文凱も笑いながら真面目に言った「では我々の核心は仲介業者を逮捕することか？」

「仲介業者は多いです。

トラックや油タンクでこのビジネスを行っています」

継東がゆっくり頷いた「つまり盗賊も仲介業者になる可能性があるし、購入希望者はどうやって見つけるのか？」

「サービスステーションに安価な燃料を求める大型車の運転手は多いです」

「被害に遭わなければ気付きませんね」継東が評した上で続けた「自転車盗まれて逆に盗賊の品物を買うようなものですね」

文凱が悟ったように言った「つまり仲介業者を逮捕しても意味がないのか？」

「全ては不可能です」谭靖が答えた

このような問題は上からの特別活動時のみ解決できる

普段の派出所の人員では陣地制圧さえ困難で、根本的な解決は不可能です

「数人捕まえてみればいいでしょう」江遠が提案した

谭靖がためらった「草薙を驚かせる可能性がある」

「調査を開始すれば自然と驚かせることもあるでしょう」江遠はその点にこだわらず継東を見た「貴方の意見は？」

「法医学植物学を使う方法はどうですか？」

継東がためらいながら言った

「使う価値があるなら良いですね。

何か指示がありますか？」

継東が笑いながら答えた「まだ何もありません。

行きましょう」

江遠も同じくファイルを手に取り、慎重に読み始めた

継東はしばらく考えた後、別のファイルを取り出し詳細に読んだ

死んだように見えても完全には死んでいない…

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