国民の監察医（こくみんのかんさつい）

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第0713話 弟子授業

「あなたは京都市民なら家庭環境も良いはずだよね？」

江遠は詹龛が頭蓋骨再現術を学びたい気持ちはあると見抜いていた。

詹龛も機会を感じ取り、推理能力で江遠の意図を探りながら答えた。

「確かに裕福な暮らしです。

両親は国営企業に勤め、私の家も購入済み。

給与はそれだけ。

一人暮らしが十分です」

これなら再現術の基礎を築ける。

江遠が頷いた。

現在LV5という状態でようやく理解したのは、その分野の専門家を育てる複雑さと莫大なコストだ。

何の下地もない人間は途中で諦めてしまうだろう。

再現術の場合、目標がLV2でも数年かかる。

脱産して学ぶのが理想だが、そうでない場合は期間が伸びる。

また材料費も馬鹿にならない。

彫刻という行為自体が貧乏人に向けられたものではないのだ。

「二年間の彫刻経験があるのか？どの程度までできる？」

江遠が追及した。

「はい、最初に素描を学びその後彫刻です。

レベルは……後で自分で手办を作るくらいなら可能かな……」詹龛は過剰な自信を見せなかった。

江遠が頷いた。

そのスキルは非常に希少だった。

現代人はほとんど彫刻に触れたことがない。

美大には彫刻専攻はあるものの、五年間のうち実技に費やす時間はどれだけか疑問だ。

再現術は法医学の中の芸術と呼ばれるが、純粋な彫刻家だと法医たちは「芸術的すぎ」と嫌う傾向がある。

結論として彫刻経験は再現術の良い出発点で、思考パターンに大きな違いが出る。

主流の頭蓋骨修復術がコンピュータ作成の場合でも彫刻の基礎は有効で3Dモデリングが事半功倍になる。

江遠が詹龛を上から下から見回すと、二人は複数回協力経験がある。

詹龛が補助役として働いていた時の基本技術や従順さは相当なものだった。

「人類学の知識はどうだ？」

江遠はパソコン操作しながらさらに質問した。

再現術は前置条件が多いのが難点だ。

そうでなければ法医という経験主義の仕事でも練習だけで何人か育てられるかもしれない。

詹龛が目を瞬かせた。

「人類学……この頭蓋骨から何か読み取れますか？」

江遠が具体的に問題を提示した。

詹龛は驚き、隣の頭蓋骨を見つめ続けながら周囲を歩き回った。

江遠は気にせず3Dモデリング作業を続ける。

その工程をインターネット企業やゲーム会社で行う場合、労力と費用は相当なものだ。

社会的企業の収益化能力は法医より遥かに高いのだ。



「眼窩がほぼ円形で眉弓が不明瞭、梨状孔も偏平なので女性の頭蓋骨です」

「頭頂部に外傷痕がありますが擦り傷から判断すると死後損傷でしょう」

「年齢は歯の摩耗で判定できますし次は頭蓋縫合線ですねその辺は資料を調べる必要があります」

詹龛が頭蓋骨を見ながら考えながら答えるようになり少しずつ慣れてきた

江遠が「ん」と頷いた「君が調べろ」

詹龛が驚き手を洗い写真を撮って図書館へ向かった

簡単なようで難しい

風邪の症状は肺炎によるものもストレスによるものもある「炎症と安静」の両方があるように一般の人なら一生かけても正確な経験談なんて出せない医師たちも同じだ

人類学も似たようなものだ見解は見解分析は分析本には詳細に書かれデータは明確だが現場では全く別の話になる

詹龛は普段法医学人類学の仕事をあまりしていなかった江遠の質問に焦りながらも

大体江遠が何を意図しているのかは察していた

トップクラスの人は時間をかけて若造に問題を出すことはないし見せびらかすこともしないのだ

そのため詹龛は真剣に調べだし師匠たちに聞こうとする衝動を抑え込んだ

京局の解剖センターは広く設備も整っているが内部では県警レベルの法医たちは病理学と臨床医学だけで天下を取るから結局最苦労働しかできないのだ

詹龛は本をめくる手が早かったパソコン画面を見ながら打鍵する

歯の摩耗で年齢を判断するのは簡単な原理だ恒牙は再生しない生きているほど使うほど磨耗するから

でも「20歳の人40歳の歯」という言葉があるように法医が20歳の人の年齢を40歳と見誤ったらその責任はどうなるのか？

被害者が幼少期に栄養のある生活で粗食ばかり食べ死んだのが早ければ法医はどう判断するか

「歯の摩耗は当てにならないな」と詹龛が独りごちる

「基本を基に総合的に見るなら正確率が高いよ」曾連榮が横から指摘した

詹龛が礼を言うと曾連榮は「ん」と言って歩きながらも振り返って「頑張れ機会は貴重だ」

詹龛が笑顔で頷いた

...

画面の頭蓋外周に層々と塗り付けられる白色小円柱その高さは頭蓋軟部組織の厚みを示す同じ数値だった

伝統的手法なら粘土などで層ごとに塗り重ねて各小円柱と同じ高さにする必要がある

この作業自体は難しいわけではないタスク分解が十分に細かければそれで良い

ただ分解ほど細かいほど判断のプレッシャーが増す

例えば唇部だけでも4つの異なる高さを分解しそれぞれの根拠も不完全だった

最終的な判断には相互検証が必要で修正を繰り返す必要がある

この作業に江遠は数日間費やした

その間詹龛は常に江遠についていたが出来る事は少なかったものの見方がだんだん明確になってきた

タスク：指導

タスク内容：詹龛が48時間の見習いを経て頭蓋骨復元術でLV1レベルに到達させる

タスク報酬：銃器射撃（LV3）