国民の監察医（こくみんのかんさつい）

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第0778話 実戦

江遠、崔啓山と劉晟、そして五匹の野良犬が一鍋の犬飯を分け合い、満足そうに散っていった。

去る際、野良犬たちは江遠に頭を下げると、崔啓山と劉晟の匂いを嗅ぎながら満足げに中央の花壇から出て行き、それぞれ馴染みの場所へ向かって行った。

「貴方のご家族は結構優しいんですね。

お父さんが人に料理を作ってくれるなら、貴方が犬に料理を作るというのは自然な流れでしょう」崔啓山が満足げに舌打ちをした。

「たまにだけですよ。

これはあくまで返礼のつもりです」江遠は多くの遺伝子を受け継いでいるが、犬飯という強い遺伝子はこれまで二度しか発動していない。

一つは売春婦陳曼麗から、もう一つは教授周向陽から受け継いだものだった。

ある意味で陳曼麗の遺伝子は重く熱いものだったため、江遠も陳曼麗のように気分が悪い時に犬飯を作ることになる。

野良犬に餌をやる行為は人間としての自己認識を極めて強くするものであり、警察という職業においては特に必要とされる。

ただ江遠が犬飯を作る頻度はあまりにも低く不規則だったため、野良犬たちにとって彼はクリスマス老人のような伝説に近い存在なのかもしれない。

翌日。

黄強民が寧台一中門前の煎餅果子・油条・豆腐脑を手に江遠の家に現れた。

江遠と江富鎮は驚きを隠せなかった。

確かに江富鎮も寧台から物資を送ってくることはあったが、黄強民ほど心遣いのある配慮は初めてだった。

黄強民は得意そうに笑みながら「ちょうど北京へ行くのでついでに」と言い、部屋に入ると「まずは温かいものを召し上がってください。

お茶だけでもいいですが、あと仕事があります」

「何の仕事ですか？」

江遠が食事をテーブルに並べた後、自分も煎餅果子と豆腐脑を手に取り興奮気味に尋ねた。

黄強民は申し訳なさそうに笑みながら「こちらこそ貴方にお見舞いに来たのが本意です」と言い、江富鎮が豆腐脑と豆乳を持って楽しそうに食卓へ向かっているのを見ながら「我々も仕事があるんですよ」

「京局の技偵車ですか？」

江遠は唐辛子油をかけて滑らかな豆腐脑を口に入れた。

朝食となる食物はその地域の味覚王と言えるものだ。

普通の人なら一、二種類しか食べないが、一つや二つだけでも美味しく感じるには極めて高い条件が必要である。

この点で広州の粥や腸粉、河南の胡辣湯、广西と湖南の米粉、天津の煎餅果子は非常に特徴的な地域と言える。

伝統を守る豆汁の北京はあきらめモードだった。

黄強民が茶をすすりながら「ええ、新しい技偵車を導入したので一輛お譲りするという話です。

700万円」

「そんなに高いんですか？」

江遠が驚いて尋ねた。



「少なくとも五六百万はするだろう。

良い品物だから、高いのも当然だ」黄強民が江遠を誘いながら言った。

「一緒に見に行こうか。

もしそれほどでもないなら諦めよう」

「分かりました」江遠は食べ進めた。

刑事公安部。

既に京局の技術捜査（技偵）と寧台県の技術捜査が角で談判を交わしていた。

天下の技術捜査は一家である、技術捜査同士は非常に交流しやすい。

そして彼ら独自のやり方がある。

具体的にどうやって交流するのかは江遠も知らない。

普通警察でも技術捜査は黒箱のような存在だ。

問題を入力すれば結果を得られるが、その中身は知る由もない。

江遠は特に興味もなく、ただ待っていた。

京の伍軍豪と劉文凱も来ていた。

数百万円級の技術捜査車両は寧台県だけでなく清河市にもない。

皆で見たいと思っていた。

「いらっしゃいませ黄政委、江隊もおいでですね。

座ってご覧ください。

老安が選んだ事件を」

陶鹿が場所に着くと談判が始まった。

陶鹿の説明後、装備課の安喜平が数冊の捜査資料を持ってきて黄強民と江遠らの前に置き笑った。

「今日選んだ事件は三日前に受理したものです。

黄政委がデモンストレーションをしたいと言っていたので、技術捜査と刑事捜査の仲間たちで一件選びました。

そしてこの事件を選んでからすぐに捜査を開始しました……」

安喜平は自分が嘘ついていないことを説明した後、捜査担当警官を呼んだ。

捜査担当警官は正広局の警察だったが礼を述べて真面目に報告した：

「本案は侵入強盗事件です。

犯人が一晩で六軒の家を襲い、同一マンションの同じ建物に住む住民から被害が出ました。

現金四万余元、金銀アクセサリー18点、スマートフォン3台、iPad一台、女性用ストッキング一条、男性用スニーカー4足（全てAJブランドのコレクション）、フィギュア57点（総額8万元）が盗まれました」

警官が一気にここまで述べた後、江遠と陶鹿を見ながら続けた：

「本案の現場検証は完了しています。

犯人は排水管を登り、ベランダから侵入したと考えています。

その夜に六軒同時に被害が出たことや盗まれた品物が多いため、この犯人が慣習犯であると推測し、まず類似事件の統合捜査（串並）を検討しました……」

捜査担当警官が案件の状況と捜査進捗を説明した後、安喜平が立ち上がり笑った。

「この事件は大体分かりました。

次に捜査方針について議論しましょう」

皆が笑って黙っていた。

江遠だけ真剣に見ていた。

彼の性格は本来慎重だったし、寧台江遠という名前が大きくなるほど自身の影響力を意識していたからだ。

これは黄強民が何度も注意を促した通りで「他の人みたいに笑って資料を返したら『江遠が見た証拠』と言われたらどうするか」

安喜平は当然ながら江遠がその長い捜査資料を全て読むのを待つわけもなく、別の警官を呼んだ。



「技術捜査部だ」来た人が笑ったように言った。

「我々の解決策を説明しよう」

全員を見回し、江遠を見てから続けた。

「通常の侵入盗は足跡や指紋で解決するが監視カメラがあれば最高。

この事件では足跡はあるが指紋や監視カメラがないため、優先的に携帯電話の位置を特定した」

技術捜査部員は「まず携帯電話の電波を検索したが適切な容疑者が見つからなかった。

犯人が準備していたと推測し、電源を切ってから犯罪に及んだと考えた。

そこで逆手に取って夜10時以降に電源を切り、午前4時以降に再起動するユーザーを選別した」

「その地域の基地局周辺では当日2人が該当した。

一人は前科者で他方は中学生。

家庭監視カメラによると深夜0時30分まで勉強していたため除外された」

「それゆえ前科のある男を重点的に調べたところ重大な疑いが立った。

次にその男の具体的な位置を特定する必要がある。

伝統的には様々な方法があるが今日は技術捜査車で直接その男の携帯電話の位置を探すことにした。

乗ってくれ」

技術捜査部員が言うと全員がコスターカーに乗った。

彼はバン型の技術捜査車に乗り警車と共に3台編隊を組み出発した

コスターカー内で伍軍豪が褒めたように言った「ずいぶん鋭い対応だね」

「その通り、技術捜査車が出動するたびに一万円請求されるんだよ」黄強民は羨ましそうに言った

「一千万円？（一万円）」伍軍豪が聞き取れなかった

「X地で技術捜査車を購入した際も高額だった。

外地の警察が来た場合、技術捜査車で人を探す場合は出動1回あたり一万円請求する。

北京の県庁所在地でも同様に請求される。

子供にも老人にも適用だ」

黄強民は嘆息しながら「私は彼らほど頑固じゃない。

技術捜査車を購入したからと言っても収受できない。

せいぜい外地の警察に貸し出す程度だ」

「請求額が高すぎるよ、この車1台で6隻（六千万円）分になるんだ」劉文凱が首を横に振った

黄強民は劉文凱を見やり「胡说八道しているのか？」

と言った

劉文凱は不服そうに「包夜料金だと言っているだけです」と弁解した