国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0856話 掃討作戦

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バタバタ。

波しおが岩に打ちつける音、頭を痛めさせるほど煩い。

突撃任務を終えた特殊部隊の男たちは、まだ祝う余裕も無く、苛酷な捜査モードに入っていた。

俗に言う「一人で物を隠すのは神様にも難しい」という言葉通り、毒販組織が隠すものは多少なりともプロフェッショナルさがある。

この広い民泊から特殊部隊の捜索員たちが探す薬物を見つけるのは難易度が高い。

アドレナリンホルモンを大量に分泌した男たちは、この状況で何かを探すのが煩わしかった。

以前は類似の仕事を外注していたが、蘇島では誰にも外注できない。

他人に頼むと不安だから、全員黙々と捜索し、その間に罵倒を連発する。

「犬は来たか? 犬は到着したか?」

伍軍豪も堪らず尋ねた。

この回で撃ち殺された毒販組織の男が3人おり、負傷者が2人いた。

押収品の中に特殊な塗装のAK47(砂漠地帯用)があったが、伍軍豪が最初に銃を向けたことで、壁の向こう側に隠れていた射撃手は即座に殺害された。

もし彼が動いていたら大惨事だった。

しかし今や薬物の影すら見えない。

これでは誰も耐えられない。

当然、捜索不能なら犬を嗅かせることになる。

蘇島警局の政委王勝年は訴訟問題で頭がいっぱいだったため、怒りをぶつけられなかった。

「もうすぐ到着します」

伍軍豪は「ありがたいです。

でも一刻も早く来てほしいですね。

夜長くても待たない」と応じた。

警察が容疑者を尋問する際は通常二段階に分ける。

最初の突発的な尋問は、逮捕直後の容疑者に対して行われる。

その頃にはまだ混乱しているため、より多くの情報を引き出せる。

ここで薬物を見つけられれば毒販組織の心理的打撃は大きい。

私刑で銃を所持し警察に射撃する行為は故意殺人罪だが、主犯が死罪になる可能性は低い(死緩期判決)。

共犯者は10年から20年の懲役となることが多い。

一方で現場で数百グラムの薬物を見つけられれば、主犯は即座に死刑確定だ。

共犯者が生き残りたいなら真実を語らざるを得ない。

伍軍豪にとってこの数人の容疑者は最も価値のある存在だった——死して情報を吐く者たち。

王勝年が電話をかけた後、「警犬中隊はあと10分で到着します」と報告した。

伍軍豪は彼の不満に気づいていたが、無関心そうに笑った。

「来ればいい」

江遠は二人の会話を聞いて眉根を寄せた。

「警犬中隊には何匹いますか?」

王勝年は咳き込みながら「一匹です」と答えた。

江遠は当然という表情で手を振って証拠品を集めに行った。

寧台県局の警犬中隊は長らく一匹しかいないが、費用がかかりすぎるのが問題だった。



警犬部隊を編成する際、最初は三条の壮年の犬と二条の訓練用犬、五名の訓練士が目標だった。

しかし初めに購入したパムという警犬を運用し始めると、刑事課員たちは「やはりパムの方が経済的だ」と気付いた。

蘇島も裕福な地域ではないため、警犬部隊が一頭の警犬を飼育するのは当然のことだった。

黒背とその訓練士が車で到着した。

この犬は毛並みが乱れ、特に首周りが太く、名前は水魚(すいぎょ)と呼ばれていた。

伍軍豪はまず訓練士と水魚に休息を取らせ、副官に指示を出す。

「名前の響きから信用できない様子だ。

彼らには『大それたことを考えさせない』ように言い聞かせろ。

このペンションは広いので、一条の犬が嗅ぎ切れる範囲までやれば十分だ。

何階分でもいい。

排除できる建物が増えれば我々も楽になる」

「承知しました」と副官が去った。

水魚と訓練士が約半時間休んだ後、作業を開始した。

訓練士の気取った態度は警犬の休息時間を確保する義務から来ていた。

警犬の勤務時間は人間よりずっと短い。

例えば一般の人なら朝6時に起き、朝食を作り通勤に二時間かけ、夜10時頃まで働いて疲れても12時まで働くこともあり、帰宅にはさらに一時間以上の通勤が必要だが、警犬は8時間を超えることは絶対にできない。

これは護衛犬としての勤務時間である。

嗅ぎ探す業務の場合、平均的な警犬が3時間以上連続して働けるのは限界だ。

上司は人間の従業員に対して「頑張れ」「我慢しろ」と要求するが、警犬には愛情を込めて扱わなければならない。

なぜなら警犬は本当に死んでしまうからだ。

再訓練にかかる費用と時間を考えれば、二足歩行の大学生のように簡単に増やせるわけではない。

江遠がまず指紋などの痕跡を採取し、部屋の中央で「家具は全部取り外せ」と指示した。

覚せい剤と私房資金の隠匿には共通点がある。

覚せい剤は使用する必要があるため、長期的な保管場所は不便だ。

一方、覚せい剤と私房資金はどちらも体積が小さく、頻繁に取り出す必要もない。

一般的には1分以内で取り出せるし、三~五分程度なら十分満足できる。

そのような条件下では、ベッド下や空の旅行ケース、靴箱など既存の場所は不向きだ。

理想的な隠匿場所は多少の手間を要するものである。

例えばパソコン本体の筐体内部は広く安全で、妻(警察も気づかない)が考えつかないかもしれない。

同様にスピーカー内や空調の出风口なども、ネジを外す必要があるものの、実際にはそれほど手間はかからないし、隠匿感が強い。



より安全な隠し場所を作るには、さらに改造が必要かもしれない。

例えばパソコンのボディーが分解防止用のネジか普通のネジなら、内六角ネジやU型ネジ、シュナイダーアルミ六角ネジなど特殊ネジに交換する。

予算が1000元を超えるなら、淘宝で独自規格のネジをオーダーし専用ドライバーを作成すればさらに安全だ。

そのドライバーを工具類と混ぜれば家庭用金庫になる可能性が高い。

ただし麻薬取締官はネジの特殊化だけでは不十分なので、ソファの底から切り出したスポンジに麻薬や金庫を隠すなど暴力的な手段も使う。

テーブルの脚を外し穴を開けて空間を作る方法や厚い本に溝を作り中に物を入れる方法も一般的だ。

結論として隠し術は深い学問で生涯かけても習得できない。

技術が不足したせいで離婚したり死刑になった人もいる。

江遠は部屋を見渡しながら全品を分解させた後、申耀偉を呼んで「君の身体能力があるから天井周りを調べて指纹を探して」と指示した。

命令を受けた直後に次の部屋へ移動する。

申耀偉は驚きつつも喜びを感じていた。

少なくともあの3発の銃撃が江遠に深刻な印象を与えたからこそだろう。

彼はマスクを着けて天井を丁寧に調べ始めた。

民宿の梯子は不安定で危険かつ不快だったため、申耀偉は咳しながら作業を続けたがやっと降りて報告した。

「ちょうど終了しましたのであなたが上がればいいでしょう」江遠はさらに「パイプを通じて内部に入れるなら調べるべきです。

彼らが通風管に隠す可能性があるから」

この検査は必須だが誰が担当するかで変わる。

申耀偉は指名されたため断るわけにはいかず「はい」と応えマスクを替え再び登った。

「耀偉の身体能力は本当に優れています。

これらの部屋の天井は彼に任せるべきです」江遠は完璧な指示を出し出て行った。

天井上の申耀偉は満足と喜びを感じていたが、パイプを通る作業は過酷で銃器訓練よりも辛かった。



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