明ンク街13番地

きりしま つかさ

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第0261話「失われた神話」

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「どうしてそんなことをするわけにもいかないでしょう。

私は単に情報を先回りして、影で密谋している連中を知らせることだけです」

カレンは眉をひそめながら隊長を見上げた。

「信じられない? お前は私の秩序への忠誠心を疑っているのか?」

「隊長様、私はあなたが秩序に忠実であることを疑うことは決してありません」

「そうだろう。

だが……」

「経験から見て、隊長様は秩序への忠誠を損なわない範囲で可能な限り栄誉と秩序券を手に入れつつ、さらに己の楽しみも追求する傾向があると考えています」

「信仰は信仰、仕事は仕事、生活は生活だ」

「しかし……」

「『しかし』はやめろ。

お前の方がずっと明確に分けていたはずだ。

それが言えるのか?」

「隊長様、これは名誉毀損です」

「暗月の斑点、暗月の輪郭、暗月の描写……その詩はどのように覚えているか、忘れてしまった」

「それは偶然でした」

「そうだ、偶然、うむ、偶然、セキュリティ作戦で相手の王女様の心を奪えるのはお前の方が上手い。

なぜならお前は信仰に彩られた生活の中で仕事をするからだ」

「隊長様、私はただ一つだけ要求します。

貴方側に何かあった場合、私には隠さないでくださいと」

「当然だ。

我々はお互いの秘密を知っているのだから」

隊長が部屋のドアを開けた瞬間、外に向かって叫んだ。

「集合!」

全員が部屋から出て列を作り始めた。

カレンも服を着替えてマスクを被った後、その列に加わった。

「昨日一晩中どこで過ごしたのか?」

リチャードが小声で尋ねた。

「用事があった」

「オフィーリア殿下のところに泊まったのか?」

「冗談は止めてくれ」

「貴方なら暗月島に偽の親戚を作れば信じるわ」

「私は現実に島に親戚がいるんだ」

「ご覧な、お前も嘘をついている」

「では、私が昨晩別の劇場で寝た」

「あら、やっぱり! どこだ?」

「人魚劇場の隣です。

探せば見つかるでしょう。

新人メフィスに連れて行ってあげてください」

「彼は恥ずかしがり屋で嫌がるわ」

「だからこそ貴方が愛で説得する必要があるんだよ。

知っているだろう? あの扉を開けるかどうかの違いしかないんだ。

内気な新人メフィスはいずれ感謝してくれるはずだ」

「その通り、カレン。

やるからに! 私の使命だ」

「そうだね、がんばれ」

ヴォルフロン首席枢機卿が馬車に乗り込んだ。

孫のレオンと書記官ローレも同乗した。

馬車が庭を出発すると、隊長は全員を二列に並ばせて馬車の後ろについてきた。

これは彼らがこの地に来た主な目的で、儀仗隊としてヨーク大区の見せしめ役だった。

会議堂に入ると二人だけが中に入るが、それ以外は自由行動可。

隊伍が宿舎を出発するとすぐに他の部隊と遭遇したが、秩序神教内部では皆和気藴々で争い別れることもなく、特に先陣を競うようなことはなかった。



フロントの広場に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。

対面には輪廻神教の一行が並んでいた。

全員が厳粛で緊張した表情をしている。

ニオは「リラックス」と命じた。

小隊のメンバーたちは意図的に緩んだ動作を見せ始めた。

足を組み、肩を揉む者もいれば、くしゃりと髪をかき上げる者もいる。

隣に並ぶ秩序の鞭小隊の隊長たちも同様の指示を出した。

瞬く間に全員が神袍のままリラックスモードに入った。

勝利側の神官たちは談笑しながら、敗北側の輪廻神教とは対照的な雰囲気を作り出す。

ヴォルフレン枢機主教が馬車から降りると、その光景に自然と笑みが浮かんだ。

勝利者は余裕を持ち、それが失敗者への皮肉となる。

主教たちと代表たちは次々と馬車を出る。

各神官の後ろには秩序の鞭小隊員が荷物を持って歩く。

カレンは薄いファイルを指先で軽く持ち上げながらも、フォーマルに両手で持っていた。

メフティスは清潔な神袍を慎重に運ぶ。

時間になったら双方の代表が別々の入口から会議堂に入った。

内部は劇場形式で中央には交渉テーブルがある。

周囲は低層から高層へと連なる観客席だ。

ラウレはカレンから資料を受け取り、ヴォルフレン枢機主教の後ろに控える。

他の神官記録係も同様に各主教の背後に立つ。

カレンとメフティス、そしてレオンは秩序側の観客席に座った。

レオンは枢機主教の孫として特別な資格を得ていたが、交渉テーブル前まで近づくことは許されなかった。

枢機主教でさえもただの参加者だった。

この回談会議の長は新任大司祭ノートンではなく、枢機主教クレードだった。

ラスマ時代には枢機主教職自体が存在しなかったが、彼の退任とノートンの就任を機に、戦争・発展・監視の三部門を担当する枢機主教制度が導入されたのだ。



クレードが「戦争」の担当を務め、この回覧団の長として彼が選ばれたのは至極当然のことだった。

しかし、輪廻神教の回覧団長が当代の守門人ロミール・シモセンであることを考慮すれば、秩序神教側が枢機総代の一人を派遣したという点自体に勝利者の鼻高揚があった。

戦争の敗北により前任の守門人が責任を取って退いた後、新任のロミールは六十近い女性だった。

その名字が光る存在である理由は、シモセン家が輪廻神教でフィリアス家が光明神教で「守門人」と「教皇」を多く輩出したため、「王族」と呼ばれる存在だからだ。

戦争惨敗後の輪廻神教が即座にシモセン家の人物を再び守門人に推したのは、人心の統合と内部安定化という配慮があったと思われる。

傍聴席で儀装整った老婦人を見つめるカルンは、自分が殺し隊長に灰燼にされたタリーナとの何らかの血縁関係があるのかと考えていた。

暗月島の回覧堂侍者から「お飲み物は何ですか?」

と優しく声をかけられた。

レオンが「紅茶」、カルンとメフィスが「氷水」と答えるとすぐに運ばれてきた。

小さなテーブルに置かれたのは繊細な菓子。

三人は並んで座り、傍聴席の前後左右も広く取られているため、映画館で観るより快適だった。

当然、このレベルの回覧会が開催されるのは初めてのことだ。

「これが私が聞いたことのある最も快適な回覧会です」とレオンが口を開いた。

ヴォルフォンの孫として十六歳から参加を強いられ、先月パミレース教との回覧会では食事準備も自分で行うなど、長年の回覧会に耐え抜いてきた証拠だ。

カルンも頷きながら同意した。

秩序神教が全ての回覧会を開催するならこの場所で開かれるべきだが、それは不可能。

このレベルの回覧会だけがここを借りられるのは、移動コストが莫大だからだ。

メフィスは黙って氷水を飲んでいた。

その時、暗月一族族長ヴェーナが主催者として登壇した。

彼の隣には三人の息子と一人娘が並んでいた。

オフィーリアは甲冑から伝統的な暗月島礼服に着替えており、父のすぐ後ろ一列に立っていたのは、三男全員がその背後に控えているためだ。

彼女は極めて優秀な継承候補者であり、叔父である暗月島最強軍団の指揮官も全力で支持しているため、次代の族長は彼女になるのは間違いない。

注目を集めるオフィーリアを見つめながらカルンは氷水を口に運び、胸の傷がチクッと疼いた。



フォア  短い開会挨拶を終えたウィナー族長はまず暗月島の中立姿勢を宣言したが、実際には場にいる双方の誰もが暗月島がどちら側につくべきか見当をつけている。

次に和平への期待を表明したが、これは冗談にもほどがある。

理論上はループ神教が降伏しているとはいえ、カレンは秩序騎士団が占領した聖地から引き上げていないことを知っている。

両陣営の先頭で激しい小規模衝突が続いているのだ。

最後にウィナー族長は双方にとって納得できる結論を得られることを願った。

三つの冗談めいた発言の後、ウィナー族長は議長席から降りた。

クリード枢機主教が拍手を始めると、向かいの守門人ロミルも合わせて拍手した。

双方のトップが率先して拍手することで会場全体がそれに倣い、暗月島の準備と運営に敬意を表す形になった。

次に両陣営から各一代表が登壇する番だ。

まずループ神教からシモセン家出身の男性上級司祭が発言席へ向かう。

堂々とした姿勢で立つ彼は、整った容姿と相まって成熟した内包的な魅力を放っていた。

「選美大会かな」レオンが冗談めかして言った。

「シモセン氏だよ」カレンが答えた。

レオンが頷きながら笑う。

「ふーん、また皇族の血筋か」

するとレオンは口に菓子を放り込み続けた。

「ループ神教では数十年間シモセン家を含む旧来勢力を抑圧し続けてきた。

彼らの地位を奪い、排除した。

『より純粋なループ神教』というスローガンで、一族や少数の一族による神教ではなく、全ての信者からなる神教を目指していたんだ。

しかし敗北後の政策転換か、それとも長年の抑圧下で旧来勢力が復活して権力を握ったのか。

シモセン家が再び守門人を務め、発言者もシモセン氏だ。

おそらくその他の旧来勢力の代表も同姓同名が多いだろう」

カレンはレオンを見やった。

「どうしたんだよ?」

レオンが尋ねた。

「どう接続すればいいのか迷っている」

「我々ディル家はまだそれほど古い一族じゃないから、曽祖父が秩序神殿にいたとかいう話はない」

「貴方の見解は?」

「利点と欠点があるだろう。

一族勢力が教会内での発展を自然に有利にするのは確かだが、その上で非一族勢力の昇進ルートを確保する必要がある。

この点では我が教団は相当うまくやっている。

前任ラスマ大司祭も現任ノートン大司祭も一族勢力出身ではない。

どちらかというと関係ない。

ループ神教のように頻繁に再編される組織こそが、一つの勢力にとって最大の破壊要因だ」

するとループ神教代表は長々と発言したが、まるで何を言ったのか分からないような印象だった。

秩序神教側からは発言席に最も近い位置に座る司教が立ち上がり、自己紹介も長説明もなく、あっさりと手を伸ばしてスピーカーの拡声器を軽く叩いた。

「会議を開きましょう」

と言った後、降りて席についた。



フ  輪廻神教の代表団から一人が立ち上がり、こう述べた。

「正式会議が始まる前に、新たな傍聴者を加えたい。

教会圏の大教会の代表たちだ。

彼らはこの会議を見届ける資格があると確信している」

その申し出に対して秩序神教の代表団は驚きようがなかった。

暗月島は秩序側の領土であるから、どの勢力がホテルに滞在するかなど、秩序神教が知らないはずがない。

すると秩序神教の主教が立ち上がり、「我が方も同意する」と応じた。

会議堂の一側のドアが開き、各教会の神袍を着た神官たちが入場してきた。

ほぼ全員が枢機卿クラスだった。

闇夜神教・深淵神教・原理神教・雷神教・風の女神教・月神教などの正統神教と大教会の代表が次々と席に着く。

彼らの位置は事前に準備されていた。

交渉エリアの中央付近に配置された。

明らかに輪廻神教がこの交渉に重みをつけるための演出だ。

教会圏全体からの圧力がある以上、秩序神教が醜態を晒すことはないだろう。

カルンは月神教の女性代表がオフィーリアと親しげに席につく様子を見た。

二人は以前から知り合いだったようだ。

しかしカルンはその関係性には疑いを持っていた。

表面的な近さだけではあるまい。

暗月島が急速に成長する中、正統教会である月神教が暗月島を吸収したいという思惑は明らかだった。

彼らは交渉を通じて両者の法理的同一性を認めさせようとしていた。

例えば「月の女神が最も愛用するのは暗月王冠」という記述を神話体系に組み込むことで、暗月島を月神教系の一派とする。

そのような改変が行われれば、暗月は月神教体系の下位神となる。

しかし明らかに暗月島はその提案を受け入れなかった。

受け入れていたら秩序神教との連携などあり得ないからだ。

正統教会からの吸収圧力に対し、唯一の突破口はより強大な正統教会の庇護を求めるしかない。

秩序神教の保護下にある限り月神教が暗月島への進出はできない。

しかし表向きの親密さは保ち続ける必要がある。

信仰するもの自体が類似しているからだ。

原理神教の代表が交渉テーブルにいる枢機卿たちと挨拶を交わした。

秩序神教側では複数人が席を立って歓迎に回った。

実際、原理神教と秩序神教の関係は良好だった。

戦闘に弱い原理神教がこの時代まで存続できたのは秩序神教のおかげであり、両者の交流も密接だった。

例えば祖父ディスと彼の友人ホーフェン氏のように、二人が超規格外な神降儀を行い死後蘇生し邪神を封じるなど、相互に協力する例は枚挙に遑ない。

伝統的に有名な秩序神官には必ず原理神教の親しい友人がいる。

これは一種の固定パターンだった。

両者は定期的に交流会を開催していたが、それはカップル形成ではなくパートナー同士としての関係性を築くためのものだった。



**の部分は「権力」と「打手(組み)」に置き換えました。

**

「権力を求める者と、打手を必要とする者——お互いたくさんいるが、それぞれの欲求に合った相手を見つけるのが最も理想的だ」

暗月島や秩序神教とは交流があるものの、**(ループ教会)**との親善関係は皆無。

これはループ教会が人気を失っている証拠ではない——と誰も言わない。

各教会の使者が傍聴者として集まっている以上、過剰な接触は「自らの教会を後ろ盾にしている」と見られかねないからだ。

特に敗北した側の教会を選ぶなど、明らかに秩序神教と対決する構図になる。

隣席で皆が秩序への圧力をかけつつも——誰一人として先頭に出る者はいない。

全員着席し、ようやく会議が始まった。

最初に発言したのはループ教会の英俊な神官だった。

十二日前に停戦文書を送付したと前置きし、「貴方側の騎士団が当方の聖地に駐留している現状では、和平の誠意が疑問視される」と前置きして——「まずは無条件撤兵をお願いしたい」

「それ以外の選択肢は?」

神官は枢機卿をじっと見据え、「貴方側が誠意を見せないなら、当方は一切の反撃手段を保留する」

会場が一瞬沈黙した。

その時——

「ふっ……」

最前列の**(クリード枢機主教)**が笑い声を漏らす。

「ははは……」

秩序神教の主教たちも顔を緩めた。

ついに傍聴席から全員が哄笑した:

「ははははははっ!」

(補足:原文の**部分は「ループ教会」「クリード枢機主教」に置き換えました。



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