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第0260話「カレンの神罰」
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暗月は秩序の影子すら映し出せない存在だ。
タフマンは内心、カレンが意図的に穏やかな表現を選んだと悟っていた。
本当の意味では「暗月は秩序に靴を履かせる資格もない」という言葉こそが真実なのだ。
しかし彼はその発言に怒りを感じなかった。
なぜならカレンが事実を述べているからだ。
この戦いを通じて人々は秩序神教の強大さを改めて認識した。
以前よりも遥かに強力な存在であることが明らかになったのだ。
個人的な成長や勢力拡大という点においても暗月島と比べ物にならない。
タフマンが口を開いた。
「貴方の志向を理解できる。
しかし投資家として、その目標は我々の資金回収を見えなくする」
カレンが反問した。
「もし私がいなければ貴方は他の誰かに投資するのか?」
「その通りだ」タフマンは頷いた。
長期的な投資と短期的利益という問題だった。
しかしタフマンは知っていた。
カレン自身が決断を下した時点で暗月島には短期利益の可能性は消滅していた。
人を強制的に結婚させることなど不可能だからだ。
最も短絡的な選択肢と言えた。
「貴方が秩序神教でどれだけ上り詰めるか、楽しみにしているわ。
先ほども言ったように貴方の気性は好ましい」
「ありがとうございます」
「ふん、それではお休みなさい」
タフマンが部屋を出ると、外の侍がドアを閉めた直後、彼の表情は一変して険悪になった。
書斎に戻り椅子に座った。
指先で血色の宝石リングを撫でる。
カレンを見抜けないことに苦悩していた。
半生海賊として培った本能が警戒心を煽る。
空が突然荒れ狂うように、何の根拠もなくその確固たる証拠チェーンの中に隠された不可解な事情を感じ取ってしまうのだ。
それは明らかに矛盾する。
目的がただ自分の姪の好感を得ることだけなら、あまりにも壮大すぎる計画だ。
しかし彼女はカレンとの接触を拒否し、タフマンもカレンに対して暗月への軽蔑を隠さず、ポールズ氏の言葉まで引き合いに出していた。
つまりカレンが意図的に偽装したという可能性。
だがその全ては二人の関係を結婚に導くことを阻止するためだった。
タフマンは眉根を寄せた。
この矛盾は解けない。
するとノック音が響いた。
「どうぞ」
書斎のドアが開き、オフィーリアが現れた。
「おじいちゃん」
タフマンは気づいた、姪が書斎に入ろうとしているのではなく、単に挨拶してからすぐに出るつもりなのだ。
彼女は叔父を頼って、自分が救った男を見舞うためだった。
オフィーリアを娘のように思ってきたタフマンは、その姿を見て胸中で少しだけ諦観の念が湧いた。
「宴が終わった?」
「はい、おじさん。
」
今夜は叔父の兄がヴァルフォレンら数名の司教と関係を深めるために招き、姪も同席した。
宴が終わるとすぐにここに戻ってきたのだ。
「目覚めたぞ、見に来い」
「了解です、おじさん」
オフィーリアは書斎の戸を閉めた。
「ふん……」
タフマンは自嘲的な笑みを浮かべ、手にした血の宝石を見つめる。
彼は艦隊を率いて海賊や他の島勢力と戦う方が好きだった。
なぜなら自分が対峙する敵がどんなに厄介でも、自分の運営と準備で打ち破れるからだ。
しかし正統派の神教とは違い、自分は十連勝しても双方の実力差は巨大であり、逆に一敗すれば暗月島は滅ぶ。
無理難題を相手にするのが嫌いなのは誰もがそうだろう。
タフマンは額に手を当てて独りごちた。
「光の残党……」
ドアが開きオフィーリアが入ってきた。
カレンはベッドに身を起こし、侍者が運んで来た茶を口にしていた。
オフィーリアはベッドのそばに座り、心配そうに尋ねた。
「傷は大丈夫?」
「貴方の治療のおかげで早く回復したわ」
その言葉にオフィーリアの表情がわずかに硬直し、返す言葉を失った。
カレンは茶を置き笑みを浮かべた。
「冗談ですとも、お世話になったと感謝しています。
こんな待遇は滅多にないでしょう」
オフィーリアは首を横に振る。
「どうしてそんなに早く回復したの?」
「棺桶に入らないうちは可能な限り明るく過ごすのが私の主義よ」
「棺桶に入れたらどうする?」
「死んだ後も笑顔を維持できるかもしれないわ」
「何か食べたいものがある?」
カレンは驚いて訊ねた。
「貴方が作ってくれるの?」
「いいえ、料理人さんに頼むわ」
「何でも構わないわ」
「それからどうするべきかしら?」
とオフィーリアが尋ねた。
「私を救ったのは君よ、君は死ななかった、重傷で倒れていたけど目覚めた、私はベッドのそばに座っている、君は明るい性格……今すべきことは何かしら?」
「笑顔で生きるべきよ」
「冗談はやめて」
「冗談じゃないわ」
「あなたはただのんきにしているだけでしょう」オフィーリアが断言した。
その口角には笑みがあったが、それは冷たいものだった。
「もし私が貴方をずっと面倒見続けると言ったり、好意を告げるとしたら、貴方はいつもの婚約者を持ち出して私をあしらうか、この話題を無意識に逸らすでしょう」
「本当に?」
「そうでしょう」
「つまりお互いたくさんのことを知っているわけだな」
「小さい頃から欲しがったものはほとんど手に入れたわ」
「それは良い教育法ではない。
子供にはそんなふうに溺愛しないようにしなさい」
「だからどうでもいい!」
オフィーリアが汚い言葉を吐いたのは初めてのことだった。
カルンは今まで一度も王女がそのような表現を使うのを見たことがなかった。
するとカルンの手をオフィーリアが掴んだ。
カルンは引き返そうとはしなかったが、次の瞬間には指と指が絡み合い、カルンが後ろに引っ張ろうとした時、動かなくなった。
以前の隊長との戦いで学んだ経験から、術法面ではオフィーリアと互角だった。
しかし暗月の武者である彼女は身体能力で圧倒的に優れていたのだ。
彼女が隊長と近距離戦闘を繰り返す際には劣勢に陥っていたが、あれは隊長相手だったからだ。
オフィーリアが力を込めた時、カルンが再び引き離そうとしたのは現実的ではなかった。
さらにカルンの力加減と同時にオフィーリアも力を入れていたようだった。
結局カルンは妥協し、より強く引っ張ろうとはしなかった。
なぜならその先には術法を使った上でベッドで戦うような状況が待っていたからだ。
オフィーリアの冷たい笑みは変わらなかった。
彼女がカルンの手を掴んだ後、体を前に倒し、もう片方の手でカルンの腰に回した。
顔は胸元に押し付けられた。
カルンは反射的に王女の腰を抱く手を動かそうとしたが、その動きを感じ取ったオフィーリアは先んじて力を入れ、さらに強く引き寄せた。
彼女の頭は胸元で新たな角度を探りながら落ち着いた。
「ごめんなさい。
男の胸に初めて頬擦りするなんて経験がないわ」
「えっと……」
「抵抗しても構わないわ。
貴方には傷があるとはいえ、身近な距離では私の敵にはならないでしょうし、そうでない場合でも」
「いや……」
かつてある女性がヴァニィに嘆いていたのをカルンは知っていた。
彼女は隊長室で最初にカレンを見た時、強制的に抱きつけておけばよかったと後悔したのだ。
その後しばらくして自分がカレンには勝てないことに気づいたのである。
オフィーリアはその女性と同じ過ちを犯さなかった。
カルンはベッドの上に座り続け、王女はそのまま彼女の体を支えている。
王女の顔には憂いも苦悩もない。
彼女は清明を得たかのように思えたが、それは暗月の導きだったのだ。
彼女は学校の女の子ではない。
表面で強がって裏では泣くようなことはしない。
彼女は王女であり武者なのだ。
二人の情熱を共に得られないなら、少なくとも一方的に満足を得るだけでも良いと悟ったのである。
その瞬間、彼女の心は晴れやかになった。
「オフィーリア……」
「えーと……今この気分を邪魔しないでくれますか?」
「背中に手を置くのが礼儀正しい行為だ」
「でも……」
「その小さな要求さえも叶えられないのか?友人として頼むんだよ」
カルンがオフィーリアの背中に手を置いた。
オフィーリアはカルンの胸に身を預け、リラックスした表情で横たわる。
「貴方の婚約者さんも同じように抱きしめられたのか?」
「抱かれた」
「彼女はとても優しくて温かい人なのだろう?私は経験がないわけではないが……貴方は控えめなタイプを好むんだろうね?
正直に答えてくれよ、ただ本当の答えを聞きたかっただけだ」
「そうだ」
「そうだ」という言葉が出た瞬間、カルンは腰を締め付けられる感覚に気づいた。
約束通り何も問題ないはずなのに。
「貴方と婚約者さんは両親の仲介で知り合ったんだろ?」
「ええ、そうなんだ」
「もし最初の婚約者が私だったらどうする?一緒にいようか?」
カルンはためらう。
「答えを出せ」
オフィーリアが促す。
「いいや」
「なぜ?」
「あなたもとても美しいからだ」
「女性を見る目は容姿だけなのか?」
「初対面の婚約者なら見た目以外に見るものがあるのかい?」
「だから、貴方が遅すぎたんだろ?運命か何か?」
「カルン、貴方の恋愛観は本当に浅薄だね。
暗月島の民は先祖ベルナの物語で育まれてきたから、ロマンチックな価値観を持っているはずなのに。
貴方はベルナの本当の恋愛像を教えてくれないのか?」
「オフィーリアさん、この世に恋愛譚が人気があるのはなぜか知ってる?人々は現実では得られないものを文学で求めるからだ。
貴方が私の価値観を浅薄だと感じるかもしれないけど、実は私は世界のほとんどの人より幸せなんだから。
貴方より年上ではないよ」
オフィーリアが指摘する。
「でも……」
「大丈夫さ、安心して。
婚約者さんとの関係は崩さないわ。
島には結婚法はないけど、マクレール語の作品を読むときにも一夫一妻への共感を感じる。
貴方も何も気にしないで、私はむしろ祝福の笑顔で結婚式に出席する」
「でも……」
「いいや、ただ祝福するだけよ。
邪魔するつもりはないわ」
「オフィーリアさん……」
「黙ってて。
もう少し抱きしめて」
しばらく経った後、
オフィーリアは顔に湿り気を感じて驚き、カルンを見上げながら尋ねた。
「どうしたの?」
「傷口が裂けたんだよ」
事実が改めて証明したように、本来は早く回復できた傷もオフィーリアの手厚い世話でさらに悪化していた。
幸いなことに治療資源が豊富で深夜に新たな医師が術法による治療を施してくれたため、翌朝カルンは自分で起き上がり洗顔できるようになった。
これはもちろん隊長の適切な傷処置のおかげだ。
「隊長には既に状況を伝えてある。
彼は貴方の代わりに勤務を引き継がせることで静養してほしいと返事をしている。
隊長は本当に優しい人物よ」
「うん」
そうなのだ、カルンはむしろここで子守りをするのが嬉しかった。
「今日はホテルに戻る必要があるのか?」
「今日は会議の開幕日だ。
現場に行ってみたい」
オフィーリアが尋ねた。
「貴方も関心がないのか?」
「詳細は会議終了後に確認できるわ」
カルンは首を横に振った。
「違わない、雰囲気を感じたいのだ。
例えば傍聴席で一日過ごした後、次の日にはもう飽きてしまうかもしれない」
「退屈なら島の他の場所へ案内するわ」
カルンが拒まずに頷いた。
朝食は豪華だった。
特にその亀の卵は鮮美でスプーンですくって食べるだけで陶然とするほどだった。
カルンには、この亀の卵さえあれば春麺よりも優先されるような気がした。
しかしオフィーリアによるとこれは叔父・タフマン大将が航海中に特別に捕獲したもので暗月島の姫様ですら毎日食べられるものではないという。
ましてやカルンのような存在には到底手が出せない代物だった。
現在まで、カルンの猫だけがポイントで買ったコーヒー豆を飲んでいる以外、他の誰もポイント食事を摂取していない。
朝食を済ませた後オフィーリアは言った。
「私の馬車に乗ってホテルに戻ろう」
続けて付け加えた。
「私も貴方と一緒に行きたいことがあるのよ」
二人で馬車に乗り込むのは明らかに何かを示唆している。
カルンはその感覚が奇妙だった。
一般的には男女関係では男性が主導権を握りたいものだが、オフィーリアの場合完全に逆転していたのだ。
いや、もしかしたら性別を入れ替えた方が理解しやすいかもしれない。
オフィーリアは明らかに彼女が演じているのは友達役の台本だ。
つまりカルンは…
「乗る必要はないわ」
カルンが邸宅を出ると通りで馬車を呼んだ。
「ベルナホテルへ」
その時、甲冑姿の武者も乗り込んだ。
面かべに覆われていたがカルンはそれがオフィーリアだと知っていた。
オフィーリアは手を開いてカルンを見た。
「これなら貴方の名誉を傷つける心配もないわ」
「この鎧、最初に船から降りた時よりずっと合っているわね」
「大型甲胄は着用に手間と時間がかかる。
それに最近ホテルを出る際には注意が必要だ。
あの光の余党はまだ捕まえていないが、まるで消えたかのように姿をくらませている。
全島的に密かに捜索中だ」
カルンがうなずいた。
「早くでも捕まえたいものだ。
この野郎!」
馬車がベルナホテルへ向かう途中、オフィーリアが口を開いた。
「側門から入ろう。
我々の紳士は見られたくないみたいだ」
「承知しました、お嬢様。
それに先生、あまり不親切ですね」
ベルナホテルにはいくつか宿泊区域があり正面入口は最大級の区域を占め秩序神教の人々が滞在している。
側門の方はループ神教の区域に位置しており両団体は同じホテル内にあってもほとんど交流がない
ベルナホテル側門前で群衆が横断幕を掲げて叫んでいた。
「平和を!」
「侵略反対!宗教戦争反対!」
その光景を見てカルンが尋ねた。
「暗月島にループ神教の信者がいるのか?」
オフィーリアは首を横に振った。
「島内にはいない。
しかしループ神教の一聖地はこの島から近い場所にある。
暗月島は大島だが周辺海域にも小島がありその多くがループ神教の信者だ。
今回は自主的に来島した連中で会議期間中は登録済みなので追い払わない。
終了後は秩序神教のみの伝道所が残るだけ」
「なぜ正面ゲート前で抗議しないのか?」
「殴られるからだ」
車夫が馬車を停めた。
「お嬢様、先生、到着です」
オフィーリアが金貨一枚を運転手に渡した。
「お祈りします。
広大なお方」
カルンとオフィーリアが降りた
カルンが口を開いた。
「私は宿泊区域で戻ったことを報告する」
「私は会議ホールへ行くわ」
「ああ、じゃあ後でね」
「さようなら」
カルンは神袍ではなく島民の衣服を着ていて顔も隠していなかった。
そのまま普通にループ神教の宿泊区域を通り抜け自宅の庭に入った
ドアを開け中に入ると誰もいない。
まだ会議開始まで少し時間があったが皆が部屋で朝食を摂っているようだった
カルンが自分の部屋の扉を開けると隊長がベッドに座ってコーヒーを飲んでいた。
カルンの帰還を見た隊長は即座にカップを置き立ち上がりカルンの前に手を伸ばして身体検査を始めた
「見ろこの通りだ。
傷一つ残らないよ。
最高の治療術と薬品を使ったんだ」
「隊長、次からはやめてほしい……」
タフマンは内心、カレンが意図的に穏やかな表現を選んだと悟っていた。
本当の意味では「暗月は秩序に靴を履かせる資格もない」という言葉こそが真実なのだ。
しかし彼はその発言に怒りを感じなかった。
なぜならカレンが事実を述べているからだ。
この戦いを通じて人々は秩序神教の強大さを改めて認識した。
以前よりも遥かに強力な存在であることが明らかになったのだ。
個人的な成長や勢力拡大という点においても暗月島と比べ物にならない。
タフマンが口を開いた。
「貴方の志向を理解できる。
しかし投資家として、その目標は我々の資金回収を見えなくする」
カレンが反問した。
「もし私がいなければ貴方は他の誰かに投資するのか?」
「その通りだ」タフマンは頷いた。
長期的な投資と短期的利益という問題だった。
しかしタフマンは知っていた。
カレン自身が決断を下した時点で暗月島には短期利益の可能性は消滅していた。
人を強制的に結婚させることなど不可能だからだ。
最も短絡的な選択肢と言えた。
「貴方が秩序神教でどれだけ上り詰めるか、楽しみにしているわ。
先ほども言ったように貴方の気性は好ましい」
「ありがとうございます」
「ふん、それではお休みなさい」
タフマンが部屋を出ると、外の侍がドアを閉めた直後、彼の表情は一変して険悪になった。
書斎に戻り椅子に座った。
指先で血色の宝石リングを撫でる。
カレンを見抜けないことに苦悩していた。
半生海賊として培った本能が警戒心を煽る。
空が突然荒れ狂うように、何の根拠もなくその確固たる証拠チェーンの中に隠された不可解な事情を感じ取ってしまうのだ。
それは明らかに矛盾する。
目的がただ自分の姪の好感を得ることだけなら、あまりにも壮大すぎる計画だ。
しかし彼女はカレンとの接触を拒否し、タフマンもカレンに対して暗月への軽蔑を隠さず、ポールズ氏の言葉まで引き合いに出していた。
つまりカレンが意図的に偽装したという可能性。
だがその全ては二人の関係を結婚に導くことを阻止するためだった。
タフマンは眉根を寄せた。
この矛盾は解けない。
するとノック音が響いた。
「どうぞ」
書斎のドアが開き、オフィーリアが現れた。
「おじいちゃん」
タフマンは気づいた、姪が書斎に入ろうとしているのではなく、単に挨拶してからすぐに出るつもりなのだ。
彼女は叔父を頼って、自分が救った男を見舞うためだった。
オフィーリアを娘のように思ってきたタフマンは、その姿を見て胸中で少しだけ諦観の念が湧いた。
「宴が終わった?」
「はい、おじさん。
」
今夜は叔父の兄がヴァルフォレンら数名の司教と関係を深めるために招き、姪も同席した。
宴が終わるとすぐにここに戻ってきたのだ。
「目覚めたぞ、見に来い」
「了解です、おじさん」
オフィーリアは書斎の戸を閉めた。
「ふん……」
タフマンは自嘲的な笑みを浮かべ、手にした血の宝石を見つめる。
彼は艦隊を率いて海賊や他の島勢力と戦う方が好きだった。
なぜなら自分が対峙する敵がどんなに厄介でも、自分の運営と準備で打ち破れるからだ。
しかし正統派の神教とは違い、自分は十連勝しても双方の実力差は巨大であり、逆に一敗すれば暗月島は滅ぶ。
無理難題を相手にするのが嫌いなのは誰もがそうだろう。
タフマンは額に手を当てて独りごちた。
「光の残党……」
ドアが開きオフィーリアが入ってきた。
カレンはベッドに身を起こし、侍者が運んで来た茶を口にしていた。
オフィーリアはベッドのそばに座り、心配そうに尋ねた。
「傷は大丈夫?」
「貴方の治療のおかげで早く回復したわ」
その言葉にオフィーリアの表情がわずかに硬直し、返す言葉を失った。
カレンは茶を置き笑みを浮かべた。
「冗談ですとも、お世話になったと感謝しています。
こんな待遇は滅多にないでしょう」
オフィーリアは首を横に振る。
「どうしてそんなに早く回復したの?」
「棺桶に入らないうちは可能な限り明るく過ごすのが私の主義よ」
「棺桶に入れたらどうする?」
「死んだ後も笑顔を維持できるかもしれないわ」
「何か食べたいものがある?」
カレンは驚いて訊ねた。
「貴方が作ってくれるの?」
「いいえ、料理人さんに頼むわ」
「何でも構わないわ」
「それからどうするべきかしら?」
とオフィーリアが尋ねた。
「私を救ったのは君よ、君は死ななかった、重傷で倒れていたけど目覚めた、私はベッドのそばに座っている、君は明るい性格……今すべきことは何かしら?」
「笑顔で生きるべきよ」
「冗談はやめて」
「冗談じゃないわ」
「あなたはただのんきにしているだけでしょう」オフィーリアが断言した。
その口角には笑みがあったが、それは冷たいものだった。
「もし私が貴方をずっと面倒見続けると言ったり、好意を告げるとしたら、貴方はいつもの婚約者を持ち出して私をあしらうか、この話題を無意識に逸らすでしょう」
「本当に?」
「そうでしょう」
「つまりお互いたくさんのことを知っているわけだな」
「小さい頃から欲しがったものはほとんど手に入れたわ」
「それは良い教育法ではない。
子供にはそんなふうに溺愛しないようにしなさい」
「だからどうでもいい!」
オフィーリアが汚い言葉を吐いたのは初めてのことだった。
カルンは今まで一度も王女がそのような表現を使うのを見たことがなかった。
するとカルンの手をオフィーリアが掴んだ。
カルンは引き返そうとはしなかったが、次の瞬間には指と指が絡み合い、カルンが後ろに引っ張ろうとした時、動かなくなった。
以前の隊長との戦いで学んだ経験から、術法面ではオフィーリアと互角だった。
しかし暗月の武者である彼女は身体能力で圧倒的に優れていたのだ。
彼女が隊長と近距離戦闘を繰り返す際には劣勢に陥っていたが、あれは隊長相手だったからだ。
オフィーリアが力を込めた時、カルンが再び引き離そうとしたのは現実的ではなかった。
さらにカルンの力加減と同時にオフィーリアも力を入れていたようだった。
結局カルンは妥協し、より強く引っ張ろうとはしなかった。
なぜならその先には術法を使った上でベッドで戦うような状況が待っていたからだ。
オフィーリアの冷たい笑みは変わらなかった。
彼女がカルンの手を掴んだ後、体を前に倒し、もう片方の手でカルンの腰に回した。
顔は胸元に押し付けられた。
カルンは反射的に王女の腰を抱く手を動かそうとしたが、その動きを感じ取ったオフィーリアは先んじて力を入れ、さらに強く引き寄せた。
彼女の頭は胸元で新たな角度を探りながら落ち着いた。
「ごめんなさい。
男の胸に初めて頬擦りするなんて経験がないわ」
「えっと……」
「抵抗しても構わないわ。
貴方には傷があるとはいえ、身近な距離では私の敵にはならないでしょうし、そうでない場合でも」
「いや……」
かつてある女性がヴァニィに嘆いていたのをカルンは知っていた。
彼女は隊長室で最初にカレンを見た時、強制的に抱きつけておけばよかったと後悔したのだ。
その後しばらくして自分がカレンには勝てないことに気づいたのである。
オフィーリアはその女性と同じ過ちを犯さなかった。
カルンはベッドの上に座り続け、王女はそのまま彼女の体を支えている。
王女の顔には憂いも苦悩もない。
彼女は清明を得たかのように思えたが、それは暗月の導きだったのだ。
彼女は学校の女の子ではない。
表面で強がって裏では泣くようなことはしない。
彼女は王女であり武者なのだ。
二人の情熱を共に得られないなら、少なくとも一方的に満足を得るだけでも良いと悟ったのである。
その瞬間、彼女の心は晴れやかになった。
「オフィーリア……」
「えーと……今この気分を邪魔しないでくれますか?」
「背中に手を置くのが礼儀正しい行為だ」
「でも……」
「その小さな要求さえも叶えられないのか?友人として頼むんだよ」
カルンがオフィーリアの背中に手を置いた。
オフィーリアはカルンの胸に身を預け、リラックスした表情で横たわる。
「貴方の婚約者さんも同じように抱きしめられたのか?」
「抱かれた」
「彼女はとても優しくて温かい人なのだろう?私は経験がないわけではないが……貴方は控えめなタイプを好むんだろうね?
正直に答えてくれよ、ただ本当の答えを聞きたかっただけだ」
「そうだ」
「そうだ」という言葉が出た瞬間、カルンは腰を締め付けられる感覚に気づいた。
約束通り何も問題ないはずなのに。
「貴方と婚約者さんは両親の仲介で知り合ったんだろ?」
「ええ、そうなんだ」
「もし最初の婚約者が私だったらどうする?一緒にいようか?」
カルンはためらう。
「答えを出せ」
オフィーリアが促す。
「いいや」
「なぜ?」
「あなたもとても美しいからだ」
「女性を見る目は容姿だけなのか?」
「初対面の婚約者なら見た目以外に見るものがあるのかい?」
「だから、貴方が遅すぎたんだろ?運命か何か?」
「カルン、貴方の恋愛観は本当に浅薄だね。
暗月島の民は先祖ベルナの物語で育まれてきたから、ロマンチックな価値観を持っているはずなのに。
貴方はベルナの本当の恋愛像を教えてくれないのか?」
「オフィーリアさん、この世に恋愛譚が人気があるのはなぜか知ってる?人々は現実では得られないものを文学で求めるからだ。
貴方が私の価値観を浅薄だと感じるかもしれないけど、実は私は世界のほとんどの人より幸せなんだから。
貴方より年上ではないよ」
オフィーリアが指摘する。
「でも……」
「大丈夫さ、安心して。
婚約者さんとの関係は崩さないわ。
島には結婚法はないけど、マクレール語の作品を読むときにも一夫一妻への共感を感じる。
貴方も何も気にしないで、私はむしろ祝福の笑顔で結婚式に出席する」
「でも……」
「いいや、ただ祝福するだけよ。
邪魔するつもりはないわ」
「オフィーリアさん……」
「黙ってて。
もう少し抱きしめて」
しばらく経った後、
オフィーリアは顔に湿り気を感じて驚き、カルンを見上げながら尋ねた。
「どうしたの?」
「傷口が裂けたんだよ」
事実が改めて証明したように、本来は早く回復できた傷もオフィーリアの手厚い世話でさらに悪化していた。
幸いなことに治療資源が豊富で深夜に新たな医師が術法による治療を施してくれたため、翌朝カルンは自分で起き上がり洗顔できるようになった。
これはもちろん隊長の適切な傷処置のおかげだ。
「隊長には既に状況を伝えてある。
彼は貴方の代わりに勤務を引き継がせることで静養してほしいと返事をしている。
隊長は本当に優しい人物よ」
「うん」
そうなのだ、カルンはむしろここで子守りをするのが嬉しかった。
「今日はホテルに戻る必要があるのか?」
「今日は会議の開幕日だ。
現場に行ってみたい」
オフィーリアが尋ねた。
「貴方も関心がないのか?」
「詳細は会議終了後に確認できるわ」
カルンは首を横に振った。
「違わない、雰囲気を感じたいのだ。
例えば傍聴席で一日過ごした後、次の日にはもう飽きてしまうかもしれない」
「退屈なら島の他の場所へ案内するわ」
カルンが拒まずに頷いた。
朝食は豪華だった。
特にその亀の卵は鮮美でスプーンですくって食べるだけで陶然とするほどだった。
カルンには、この亀の卵さえあれば春麺よりも優先されるような気がした。
しかしオフィーリアによるとこれは叔父・タフマン大将が航海中に特別に捕獲したもので暗月島の姫様ですら毎日食べられるものではないという。
ましてやカルンのような存在には到底手が出せない代物だった。
現在まで、カルンの猫だけがポイントで買ったコーヒー豆を飲んでいる以外、他の誰もポイント食事を摂取していない。
朝食を済ませた後オフィーリアは言った。
「私の馬車に乗ってホテルに戻ろう」
続けて付け加えた。
「私も貴方と一緒に行きたいことがあるのよ」
二人で馬車に乗り込むのは明らかに何かを示唆している。
カルンはその感覚が奇妙だった。
一般的には男女関係では男性が主導権を握りたいものだが、オフィーリアの場合完全に逆転していたのだ。
いや、もしかしたら性別を入れ替えた方が理解しやすいかもしれない。
オフィーリアは明らかに彼女が演じているのは友達役の台本だ。
つまりカルンは…
「乗る必要はないわ」
カルンが邸宅を出ると通りで馬車を呼んだ。
「ベルナホテルへ」
その時、甲冑姿の武者も乗り込んだ。
面かべに覆われていたがカルンはそれがオフィーリアだと知っていた。
オフィーリアは手を開いてカルンを見た。
「これなら貴方の名誉を傷つける心配もないわ」
「この鎧、最初に船から降りた時よりずっと合っているわね」
「大型甲胄は着用に手間と時間がかかる。
それに最近ホテルを出る際には注意が必要だ。
あの光の余党はまだ捕まえていないが、まるで消えたかのように姿をくらませている。
全島的に密かに捜索中だ」
カルンがうなずいた。
「早くでも捕まえたいものだ。
この野郎!」
馬車がベルナホテルへ向かう途中、オフィーリアが口を開いた。
「側門から入ろう。
我々の紳士は見られたくないみたいだ」
「承知しました、お嬢様。
それに先生、あまり不親切ですね」
ベルナホテルにはいくつか宿泊区域があり正面入口は最大級の区域を占め秩序神教の人々が滞在している。
側門の方はループ神教の区域に位置しており両団体は同じホテル内にあってもほとんど交流がない
ベルナホテル側門前で群衆が横断幕を掲げて叫んでいた。
「平和を!」
「侵略反対!宗教戦争反対!」
その光景を見てカルンが尋ねた。
「暗月島にループ神教の信者がいるのか?」
オフィーリアは首を横に振った。
「島内にはいない。
しかしループ神教の一聖地はこの島から近い場所にある。
暗月島は大島だが周辺海域にも小島がありその多くがループ神教の信者だ。
今回は自主的に来島した連中で会議期間中は登録済みなので追い払わない。
終了後は秩序神教のみの伝道所が残るだけ」
「なぜ正面ゲート前で抗議しないのか?」
「殴られるからだ」
車夫が馬車を停めた。
「お嬢様、先生、到着です」
オフィーリアが金貨一枚を運転手に渡した。
「お祈りします。
広大なお方」
カルンとオフィーリアが降りた
カルンが口を開いた。
「私は宿泊区域で戻ったことを報告する」
「私は会議ホールへ行くわ」
「ああ、じゃあ後でね」
「さようなら」
カルンは神袍ではなく島民の衣服を着ていて顔も隠していなかった。
そのまま普通にループ神教の宿泊区域を通り抜け自宅の庭に入った
ドアを開け中に入ると誰もいない。
まだ会議開始まで少し時間があったが皆が部屋で朝食を摂っているようだった
カルンが自分の部屋の扉を開けると隊長がベッドに座ってコーヒーを飲んでいた。
カルンの帰還を見た隊長は即座にカップを置き立ち上がりカルンの前に手を伸ばして身体検査を始めた
「見ろこの通りだ。
傷一つ残らないよ。
最高の治療術と薬品を使ったんだ」
「隊長、次からはやめてほしい……」
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