吸血鬼を刺殺した

きりしま つかさ

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第0006話 犬のように追われながらも——

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肥った短髪の校長の足元から、丸底黒革靴を履いた女の生徒の足が露わになっていた。

瞬間、校長の顔色が暗くなった。

彼はネクタイを緩めた。

「本来なら放ってやるつもりだった」

「だが──」

「皇女様の羊飼いである私が、自分で羊を食うなど」

「やはり罪がある」

「だから──」

次の瞬間、校長の声調が変わった。

「おまえは警察か? 」校長は大叔の警官服に気づいて尋ねた。

その一瞬で彼は再び狂気から引き戻されたようだった。

校長は傲慢に指差した。

「私は帝国東8区南部江城首府圏の尊貴な議員だ!」

「帝国警察の君が、私を捕まえる手助けをしていないのか?」

「おまえは臨時職員で馘げられるのが怖いのか?」

周元は大叔がそんな人間ではないと信じていたが、大叔は意外にも激怒した。

「こんな時にまだ仲間外れにしようとするのか!」

「植民地警察など──私はもう辞めたいと思っていたんだ!」

大叔は警官服を一気に脱ぎ捨てた。

その刹那、彼の落着き払った雰囲気が消えた。

その瞬間、彼は格好良くもてはやされた。

「それだけじゃなく──臨時職員に何が悪い!」

「臨時職員が何かしたのか!」

「臨時職員だって一生懸命なんだぞ! いいかね!」

「臨時職員を見下すな! あああ!」

「彼らは不服になるだろう──」

二人の反応が定まらぬうちに、大叔は突然銃声を響かせた!

『バチ』と空虚な廃ビルに響き渡る音。

弾丸は校長の眉心に命中し血飛沫が散った──

「うっかり! 」周元が驚愕の叫びを上げた。

「大叔、臨時警察って一言で爆頭するのか?」

「おや、私はただ彼が抵抗して逃げ出さないように四肢を狙っていたんだよ!」

「証人になってくれよ!」

大叔は周元の足に抱きつき嗚咽した。

「あーあ、大叔の銃法ってこんなものか。

本当に無能だね──」

突然、聞き覚えのある声が彼らの耳朜を突いた。

「おまえらまだ終わらないのか? 」

「私は死んでないぞ」

「!!!」

「!!!」

肥った短髪校長は冷ややかに彼らを見下していた。

眉心の弾殻が彼の体をゆっくり圧縮され──

『ドン』と地面に落ちた。

その傷口から細胞が急速分裂し、多くの不気味な肉糸が生じた。

それらは絡み合い、銃創を塞いだ。

「吸血鬼か! 」大叔が叫んだ。

「ふん、『吸血鬼』とは──」

「失礼な呼び方だね!」

「どうぞ、私の子たちよ──」

「カチッ、カチ、カチッ、カチッ」と奇妙な音を立てながら、校長の足元から丸底黒革靴が動き出した。

見やると、五体の『校服』が歪んだ姿勢で立ち上がっていた。

彼らは顔も判別できないほど醜く、校服からしか生徒であることがわかった。

灰色の肌は不自然な角度を保ち、強制的に接続されたように見える。

口からは鋭い牙が覗き、手には長い爪が伸びていた──

「ゴーゴー!」

五体が同時に猛々しい咆哮を上げた。

暴虐への渇望を発散させるためだ。



周元はその怪物の姿に驚愕していた。

右手の利き爪にはノートが刺さっていた。

そのノートはどこか懐かしい香りを放ち、彼女自身と同様の匂いを漂わせていた。

「不可能だ……」

「本物じゃないんだから……」

かつて白いリボンでまとめた黒髪の美しい少女が浮かんできた。

ノートを手にし、真剣に記録する姿。

頬に酒窝のある可愛らしい笑顔。

「ああああ!」

『バチッ』『バチッ』『バチッ』『バチッ』『バチッ』と連射される左輪銃の音が響く中、周元が混乱する前に大叔は残弾を全て撃ち尽くした。

「やめろ!」

「林薇がまだ中にいるんだ!」

周元は大叔の首に手をかけて叫ぶ。

だが大叔は無情にも返す。

「諦めてくれよ」

「彼女はもう死んでいるんだ」

しかし次の瞬間、二人は喧嘩する余裕もなく逃げ出すしかない。

五体の怪物が迫り来るからだ。

「四階で一回旋っ!」

周元は四階の階段で急ブレーキをかけた。

慣性で下がっていた身体が突然四階へと向き、大叔も後に続く。

ようやく怪物たちとの距離を開けた瞬間だった。

「なぜ使わないんだよ!」

大叔が追いついてくると叫ぶ。

「はあーっ、大叔さん!少し頭を使えよ!」

「必殺技を最初から使うわけないだろ!」

「本当に五分で解決できると思ってるのか?」

周元は振り返りながら答えた。

後方には三体の怪物が迫り、一階に二体。

さらに五階では吸血鬼がまだ下がらなかった。

吸血鬼校長は五階上から観戦していた。

彼のコントロールで二体の怪物が階段を駆け下り、周元と大叔の最後の退路を塞ぐ。

「食屍鬼だ」

激しい動きの中で大叔は息を切らしながら説明する。

風に乱れる髪も構わず語る彼の舌足らずな口調がまた不気味だった。

「吸血鬼が自分の血液で作った怪物なんだよ」

「えっ、噛まれたら吸血鬼になるんじゃないのか?!」

周元は疑問を投げかける。

これは単なる雑談ではなく敵の弱点を探るためだ。

「相手の血液を吸い尽くすんだ」

「その血液に含まれる遺伝子が不十分なら……」

「食屍鬼になってしまうんだよ」

フウド大さんはそう言いながら、通路に積まれた鉄のテーブルをすべて蹴倒した。

3匹の食屍鬼が後ろから追いかけてくる。

その効果はどうだろう?

3匹の食屍鬼は巨力の推土機のように無情に突進してきて——

前方の鉄のテーブルをそのまま吹っ飛ばす!

その衝撃力、彼らの体に当たったら恐ろしすぎた!

二人は冷汗をかきながらも、先ほどの質問に戻る。

「反哺血液の精華が十分にあるなら吸血鬼に変わる」

「しかし——代償として吸血鬼自身の生命力が失われる」

走りながら周元の脳は高速で回転する。

なるほど!

人類が吸血鬼の支配下で生き延びられる理由がわかった——

だが、今の窮地をどう打開するか?

周元はふと、太った禿頭校長が眉間から弾丸を発射し、その後完全に復活した光景を思い出す。

では食屍鬼はどうだろう?

彼は急いで振り返る。

フウド大さんの左拳銃の砲声が彼らの動きに影響を与えないのは明らかだが——

彼らの体には弾孔が残っている!

明らかに、食屍鬼と吸血鬼は異なる種だ。

知能、体力、能力すべてに明確な差異がある。

突然、周元の頭の中で一つのアイデアが沸き上がった。

これは完全に自動的に浮かんだものだった——

しかし有用なら試してみよう!

「フウド大さん、僕に考えがあります」

「1分間だけ実験させてください!」

......

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