吸血鬼を刺殺した

きりしま つかさ

文字の大きさ
37 / 251
0000

第0037話 ヤマタケル——本当に存在するのか?!

しおりを挟む
山路の最後尾を歩いていた大叔が突然固まった。

一体何を見たというのだ!

まさか本当に山霊だったのか?

さっき——!

まさにその時——!

明らかに黒い影が林間を駆け抜けたと見えたではないか!

皆は囁き合う大叔の沈黙に気付き、振り返った。

「どうしたんだよ、大叔?」

周元が尋ねる。

「さっき——!」

「さっきみんなも黒影を見たのか?!」

「あははははー」

「大叔、お前だけ怖がってるんじゃないの?」

阿梓が笑う。

「笑わせないよ、本当に見えたんだから!」

「みんなも見てなかったのか?」

周元:「見ていない。



阿梓:「見た覚えがないぞ!」

小洛:「見ていない——」

黒猫:「みー……」

「たぶん動物だろ」周元が説明する。

大叔は頷き、自分を納得させようとする——

あれはただの動物!

絶対に他物ではない!

妖怪や怪物や霊などとは無関係!

数人が進む——

『すうー』冷たい風が吹き抜け、皆不覚にも身震いする。

だが大叔は突然叫んだ:

「おいおい!見たぞ!また見たぞ!」

「またかよ」周元が面倒くさそうに言う。

「見たぞ!」

「本当に見たぞ!」

「何を見たのか?」

皆が大叔を見る。

大叔は冷静になり、少し考えた後言った:

「小柄で四肢細長、毛深い——」

「それと……それと——笑いながらこちらを見てきたんだ」

「えっ?」

それを聞いた途端、皆また身震いする。

「おいおーい、臭い大叔、間違いじゃないのか?」

阿梓が信じられない様に尋ねる。

「絶対に間違いない!」

大叔は断言した。

「まさか本当に山霊だったんじゃないのか?」

小洛が聞く。

「そんなわけないよ——たぶんサルだろ」周元が彼らの混乱を防ぐために定義付けた。

「ちげー!サルじゃない!」

大叔は不服そうに否定する。

周元は大叔を見詰めながら、きつく言った:

「何であれ関係ない。

目標へ直行だ!

ベリスの秘宝を開けたら帰るぞ」

「わかったよ、小坊主——」

「やっぱりサルだろ」大叔は言い訳するように言う。

……

周元一行が進む——

前方も緑影が途切れない無限に続くようだった。

道はあるものの山道は険しい。

幸い朝食をしっかり食べたおかげで、皆エネルギーに満ちていた。

「大哥哥、あの——」

小洛が突然周元の手を引くと、恥ずかしそうに言葉を続けられなかった。

「何だよ?」

周元は不思議そうに聞く。

「あの——」小洛も言いづらそうに続ける。

阿梓同様——

いや、同じ女の子だからこそ早く悟ったのか、彼女は上品に言った:

「小洛が水やりに行きたいの」

「あー!」

周元はようやく気付いた。

「えと……大哥哥と一緒に——」小洛が付け足す。

「??山の中での水やり?」

大叔が不思議そうに聞く。

「こうして別れるのは良くないんじゃないのか?」

大叔はまだ意味を理解できずに心配する。

小洛の頭は恥ずかしさで胸元に埋まるほどだった。

しかし阿梓はすぐにりつける:

「うるさい!死ぬほど煩い!お前のくそ大叔!」



「誰がお前をかばうんだよ!」

「えー……」大叔は呆然と。

「大丈夫だ、俺と一緒に行こうぜ」周元は優しく言った。

「ニャーニャ!」

黒猫も参加したいと主張した。

すると周元は小洛と小黒を連れて森の奥深くへと向かった。

背中合わせにさせた途端、小黒も振り返った。

両手で腰を支えながら周元を見つめる様子が、何かを隠すように見えた。

「そんなに緊張するのか?俺はそういうヤツじゃないぜ」

「ははっ、お前はオス猫だったんだね!」

「ニャーニャ!!」

黒猫は爪を上げて怒りを表現した。

その時、

「アッ!!!」

小洛が悲鳴を上げた!

周元「?!」

黒猫「?!」

急に、人間と猫の区別も忘れて――

振り返った瞬間に小洛は影にさらわれていた!

「助けてぇー!」

「くそっ!」

何も言わず追いかけることに。

しかし――

その影の動きは異常に速かった!

周元が数歩進んだだけで、影と小洛は消えていた。

一方で黒猫だけが追いついていくようだ。

すると大叔と阿梓も駆け寄ってきた。

「どうしたんだ?」

「小洛が攫われた!」

大叔「?!」

阿梓「?!」

「速さにやられちまった……」

「黒猫だけが追っかけてるみたい」

彼女は純粋で無垢だったのに――

約束して守り切れなかった。

大叔は影の特徴を確認できたが、周元はその姿さえも見逃していた。

結局、全ては自分の弱さに起因したのだ。

「くそっ!」

周元は近くの木に拳を叩きつけた。

「何も残ってない……」阿梓が現場を調べて首を横に振った。

「兄貴、黙って待機するだけか?」

「あいつには勝手にやるさ」

しばらくすると周元は冷静になり、

「30分後に連絡がないなら――」

「俺にはある計画がある」

30分が経過しても黒猫の帰還はない。

周元は自分の計画を実行した。

「これがお前の策か!?バカなことしやがって!」

大叔が怒鳴った。

「仕方ないさ」

「相手は小洛を攫んだ。

俺たちには手掛かりがない――」

「そして小洛は女の子だ――」

「だからこそ、もう一人の女の子を攫われるようにする」

「その影を追跡する――」

「変態みたいに聞こえるぜ」大叔が首を横に振りながら続けた。

「リスクも大きいよ。

犠牲が出たら……」

すると誰かが反発した:

「うるさい!この老人めっ!」

「俺は小洛みたいな無力な子じゃないぜ」

「お前みたいな年老いたバカとは違うんだからな」

「年老いた?」

周元が繰り返し、空を見上げた。

「毒舌のロリポップ――」

「無能な老人めっ!」

「黙ってろよ、小洛はまだ救出されてないんだぜ」周元が仲裁に入った。

「フン!」

阿梓は鼻を鳴らして顔を背けた。

「フン!」

大叔も負けじと反対側に頭を向けた。

そして三人は周元の計画通り――

阿梓は木陰で一人で仮眠を装い、周元と大叔がそれぞれ隣接する場所に潜伏した。

彼らの『釣り』作戦は成功するのか?

影は山霊だったのか?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました

黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」 ブラック企業で過労死した俺、相川大地。 女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!? 右も左もわからない荒野でのサバイバル。 だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに! 美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。 これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。 農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...