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蛍サイド
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「あれ? 俺灯り消し忘れてた?」
車をマンションの駐車場に停め、階段三階分を上って部屋の鍵を開け中に入ると、玄関を入って真正面にあるガラスのドアの向こうが明るくて驚いた。
俺と拓が暮らしているマンションは、玄関入ってすぐ右手に風呂トイレ等があり、左手に拓が使っている部屋、玄関から続く廊下の真正面のドアからリビングダイニングとカウンター付キッチンと俺の部屋がある。
この部屋の構造は、カウンターありのキッチンとリビングダイニングで、引き戸を閉めればリビングとダイニングは仕切ることも可能だけど、俺達は引き戸は使わずに広々と使っている。
カウンター側に丸いテーブルと二脚の椅子を置いて、ダイニングエリアには大きな三人掛けのソファーとローテーブルとでっかいテレビが置いてある。
少し築年数が経っているのと、駅から歩いて十五分程度離れているからなのか、この広さでもそんなに家賃は高くない。
「あれ、拓帰ってる?」
家を出る時消した記憶があるんだけどと考えながら、靴を脱ごうと視線を下に向けて見慣れた革靴に気が付いた。
綺麗に磨かれてる焦げ茶色の革靴、これ拓のだ。
「拓ーーっいるのか? 飲み会どうしたんだぁ?」
部屋の奥に声を掛けながらスマホを取り出して時間を見ると、まだ八時過ぎたばかりだ。
週末だからか道が混んでいて渋滞にはまってたから、結構時間が過ぎていた。でも、飲み会終わって帰って来る時間じゃない。
靴を脱いで拓の靴の隣に並べ、パソコンが入った重い鞄とエコバックを両手にそれぞれ持って廊下を進む。
「拓? ……なにやってんの? 腹空いてるのか? 飲み会は?」
部屋に入ると拓は冷蔵庫を覗いていた。
スーツから部屋着に着替えてるし、髪が濡れているところを見ると風呂も入ったんだろう。
「おかえり蛍。パソコン大丈夫だったのか?」
「あ、うん。すぐに新しいの設定して貰えた。車使えて助かった」
拓は俺の質問には答えずに、パソコンの心配をしている。
朝家を出る前に、パソコンが壊れたから会社に行くから車借りると拓に連絡入れていたから、気にしてくれてたのかもしれない。
「そうか、それなら良かった」
「うん。帰り渋滞にはまったけど」
テーブルの足元にパソコンが入った重い鞄を置き、エコバックだけ持ってキッチンに入りながら渋滞を思い出してげんなりする。
渋滞がなければ、一時間は早く家に帰れたはずだ。
コンビニの駐車場でのんびりしていたのが悪かったんだろう、高速道路も混んでたしそれを降りてから環八も混んでいた。
「そうか大変だったな」
「まあ、電車乗り継ぐより楽だけどさ。ごめんこれ冷蔵庫に入れてくれる?」
言いながらエコバックから買ってきたものを出して、冷蔵庫の前にいる拓に卵とハムを手渡す。
「卵買って来てくれたのか、良かった」
「良かった?」
「いや、炒飯でも作ろかなって思ったんだけど、何も具が無くてさ」
ぽりぽりと鼻の頭を掻きながら、拓が言うのを俺は首を傾げて聞く。
「拓、飲み会無くなったのか?」
「開始が早かったんだ。六時スタートで九十分飲み放題コース。俺は二次会パスした」
飲み放題コースと言うわりに、拓の顔は素面に見える。
その時間設定なら今家にいてもおかしくないけれど、飲み会後に炒飯作ろうってくらいに腹が空いてるのが何だか気の毒で、ハムだけ冷蔵庫に仕舞って卵のパックを開けようとしている拓の行動を止めた。
「ちょっと待ってられるなら、何か作るよ。それとも炒飯の気分なのか?」
「いや、今ある材料で俺がまともに作れそうなのが炒飯だっただけ。がっつり食えるならその方がありがたい」
飲み会の後でがっつり食いたいって、拓何食べて来たんだよ。
俺のその考えは顔に出ていたんだろう、「出て来る料理がしょぼくてさ、皆飲むのに集中してた」と拓が苦笑いしながら教えてくれた。
「それ酷いな。拓は飲んで無かったのか?」
冷凍庫に保存している作り置きを頭に浮かべながら拓に聞くと、眉間に皺を寄せて拓が頷く。
「腹空いてるのに飲んでたら悪酔いするだろ」
「拓のところの上司、追加で何か頼むとか許してくれ無さそうだもんなあ。ご愁傷様」
お金に細かい上司なんだと、以前拓が愚痴を言っていた記憶があるから、飲み放題コースも一番安い奴だったんだろう。
俺の上司は良い人だから、それを考えると余計に拓が気の毒になる。
「そうなんだよ。あの人が選んだ居酒屋だったんだけど、あの店は無い」
げっそりとしている拓に、ご愁傷様と拓の顔の前で両手を合わせる。
「拝むなっ。ん?」
拓が笑って俺の手を掴んで、急に顔を近づけて来た。
「な、なに?」
「甘い匂いがする」
くんっと俺の手の匂いを嗅ぐ拓に、ドキンとしながら思い出す。
そう言えば、まだ家に帰ってから手を洗っていなかったって。
車をマンションの駐車場に停め、階段三階分を上って部屋の鍵を開け中に入ると、玄関を入って真正面にあるガラスのドアの向こうが明るくて驚いた。
俺と拓が暮らしているマンションは、玄関入ってすぐ右手に風呂トイレ等があり、左手に拓が使っている部屋、玄関から続く廊下の真正面のドアからリビングダイニングとカウンター付キッチンと俺の部屋がある。
この部屋の構造は、カウンターありのキッチンとリビングダイニングで、引き戸を閉めればリビングとダイニングは仕切ることも可能だけど、俺達は引き戸は使わずに広々と使っている。
カウンター側に丸いテーブルと二脚の椅子を置いて、ダイニングエリアには大きな三人掛けのソファーとローテーブルとでっかいテレビが置いてある。
少し築年数が経っているのと、駅から歩いて十五分程度離れているからなのか、この広さでもそんなに家賃は高くない。
「あれ、拓帰ってる?」
家を出る時消した記憶があるんだけどと考えながら、靴を脱ごうと視線を下に向けて見慣れた革靴に気が付いた。
綺麗に磨かれてる焦げ茶色の革靴、これ拓のだ。
「拓ーーっいるのか? 飲み会どうしたんだぁ?」
部屋の奥に声を掛けながらスマホを取り出して時間を見ると、まだ八時過ぎたばかりだ。
週末だからか道が混んでいて渋滞にはまってたから、結構時間が過ぎていた。でも、飲み会終わって帰って来る時間じゃない。
靴を脱いで拓の靴の隣に並べ、パソコンが入った重い鞄とエコバックを両手にそれぞれ持って廊下を進む。
「拓? ……なにやってんの? 腹空いてるのか? 飲み会は?」
部屋に入ると拓は冷蔵庫を覗いていた。
スーツから部屋着に着替えてるし、髪が濡れているところを見ると風呂も入ったんだろう。
「おかえり蛍。パソコン大丈夫だったのか?」
「あ、うん。すぐに新しいの設定して貰えた。車使えて助かった」
拓は俺の質問には答えずに、パソコンの心配をしている。
朝家を出る前に、パソコンが壊れたから会社に行くから車借りると拓に連絡入れていたから、気にしてくれてたのかもしれない。
「そうか、それなら良かった」
「うん。帰り渋滞にはまったけど」
テーブルの足元にパソコンが入った重い鞄を置き、エコバックだけ持ってキッチンに入りながら渋滞を思い出してげんなりする。
渋滞がなければ、一時間は早く家に帰れたはずだ。
コンビニの駐車場でのんびりしていたのが悪かったんだろう、高速道路も混んでたしそれを降りてから環八も混んでいた。
「そうか大変だったな」
「まあ、電車乗り継ぐより楽だけどさ。ごめんこれ冷蔵庫に入れてくれる?」
言いながらエコバックから買ってきたものを出して、冷蔵庫の前にいる拓に卵とハムを手渡す。
「卵買って来てくれたのか、良かった」
「良かった?」
「いや、炒飯でも作ろかなって思ったんだけど、何も具が無くてさ」
ぽりぽりと鼻の頭を掻きながら、拓が言うのを俺は首を傾げて聞く。
「拓、飲み会無くなったのか?」
「開始が早かったんだ。六時スタートで九十分飲み放題コース。俺は二次会パスした」
飲み放題コースと言うわりに、拓の顔は素面に見える。
その時間設定なら今家にいてもおかしくないけれど、飲み会後に炒飯作ろうってくらいに腹が空いてるのが何だか気の毒で、ハムだけ冷蔵庫に仕舞って卵のパックを開けようとしている拓の行動を止めた。
「ちょっと待ってられるなら、何か作るよ。それとも炒飯の気分なのか?」
「いや、今ある材料で俺がまともに作れそうなのが炒飯だっただけ。がっつり食えるならその方がありがたい」
飲み会の後でがっつり食いたいって、拓何食べて来たんだよ。
俺のその考えは顔に出ていたんだろう、「出て来る料理がしょぼくてさ、皆飲むのに集中してた」と拓が苦笑いしながら教えてくれた。
「それ酷いな。拓は飲んで無かったのか?」
冷凍庫に保存している作り置きを頭に浮かべながら拓に聞くと、眉間に皺を寄せて拓が頷く。
「腹空いてるのに飲んでたら悪酔いするだろ」
「拓のところの上司、追加で何か頼むとか許してくれ無さそうだもんなあ。ご愁傷様」
お金に細かい上司なんだと、以前拓が愚痴を言っていた記憶があるから、飲み放題コースも一番安い奴だったんだろう。
俺の上司は良い人だから、それを考えると余計に拓が気の毒になる。
「そうなんだよ。あの人が選んだ居酒屋だったんだけど、あの店は無い」
げっそりとしている拓に、ご愁傷様と拓の顔の前で両手を合わせる。
「拝むなっ。ん?」
拓が笑って俺の手を掴んで、急に顔を近づけて来た。
「な、なに?」
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くんっと俺の手の匂いを嗅ぐ拓に、ドキンとしながら思い出す。
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