悪役令嬢(仮)に断罪された偽王太子は本物王太子に影武者としてこき使われる

雪野 みゆ

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第2章 学園編

第4話

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 オーグランド王国の王宮内にある王太子執務室で素っ頓狂な声が響く。

「はいぃぃぃぃぃ!? 今なんておっしゃりやがりましたか? 殿下」

 素っ頓狂な声の主はこの国の王太子エドワルドの侍従であるトームスだった。彼は王太子と瓜二つなので、エドワルドが時々お忍びで城下に行く時に影武者としてこき使われている。

 1ヶ月前の王宮舞踏会で「王太子に影武者がいました事件」で子爵位を継承し、今は王太子付き侍従として王宮で働いている。真相は庶民として育った元マルク子爵家子息のトームスが、王太子に瓜二つなのを良いことに王城で盗みを働こうとして捕まったのだが。ちょうどマルク子爵家の後継者を探していた王太子と宰相によって、罪がもみ消されたのはトームスにとって幸だったのか。不幸だったのか。

「来月からウィンド・ウォール学園に入学することにしたと言ったのだ。私と其方、そしてフィルミナとエレナ嬢の入学手続きを頼む」

 その耳は飾りものかとでも言いたげなエドワルドである。

 ウィンド・ウォール学園とはオーグランド王国の貴族や富裕層の子息、令嬢が通う学校のことだ。王都の南部に位置する。15歳から18歳の間の1年~4年の間に決められた単位を取れば、めでたく卒業である。1年だけで卒業する優秀な者もいれば、のんびり4年在籍して卒業する者もいる。

「本当にうるさい男ですわね。姿は殿下に瓜二つでも品位が違いますわね(あとつむじが決定的に違います)」

 ソファでゆっくりくつろいで読書をしているエドワルドの婚約者フィルミナがトームスを蔑むような目で見つめる。

「相変わらず本音がだだ漏れ女だな。それとつむじで人を見分けるのはやめろ」

 最近は食生活がしっかりとしているので、気にしていた頭頂部の薄さがなくなってきたトームスである。

「フィルミナ様は本音が漏れるところが可愛いのです。貴方は見る目がありませんね」

 フィルミナの隣でお茶を飲んでいるエレナがフィルミナと同じ蔑みの目でトームスを見る。

「最初は大人しいご令嬢だと思ってたけど、お前、実は腹黒令嬢だろう」

 エレナにジト目を向けるトームスにフィルミナが反論する。

「エレナは見た目も性格も可愛いですわ(本当に見る目がありませんね)」

「フィルミナ様こそ麗しいお姿ですわ。フィルミナ様に並ぶご令嬢はこの国にはおりませんわ」

 フィルミナとエレナは手を握りあってお互いを褒めたたえる。傍目から見れば、可憐な令嬢2人が友情を温めていると微笑ましく思うことだろう。そうではないことを知っているのはエドワルドと自分くらいではないだろうか。

「私はフィルミナが一番可愛いが、エレナ嬢もフィルミナとはまた違う可愛らしさだと思うぞ」

 トームスの心を読んだかのようにエドワルドが2人に視線を向ける。

「殿下はまだ学園を卒業していなかったのか? 意外だな」

 引きこもりのフィルミナとフィルミナの唯一の友人であるエレナが学園に行っていなかったというのは意外と思わなかった。しかし、女2人を敵に回す気はないので、悪態は飲み込む。

「これでも王太子なのでな。いろいろと勉強することが多かったのだ。視察に行ったり、フィルミナに会いに行ったり、フィルミナに会いに行ったりしていたからな」

 大事なことだから2回言ったのはわざとだろうか。あえて突っ込むのはやめておく。

「父上はまだお若いので、私が即位するまでには時間があるだろう。学園に行ってみるのも社会勉強になると思ってな」

 それにと、フィルミナを愛し気に見つめる。

「フィルミナには一生引きこもりでもいいと言ったが、将来王妃になるのだ。人脈を作るのも妃教育の1つだ」

 フィルミナはぷうと頬を膨らませる。

「わたくしの友人は本とエレナだけで良いと申し上げておりますのに」

 エドワルドはフィルミナの向かい側のソファに座り、彼女の手をとると包み込むようにふわりと握る。

「学園にいる間は私がずっとそばにいる。フィルミナを守るために」

「殿下(それなら構いません)」

 しばし2人の世界に浸るエドワルドとフィルミナ。この2人がいちゃつき出すときりがないとトームスはゴホンと咳払いをする。

「それでは殿下。入学の手続きに行ってまいります」

 一礼して執務室を出ようとするトームスをエドワルドが呼び止める。

「4人が一緒のクラスになれるように手配しておけよ」

「承知いたしました」

 やれやれと肩をすくめると執務室を出ていくと、なぜかエレナもついてきた。

「お二人の邪魔をしてはいけませんものね。馬車までエスコートしてくださる?」

 可愛らしいが、どこか妖艶さもある笑みを浮かべてエレナが手を差し出す。

「気が利くな。そういう女は好きだぜ」

「貴方に好かれてもうれしくありませんけどね」

 トームスはにやりと笑うとエレナの手をとり自らの腕に絡めて歩き出した。
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