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第2章 学園編
第14話
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馬車の前に突然何人かの人間が飛び出してきたのだ。馬は驚き嘶いた。御者は慌てて手綱をひく。人間……男たちは馬車が止まると、両脇の扉に手をかけようとする。あきらかにこの馬車を襲撃しようとしていた。黒装束で覆面をしているので顔は分からない。
フィルミナとエレナを席に落ち着かせると、エドワルドとトームスは顔を見合わせ頷き合う。
「フィー。エレナ嬢。絶対に馬車の外に出ないように」
「俺たちが飛び出したら鍵をかけるんだ」
フィルミナとエレナは両扉の鍵を確認すると、こくんと頷く。
「トームス。右を頼む。私は左を片付ける」
「殺すなよ。殿下。生き証人だからな」
「それは……難しいな」
エドワルドとトームスは同時に扉を開けると、襲撃者たちと相対し、剣を抜刀した。
「帯剣しておいて正解だったな」
「お、王太子が一緒に乗っているなんて聞いていないぞ」
襲撃者たちはエドワルドがいたことに動揺しているようだ。
「ほお。私が王太子と知っているのか? それでも剣を向けるか?」
「怯むな! お前たちは馬車の中の女を捕まえてこい!」
襲撃者のリーダー格と思われる男が部下たちに命令すると、エドワルドに対峙し剣を構える。
「やはりフィーが狙いか? 許せないな。お前たちは全員殺す」
リーダー格の男に打ちかかる。
反対側にいても、エドワルドの殺気が感じられる。
「あ~あ。殺る気満々だよ、殿下は。早く止めないとやばいな」
トームスは飛び出すと同時に2人の男の背後に素早く回り込み、剣の柄で相手の急所を打ち、昏倒させる。電光石火の技だ。残る1人の男が後ろからトームスに剣を薙ぐ。すんでのところで躱すが、勢いでビン底眼鏡が吹っ飛び、トームスの顔が露わになる。
「な! 王太子殿下がなぜここに!!」
男は驚愕の声をあげる。目の前にいるのは王太子エドワルドその人だ。実際にはそっくりさんなのだが、気付く由もない。
「あれ? 殿下の顔を知っているってことは、おまえら貴族に仕える護衛とか?」
びくりと男は肩を震わせる。そのすきをトームスは見逃さない。懐に飛び込み、剣の柄を男のみぞおちに叩き込む。
「ぐっ……」
男はみぞおちを押さえると地面に倒れた。
「こちらはこれでおしまいか。殿下の助太刀にいくか。てか。相手まだ生きてるかな?」
エドワルドはリーダー格の男を確実に追い詰めていった。
「その程度か? もう終わらせていいか?」
部下たちは馬車の扉を開けようとするが、フィルミナとエレナがしっかり施錠しているため、なかなか開かない。ヴィルシュタイン公爵家の馬車は頑丈に造られているので、扉を破壊することもできない。
「お~い。殿下。殺してないか?」
トームスがエドワルドに加勢……というよりは襲撃者を殺してないか確認をしにやってきた。トームスを見た瞬間、襲撃者たちは覆面から唯一見える目を思いきり見開く。
「王太子殿下がもう1人いる!?」
エドワルドはちっと舌打ちする。
「これからじっくりいたぶってやろうと思ってたのに。早かったな」
「殿下が殺る気満々だったから、早く片付けたんだ。全員死んでなくてよかったよ」
エドワルドが人殺しをする心配より、死体が出た場合、片付けるのは自分の役目だ。面倒だから正直やりたくないトームスは実はそんな心配をしていた。
襲撃者の男3人がトームスに斬りかかってきたので、鞘を剣ごと素早く抜き、的確に相手の急所目がけ、鞘の先端を打ち付ける。死なない程度にだ。
「相変わらず、見事な腕前だ。剣士に転向するか?」
リーダー格の男を死なない程度に痛めつけて、昏倒させたエドワルドがにっと笑う。
「それでもいいな。誰かさんにこき使われなくてすむ。殿下も王子にしてはいい腕してるな」
ふんと鼻を鳴らすとエドワルドは剣を鞘に収める。
「王太子たるもの、文武に秀でていなくてはならないと父に鍛えられたからな」
そういえばと、エドワルドの父であるオーグランド王国の国王を思い浮かべる。いかにも武闘派ですという風貌だった。
(殿下は顔だけ王妃様に似たんだな)
エドワルドの母である王妃は絶世の美女と謡われている。トームスはまだお目にかかったことがない。王妃は自由人でほとんど城にいないからだ。
しばらくすると、ヴィルシュタイン公爵家の護衛騎士たちが駆けつけてきた。少し離れてついてくるようにとエドワルドに命令されていたからだ。
「王太子殿下。これはいったい……」
「あれ? 王太子殿下が2人います」
「バカ。1人は影武者の侍従殿だ」
護衛騎士たちにエドワルドは命令する。
「黒装束の男たちを捕縛せよ。ヴィルシュタイン公爵領まで連行する」
「承知いたしました」
昏倒している黒装束の男たちは護衛騎士たちに任せ、エドワルドとトームスは馬車に戻って行く。馬車の扉が勢いよく開くとフィルミナはエドワルドに飛びついた。
「エド! よくご無事で」
「フィー。怖かったか? もう大丈夫だ」
飛びついてきたフィルミナを抱きしめると、よしよしと背中を撫でる。
トームスが馬車の中を覗きこむとエレナが強張った顔をしていた。ピンと背筋を伸ばしているが、手が震えている。
「エレナ。大丈夫か?」
エレナの隣に座ると顔を覗きこむ。エレナはトームスの姿をみとめると、紫の瞳が潤み、ほろりと雫がこぼれ落ちた。トームスはエレナを自分の胸に寄せる。
「もう怖くないから……泣くな」
トームスの背中にエレナの腕が回される。少し驚いたが、そのまま抱きしめる。
「頑張ったな」
「トームスがエレナを泣かせてますわ(おしおき。おしおき)」
弾んでいるフィルミナの声に驚いたトームスは馬車の外を見る。エドワルドとフィルミナがにやにや笑っている。
(あいつら!?)
「エレナ嬢が落ち着くまでそうしているといい。フィー少し散歩をしようか」
「ええ。あちらに綺麗な花が咲いていますわ(二人の邪魔になってはいけませんわね)」
フィルミナをエスコートしてエドワルドは振り向き、ぐっと親指を立てた。
(上手くエレナ嬢の心を射止めろよ)
そう語っていた。
フィルミナとエレナを席に落ち着かせると、エドワルドとトームスは顔を見合わせ頷き合う。
「フィー。エレナ嬢。絶対に馬車の外に出ないように」
「俺たちが飛び出したら鍵をかけるんだ」
フィルミナとエレナは両扉の鍵を確認すると、こくんと頷く。
「トームス。右を頼む。私は左を片付ける」
「殺すなよ。殿下。生き証人だからな」
「それは……難しいな」
エドワルドとトームスは同時に扉を開けると、襲撃者たちと相対し、剣を抜刀した。
「帯剣しておいて正解だったな」
「お、王太子が一緒に乗っているなんて聞いていないぞ」
襲撃者たちはエドワルドがいたことに動揺しているようだ。
「ほお。私が王太子と知っているのか? それでも剣を向けるか?」
「怯むな! お前たちは馬車の中の女を捕まえてこい!」
襲撃者のリーダー格と思われる男が部下たちに命令すると、エドワルドに対峙し剣を構える。
「やはりフィーが狙いか? 許せないな。お前たちは全員殺す」
リーダー格の男に打ちかかる。
反対側にいても、エドワルドの殺気が感じられる。
「あ~あ。殺る気満々だよ、殿下は。早く止めないとやばいな」
トームスは飛び出すと同時に2人の男の背後に素早く回り込み、剣の柄で相手の急所を打ち、昏倒させる。電光石火の技だ。残る1人の男が後ろからトームスに剣を薙ぐ。すんでのところで躱すが、勢いでビン底眼鏡が吹っ飛び、トームスの顔が露わになる。
「な! 王太子殿下がなぜここに!!」
男は驚愕の声をあげる。目の前にいるのは王太子エドワルドその人だ。実際にはそっくりさんなのだが、気付く由もない。
「あれ? 殿下の顔を知っているってことは、おまえら貴族に仕える護衛とか?」
びくりと男は肩を震わせる。そのすきをトームスは見逃さない。懐に飛び込み、剣の柄を男のみぞおちに叩き込む。
「ぐっ……」
男はみぞおちを押さえると地面に倒れた。
「こちらはこれでおしまいか。殿下の助太刀にいくか。てか。相手まだ生きてるかな?」
エドワルドはリーダー格の男を確実に追い詰めていった。
「その程度か? もう終わらせていいか?」
部下たちは馬車の扉を開けようとするが、フィルミナとエレナがしっかり施錠しているため、なかなか開かない。ヴィルシュタイン公爵家の馬車は頑丈に造られているので、扉を破壊することもできない。
「お~い。殿下。殺してないか?」
トームスがエドワルドに加勢……というよりは襲撃者を殺してないか確認をしにやってきた。トームスを見た瞬間、襲撃者たちは覆面から唯一見える目を思いきり見開く。
「王太子殿下がもう1人いる!?」
エドワルドはちっと舌打ちする。
「これからじっくりいたぶってやろうと思ってたのに。早かったな」
「殿下が殺る気満々だったから、早く片付けたんだ。全員死んでなくてよかったよ」
エドワルドが人殺しをする心配より、死体が出た場合、片付けるのは自分の役目だ。面倒だから正直やりたくないトームスは実はそんな心配をしていた。
襲撃者の男3人がトームスに斬りかかってきたので、鞘を剣ごと素早く抜き、的確に相手の急所目がけ、鞘の先端を打ち付ける。死なない程度にだ。
「相変わらず、見事な腕前だ。剣士に転向するか?」
リーダー格の男を死なない程度に痛めつけて、昏倒させたエドワルドがにっと笑う。
「それでもいいな。誰かさんにこき使われなくてすむ。殿下も王子にしてはいい腕してるな」
ふんと鼻を鳴らすとエドワルドは剣を鞘に収める。
「王太子たるもの、文武に秀でていなくてはならないと父に鍛えられたからな」
そういえばと、エドワルドの父であるオーグランド王国の国王を思い浮かべる。いかにも武闘派ですという風貌だった。
(殿下は顔だけ王妃様に似たんだな)
エドワルドの母である王妃は絶世の美女と謡われている。トームスはまだお目にかかったことがない。王妃は自由人でほとんど城にいないからだ。
しばらくすると、ヴィルシュタイン公爵家の護衛騎士たちが駆けつけてきた。少し離れてついてくるようにとエドワルドに命令されていたからだ。
「王太子殿下。これはいったい……」
「あれ? 王太子殿下が2人います」
「バカ。1人は影武者の侍従殿だ」
護衛騎士たちにエドワルドは命令する。
「黒装束の男たちを捕縛せよ。ヴィルシュタイン公爵領まで連行する」
「承知いたしました」
昏倒している黒装束の男たちは護衛騎士たちに任せ、エドワルドとトームスは馬車に戻って行く。馬車の扉が勢いよく開くとフィルミナはエドワルドに飛びついた。
「エド! よくご無事で」
「フィー。怖かったか? もう大丈夫だ」
飛びついてきたフィルミナを抱きしめると、よしよしと背中を撫でる。
トームスが馬車の中を覗きこむとエレナが強張った顔をしていた。ピンと背筋を伸ばしているが、手が震えている。
「エレナ。大丈夫か?」
エレナの隣に座ると顔を覗きこむ。エレナはトームスの姿をみとめると、紫の瞳が潤み、ほろりと雫がこぼれ落ちた。トームスはエレナを自分の胸に寄せる。
「もう怖くないから……泣くな」
トームスの背中にエレナの腕が回される。少し驚いたが、そのまま抱きしめる。
「頑張ったな」
「トームスがエレナを泣かせてますわ(おしおき。おしおき)」
弾んでいるフィルミナの声に驚いたトームスは馬車の外を見る。エドワルドとフィルミナがにやにや笑っている。
(あいつら!?)
「エレナ嬢が落ち着くまでそうしているといい。フィー少し散歩をしようか」
「ええ。あちらに綺麗な花が咲いていますわ(二人の邪魔になってはいけませんわね)」
フィルミナをエスコートしてエドワルドは振り向き、ぐっと親指を立てた。
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