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父様が激怒しちゃってます
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目を覚ました私は、見知らぬ部屋のベッドに寝かせられていた。
目覚めた私に気付いて、父様が私の顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
心配そうな父様に、私は頷いてみせた。
「ここは?」
「まだお城だよ。来賓用の部屋を借りた。城の者達がエリーヌを心配して皆で世話をしたがるからな。目が覚めるまでは私と2人にしてくれるように頼んだのだ。動けるか?」
父様に言われて体を起こそうとしてみるけど……全然力が入らない。
「父様……体に力が入らない。」
「やはりな。魔力が暴走していたから魔力不足だろう。なに、私が抱えて帰れば問題無い。エリーヌが大丈夫ならば屋敷に戻ろう。城の者達には悪いが、皆に世話をされてしまうと、いつ屋敷に帰れるか分からないからな。」
「うん。帰りたい。」
頷く私の頭を撫でて、父様が私をベッドから抱き上げる。
扉を開けると、部屋の外にはずっといたのか、アシュと喧嘩した時の侍女のソフィーが立っていた。
ちょこちょことお城に呼び出されているうちに、お城の使用人達とはすっかり仲良くなり、中でもこのソフィーは私をとっても慕ってくれている。
「エリーヌ様!大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ。ちょっと力が入らないだけ。」
オロオロとするソフィーに、私は笑って見せた。
父様がソフィーを見て、申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「すまないが、エリーヌを連れて帰るよ。城の者達に謝っておいてくれないか。城の者達には、いつもエリーヌが良くしてもらって感謝している。」
父様が言うと、ソフィーは更にオロオロとしてしまった。
「そんな!いつもエリーヌ様に良くしていただいているのは私達の方です!エリーヌ様には、本当にいつもいつも優しくしていただいて……私達は、エリーヌ様が大好きなんです!!」
目に涙を溜めて、ソフィーが思いの丈を叫ぶ。
……おお、熱い。愛されてるな、私。
「ソフィー、ありがとう。」
「エリーヌ様……」
「エリーヌ!!」
ソフィーの声と重なるように、私の名を遠くから呼ぶ声がする。
視線を動かすと、お城の広い廊下を走って来るセディがいた。
「目が覚めてよかった!!」
息を切らしながら、セディが嬉しそうに微笑む。
「指先がかなり冷たいね。力が入らない?」
「うん。でも大丈夫だよ。」
私の手を取り心配してくれているセディに、私も微笑んだ。
私が笑うとセディは頬を赤くして、より一層笑顔になる。
「良かった!」
「王太子様。私達は屋敷に戻ります。屋敷の方が、エリーヌも安心して休めますので。……それから、私はこのまま暫く休みをいただこうと思っておりますので、よろしくお願い致します。」
「宰相!それは……」
「ここ最近ずっと休めていなかったので、休みが大量に残っている筈です。それをこの機会に全部消化しようと思いまして。既に休みを取る手続きをし、部下に仕事を振り分けてきました。今は国王の顔を見ると怒りが込み上げてくるので、暫く城に来る事は無いでしょう。」
「……先程は、父上が本当にすみませんでした。」
冷ややかにセディを見下ろす父様は凄く怖い。
けれど、セディは父様から目を逸らす事なく、真っ直ぐに見返して謝罪する。
「王太子が謝る事はありません。アイツの馬鹿さ加減には幼い頃より付き合ってきて、今まで私なりに全力で手助けしてきたつもりでしたが、少し疲れました。……私の家族に対して、あのように馬鹿な事を言うとは……。」
父様の冷ややかな表情が、哀愁を帯びたものに変わる。
「……すみません。」
セディも辛そうな顔をしていて、再度謝罪の言葉を口にした。
「セディ。さっきは私を庇ってくれてありがとう。それから……私の魔力のせいで、こんな事になっちゃってごめんなさい。」
「っ!!謝らないで!!エリーヌは何も悪く無いんだから!」
なんだかセディに申し訳なくて謝ると、セディは私の手を握っていた両手に力を込めた。
「そうだぞ。エリーヌは何も悪くない。さあ、早く屋敷に帰ろうか。ゆっくり休んで、暫くは一家団欒を家族皆で楽しもう。それでは王太子様、私達はこれで失礼致します。」
「あっ……。」
父様はセディに頭を下げると、まだ何か言いたそうだったセディにくるりと背を向け、私を抱えたままスタスタとその場を後にしたのだった。
目覚めた私に気付いて、父様が私の顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
心配そうな父様に、私は頷いてみせた。
「ここは?」
「まだお城だよ。来賓用の部屋を借りた。城の者達がエリーヌを心配して皆で世話をしたがるからな。目が覚めるまでは私と2人にしてくれるように頼んだのだ。動けるか?」
父様に言われて体を起こそうとしてみるけど……全然力が入らない。
「父様……体に力が入らない。」
「やはりな。魔力が暴走していたから魔力不足だろう。なに、私が抱えて帰れば問題無い。エリーヌが大丈夫ならば屋敷に戻ろう。城の者達には悪いが、皆に世話をされてしまうと、いつ屋敷に帰れるか分からないからな。」
「うん。帰りたい。」
頷く私の頭を撫でて、父様が私をベッドから抱き上げる。
扉を開けると、部屋の外にはずっといたのか、アシュと喧嘩した時の侍女のソフィーが立っていた。
ちょこちょことお城に呼び出されているうちに、お城の使用人達とはすっかり仲良くなり、中でもこのソフィーは私をとっても慕ってくれている。
「エリーヌ様!大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ。ちょっと力が入らないだけ。」
オロオロとするソフィーに、私は笑って見せた。
父様がソフィーを見て、申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「すまないが、エリーヌを連れて帰るよ。城の者達に謝っておいてくれないか。城の者達には、いつもエリーヌが良くしてもらって感謝している。」
父様が言うと、ソフィーは更にオロオロとしてしまった。
「そんな!いつもエリーヌ様に良くしていただいているのは私達の方です!エリーヌ様には、本当にいつもいつも優しくしていただいて……私達は、エリーヌ様が大好きなんです!!」
目に涙を溜めて、ソフィーが思いの丈を叫ぶ。
……おお、熱い。愛されてるな、私。
「ソフィー、ありがとう。」
「エリーヌ様……」
「エリーヌ!!」
ソフィーの声と重なるように、私の名を遠くから呼ぶ声がする。
視線を動かすと、お城の広い廊下を走って来るセディがいた。
「目が覚めてよかった!!」
息を切らしながら、セディが嬉しそうに微笑む。
「指先がかなり冷たいね。力が入らない?」
「うん。でも大丈夫だよ。」
私の手を取り心配してくれているセディに、私も微笑んだ。
私が笑うとセディは頬を赤くして、より一層笑顔になる。
「良かった!」
「王太子様。私達は屋敷に戻ります。屋敷の方が、エリーヌも安心して休めますので。……それから、私はこのまま暫く休みをいただこうと思っておりますので、よろしくお願い致します。」
「宰相!それは……」
「ここ最近ずっと休めていなかったので、休みが大量に残っている筈です。それをこの機会に全部消化しようと思いまして。既に休みを取る手続きをし、部下に仕事を振り分けてきました。今は国王の顔を見ると怒りが込み上げてくるので、暫く城に来る事は無いでしょう。」
「……先程は、父上が本当にすみませんでした。」
冷ややかにセディを見下ろす父様は凄く怖い。
けれど、セディは父様から目を逸らす事なく、真っ直ぐに見返して謝罪する。
「王太子が謝る事はありません。アイツの馬鹿さ加減には幼い頃より付き合ってきて、今まで私なりに全力で手助けしてきたつもりでしたが、少し疲れました。……私の家族に対して、あのように馬鹿な事を言うとは……。」
父様の冷ややかな表情が、哀愁を帯びたものに変わる。
「……すみません。」
セディも辛そうな顔をしていて、再度謝罪の言葉を口にした。
「セディ。さっきは私を庇ってくれてありがとう。それから……私の魔力のせいで、こんな事になっちゃってごめんなさい。」
「っ!!謝らないで!!エリーヌは何も悪く無いんだから!」
なんだかセディに申し訳なくて謝ると、セディは私の手を握っていた両手に力を込めた。
「そうだぞ。エリーヌは何も悪くない。さあ、早く屋敷に帰ろうか。ゆっくり休んで、暫くは一家団欒を家族皆で楽しもう。それでは王太子様、私達はこれで失礼致します。」
「あっ……。」
父様はセディに頭を下げると、まだ何か言いたそうだったセディにくるりと背を向け、私を抱えたままスタスタとその場を後にしたのだった。
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