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第35話 ジャンボカニ祭り①
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『ダイオウガニ』というのは、大きなカニの魔物だ。
大きな、といっても、ダイオウガニのそれは他の魔物の比ではない。
体積で言えば、竜種など一部の巨大種を除くと最大級の部類に入り、その大きさは行商人の馬車をも軽く上回る。
左右で大きさの違うハサミを持ち、特に大きな右側は、それこそ馬よりも大きい。
その一撃を食らえば、鋼鉄製でもない限り、家や船などひとたまりもないだろう。
また見た目にたがわず甲羅も堅牢であり、まともな刃物は通らず、例にもれず魔法にも強い。
大きさの割には動きも素早く、攻守兼ね備えた強力な魔物と言える。
このような魔物が人里近くに出れば、それはもう大騒ぎになることだろうが、このダイオウガニに限っては特殊な習性があり、危険性は低いとされているのだ。
「……つまり、あいつらは砂浜からは出てこない……ってこと?」
浅瀬にひしめく十数匹のダイオウガニを横目に見ながら、リーシャはやや引きつった顔でそう聞いた。
ロルフは、ああ、と頷いてそれに返す。
「ダイオウガニはもともと水生の魔物でな。成体になると定期的に浅瀬に上がってくるんだが、乾燥すると関節が脆くなる性質があって、水場を離れようとしないんだ。たとえ攻撃したとしても、こっちが陸地にいるかぎりは追ってこない。」
つまり、近づかなければ全く問題はないし、何かあったとしても、水場を離れるだけで逃げ切れるというわけである。
この特徴から、ギルド協会も『警戒不要』とみなしており、魔石の買い取りを行っていない。
そのため、ダイオウガニの存在を知らない冒険者も多いのだ。
「なるほどね……だからこんな大きな魔物がいても、みんな平然としてるのね。」
普通に生活している人々を見回して、リーシャは小さく息を吐いた。
近隣の住民にとっては、この時期には見慣れた光景だろう。
それを聞いていたエトが、おずおずと片手を挙げた。
「ええと……襲われる心配がないのは、分かりましたけど……。それじゃ、クエストの依頼も出されないんじゃないですか?」
うん、いい着眼点だ。
事実、ダイオウガニの討伐がクエストで発行されたという記録はないし、仮にされていたとしても、今からの受注は難しい。
当然冒険者としては、収益の望めない戦闘は避けるべきだ。
ただし、実はダイオウガニに限っては、特殊な収益方法があるのだ。
「そうだ。今回はクエストではないし、そもそも討伐もしない。あの大きなハサミを切り落とすのが、今回の目的になる。」
三人は一度顔を見合わせてから、ゆっくりと一斉にダイオウガニの方を見た。
「あのカニの、ハサミを……?」
「切り落とす……のだ?」
「すると……つまり……どうなるのよ?」
そうして再びロルフの方へ向き直る。
三人の動きが揃っているのがなんとなく面白く、笑いそうになるのを咳払いでこらえながら、続きを伝える。
「ダイオウガニはハサミを失うと、必ず海に逃げ戻る習性があるんだ。残ったハサミはこの港町で買い取ってもらえるから、そこそこいい資金稼ぎにもなる。ちなみに失ったハサミは、脱皮するとまた生えてくるらしいぞ。」
こういった雑学は、知り合いの生物学者が、隙あらば語っていた内容だ。
当時は半ば無視していたが、いやはや、何が役に立つかは分からないな。
その説明を聞いて、スゥは目を輝かせた。
「おおー! すごいのだ、無限にお金稼ぎできるのだー!!」
「え、うーん……そうなるのかな……?!」
「はは。もしうまく切り落とせるなら、夢じゃないな。」
あえて笑って返したが、当然、ことはそう簡単ではない。
エトとリーシャの連携は完璧に近いが、二人だけでは火力不足。スゥを迎えた三人パーティーとして、どれだけの連携ができるかが肝になってくる。
戦斧は大剣よりも刃渡りが短く、ピンポイントを狙う『刺す』動作もできない。予備動作の大きな振りかぶりの動きから、軌道修正の難しい振り下ろしの動きを経由して狙った位置に攻撃を当てるには、仲間との息の合った連携が必須だ。
その分、決まった際の破壊力は、他のあらゆる近接武器を凌駕する。
完璧にものにできれば、Aランクにも手がかかる『武器』になるだろう。
「大体分かったわ。慣れないパーティーでぶっつけ本番する前に、失敗しても問題なくて、逃げるのが簡単な相手で練習するぞ、ってことね。」
「うん、理解が早くて何よりだ。」
そう答えると、エトもスゥも納得したように頷いた。
三人を改めて見回し、軽く手を叩いて、集中を促す。
「いいか、今回重要なのは連携だ。さっきも言ったように、ダイオウガニは乾燥すると関節が脆くなる。まずエトが右手の攻撃を誘い、伸びきったところで関節にリーシャの炎魔法を当てて、そこをすかさずスゥが切り落とすんだ。」
エトとリーシャの表情に、僅かに動揺が見て取れる。
言う分には簡単だが、役割、順番、タイミング――どれを間違っても成功しない、かなり難易度の高い連携だ。
それをあの巨大な魔物に対して行おうというのだから、緊張するのも無理はない。
……だが、当の一番重要な役割を担うスゥは、様子が違うようだった。
「おおー! 面白そうなのだ! やってやるのだーっ!!」
そういって拳を突き上げるスゥは、見るからに楽しそうだ。
パーティーに加わる側であり、連携に一番不安を感じるはずの彼女がそう思えるのは、二人への十分な信頼が既にあるからだろう。
それはパーティーにおいて、もしかすると、最も重要なものかもしれない。
この三人は、それを既に持っているのだ。
「そうね、やってやろうじゃない!」
「うん、みんなで頑張ろっ!」
その様子をみて、二人もすぐに笑顔を取り戻したようだ。
三人はお互いに手を取り合って、強く頷き合った。
そしてスゥは、そのテンションのままに、空へと開戦を宣言した。
「よーし、ジャンボカニ祭りの開催なのだーっ!!」
ジャンボカニ祭りが、始まる。
大きな、といっても、ダイオウガニのそれは他の魔物の比ではない。
体積で言えば、竜種など一部の巨大種を除くと最大級の部類に入り、その大きさは行商人の馬車をも軽く上回る。
左右で大きさの違うハサミを持ち、特に大きな右側は、それこそ馬よりも大きい。
その一撃を食らえば、鋼鉄製でもない限り、家や船などひとたまりもないだろう。
また見た目にたがわず甲羅も堅牢であり、まともな刃物は通らず、例にもれず魔法にも強い。
大きさの割には動きも素早く、攻守兼ね備えた強力な魔物と言える。
このような魔物が人里近くに出れば、それはもう大騒ぎになることだろうが、このダイオウガニに限っては特殊な習性があり、危険性は低いとされているのだ。
「……つまり、あいつらは砂浜からは出てこない……ってこと?」
浅瀬にひしめく十数匹のダイオウガニを横目に見ながら、リーシャはやや引きつった顔でそう聞いた。
ロルフは、ああ、と頷いてそれに返す。
「ダイオウガニはもともと水生の魔物でな。成体になると定期的に浅瀬に上がってくるんだが、乾燥すると関節が脆くなる性質があって、水場を離れようとしないんだ。たとえ攻撃したとしても、こっちが陸地にいるかぎりは追ってこない。」
つまり、近づかなければ全く問題はないし、何かあったとしても、水場を離れるだけで逃げ切れるというわけである。
この特徴から、ギルド協会も『警戒不要』とみなしており、魔石の買い取りを行っていない。
そのため、ダイオウガニの存在を知らない冒険者も多いのだ。
「なるほどね……だからこんな大きな魔物がいても、みんな平然としてるのね。」
普通に生活している人々を見回して、リーシャは小さく息を吐いた。
近隣の住民にとっては、この時期には見慣れた光景だろう。
それを聞いていたエトが、おずおずと片手を挙げた。
「ええと……襲われる心配がないのは、分かりましたけど……。それじゃ、クエストの依頼も出されないんじゃないですか?」
うん、いい着眼点だ。
事実、ダイオウガニの討伐がクエストで発行されたという記録はないし、仮にされていたとしても、今からの受注は難しい。
当然冒険者としては、収益の望めない戦闘は避けるべきだ。
ただし、実はダイオウガニに限っては、特殊な収益方法があるのだ。
「そうだ。今回はクエストではないし、そもそも討伐もしない。あの大きなハサミを切り落とすのが、今回の目的になる。」
三人は一度顔を見合わせてから、ゆっくりと一斉にダイオウガニの方を見た。
「あのカニの、ハサミを……?」
「切り落とす……のだ?」
「すると……つまり……どうなるのよ?」
そうして再びロルフの方へ向き直る。
三人の動きが揃っているのがなんとなく面白く、笑いそうになるのを咳払いでこらえながら、続きを伝える。
「ダイオウガニはハサミを失うと、必ず海に逃げ戻る習性があるんだ。残ったハサミはこの港町で買い取ってもらえるから、そこそこいい資金稼ぎにもなる。ちなみに失ったハサミは、脱皮するとまた生えてくるらしいぞ。」
こういった雑学は、知り合いの生物学者が、隙あらば語っていた内容だ。
当時は半ば無視していたが、いやはや、何が役に立つかは分からないな。
その説明を聞いて、スゥは目を輝かせた。
「おおー! すごいのだ、無限にお金稼ぎできるのだー!!」
「え、うーん……そうなるのかな……?!」
「はは。もしうまく切り落とせるなら、夢じゃないな。」
あえて笑って返したが、当然、ことはそう簡単ではない。
エトとリーシャの連携は完璧に近いが、二人だけでは火力不足。スゥを迎えた三人パーティーとして、どれだけの連携ができるかが肝になってくる。
戦斧は大剣よりも刃渡りが短く、ピンポイントを狙う『刺す』動作もできない。予備動作の大きな振りかぶりの動きから、軌道修正の難しい振り下ろしの動きを経由して狙った位置に攻撃を当てるには、仲間との息の合った連携が必須だ。
その分、決まった際の破壊力は、他のあらゆる近接武器を凌駕する。
完璧にものにできれば、Aランクにも手がかかる『武器』になるだろう。
「大体分かったわ。慣れないパーティーでぶっつけ本番する前に、失敗しても問題なくて、逃げるのが簡単な相手で練習するぞ、ってことね。」
「うん、理解が早くて何よりだ。」
そう答えると、エトもスゥも納得したように頷いた。
三人を改めて見回し、軽く手を叩いて、集中を促す。
「いいか、今回重要なのは連携だ。さっきも言ったように、ダイオウガニは乾燥すると関節が脆くなる。まずエトが右手の攻撃を誘い、伸びきったところで関節にリーシャの炎魔法を当てて、そこをすかさずスゥが切り落とすんだ。」
エトとリーシャの表情に、僅かに動揺が見て取れる。
言う分には簡単だが、役割、順番、タイミング――どれを間違っても成功しない、かなり難易度の高い連携だ。
それをあの巨大な魔物に対して行おうというのだから、緊張するのも無理はない。
……だが、当の一番重要な役割を担うスゥは、様子が違うようだった。
「おおー! 面白そうなのだ! やってやるのだーっ!!」
そういって拳を突き上げるスゥは、見るからに楽しそうだ。
パーティーに加わる側であり、連携に一番不安を感じるはずの彼女がそう思えるのは、二人への十分な信頼が既にあるからだろう。
それはパーティーにおいて、もしかすると、最も重要なものかもしれない。
この三人は、それを既に持っているのだ。
「そうね、やってやろうじゃない!」
「うん、みんなで頑張ろっ!」
その様子をみて、二人もすぐに笑顔を取り戻したようだ。
三人はお互いに手を取り合って、強く頷き合った。
そしてスゥは、そのテンションのままに、空へと開戦を宣言した。
「よーし、ジャンボカニ祭りの開催なのだーっ!!」
ジャンボカニ祭りが、始まる。
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