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第2章
とある悪魔の呪詛歌目
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赤毛と悪魔のとある一日。三人称です。
ある日の部室にて、こんな会話が交わされる。
「それじゃ、お嬢。明日、宜しくな!」
「ええ。構いませんわ。アルテの街は久しぶりですもの。楽しみだわ。」
にこやかに話す少年と少女の声に、赤毛の少年はピシりと固まる。やや放心状態の少年を残し、「それじゃ、お疲れ様でした。」っと二人は部室を後にした。
「グレイ。・・・・今の聞いたか?」
二人がいなくなった部室で、わなわなと震える赤毛・・・・オズワルドに、グレイは平然と答える。
「ああ。明日二人で街に行くみたいだね。ヴィクトリアとレオニダス。」
「なっ!ふたりっきりでか!?なぜだ!!どうしてだ!!なにがあった!?」
「・・・・いや、僕にきかれても。そんなに気になるなら、直接聞けば良かっただろ?」
呆れたように呟くグレイに、オズワルドは項垂れる。
「それができてたら、さっき聞いてる。」
「相変わらず、奥手だね。初恋拗らせておかしくなっちゃってるんじゃない?」
「煩い。」
揶揄うでもなく述べるグレイに、オズワルドはため息を零す。
「上手くいかないんだ。あいつが相手だと。出会いが出会いなだけに・・・・今更態度を変えられないし。」
「だからって、あんな態度じゃ平行線だよ?幼子が好きな子の気を惹きたくて、意地悪してるのと変わらない。ヘンリー皇子の方が、よっぽど上手くヴィクトリアと話せるんじゃない?」
グレイの正論に、オズワルドは二の句が告げない。ソファーに身を委ね天井を仰ぐと、「あ~ーー!!」っと呻き声を漏らす。
「俺はいつまで、俺様なんだ!ガキかよ!?あぁガキだよ!クソったれ!!」
オズワルドも15歳だ。いつまでも傲慢で尊大な俺様皇子なままではない。帝王学も学んでいるし、王族としての心得も備えている。自分の在り方に苛立ちが募り、思わず悪態をつく。
「それは、君が決めた事だろ?オズワルド皇子。君が幼さの残る、傲慢で慢心な皇子でいるから、アイツらもおとなしいんだ。それに、あまりヴィクトリアに構いすぎるのも・・・・。他の候補者も同様に気をかけるべきなんじゃないの?」
グレイは、手にした珈琲をオズワルドの前に置くと、その対面に腰を下ろす。それをチラリと見遣り、オズワルドはぼそりと弱音を吐く。
「忌々しい限りだな。俺に力がないばかりに・・・・。」
「だから、今付けているんだろ?賢い愚者でいる時期だ。」
「・・・・わかってる。」
オズワルドもわかってはいるのだ。何時までもこんな態度では、ヴィクトリアに好意など持って貰えないと。最初は正直自惚れていた。皇子で顔もいい自分に惚れないわけがないと。惚れている筈だと。それが、ヴィクトリアの淡々とした態度に嫌でも気付いた。
ー嫌われている。
思い返せば、あの会話もこの会話もヴィクトリアは何時も素っ気なく、目を合わせれば嫌そうな顔を浮かべる。グレイ的には、其処がいいらしいが、オズワルドはそうじゃない。オズワルドは、ヴィクトリアに笑って欲しいのだ。初めて恋した彼女の笑顔。それが見たいし、そうさせるのは自分でありたい。そう思うのに、目で追うだけでなかなか声が掛けられない。会話をすれば、喧嘩腰。
「最悪だ。俺様云々の前に、俺自身が有り得ない。実力も伴わない自惚れた馬鹿な皇子で・・・・。俺様を通すならもっと力を・・・・いや、それじゃ不味いのか・・・・ガキなのが悔しい。」
「いっそ告白して、さっさと振られちゃえば?彼女に執着しすぎるのは、お互いによくないでしょ。」
こくっ。と珈琲を啜りグレイが告げる。
「お前なー。なんで俺が振られる前提なんだ!?」
「え?振られないの?」
「いや、振られる・・・・間違いなく振られる。」
「でしょ。」
「そういうお前だって、今のままじゃ振られるからな。グレイ。」
カップを手に取り、珈琲を見つめた。この二ヶ月で、オズワルドも現実が見えるようになっていた。この恋は、このままだと脈がない。ーっと。苛立ちと焦燥から、オズワルドはグレイに八つ当たりするように言葉を投げた。
「僕は、今を楽しんでるから。彼女とどうにかなりたいわけじゃないし。彼女の反応を見るのが面白いだけ。」
グレイは、重たく長い睫毛をゆっくりと下ろし、口元に弧を描き顎に手を添える。
「大体。恋とか愛とか。僕に分かるわけないしね。彼女は他より面白い。それだけだよ。あわよくば手に入れたいとは思うけど。」
クスクスと笑うグレイに、(そうやってお前が誰かを手に入れたい。と思う事自体、有り得ない事なんだが。)っと感じたが、オズワルドはそれを口にはしなかった。
「しかし・・・・あの二人、アルテに何しに行くんだ?」
会話を戻すオズワルドに、グレイは「そうだねー。」っと顔をあげる
「デートなんじゃないかな?くっついたり別れたりの時期だからね。」
「は?」
「ウィッツの子達、レクリエーション後で浮き足立ってるからねー。吊り橋効果でうっかり芽生えたチープな恋なんて、すぐに醒めて別れるのが落ちなのに・・・・。」
グレイの辛辣な言葉に、オズワルドは同意はしなかった。
「デート・・・・だと?」
余裕のない顔を浮かべるオズワルド。ソファーから立ち上がると、グレイに詰め寄り叫んだ。
「グレイ!明日は出掛けるぞ!アルテに行く!いいな!!」
「あー・・・・僕もかぁ・・・・ほんとさっさと振られてくれないかなぁ・・・・。」
休日を潰される事が確定したグレイは、微笑を讃えながらぼそりと呪詛を吐くのであった。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
拗らせストーカーは、悪魔に呪われた。
ある日の部室にて、こんな会話が交わされる。
「それじゃ、お嬢。明日、宜しくな!」
「ええ。構いませんわ。アルテの街は久しぶりですもの。楽しみだわ。」
にこやかに話す少年と少女の声に、赤毛の少年はピシりと固まる。やや放心状態の少年を残し、「それじゃ、お疲れ様でした。」っと二人は部室を後にした。
「グレイ。・・・・今の聞いたか?」
二人がいなくなった部室で、わなわなと震える赤毛・・・・オズワルドに、グレイは平然と答える。
「ああ。明日二人で街に行くみたいだね。ヴィクトリアとレオニダス。」
「なっ!ふたりっきりでか!?なぜだ!!どうしてだ!!なにがあった!?」
「・・・・いや、僕にきかれても。そんなに気になるなら、直接聞けば良かっただろ?」
呆れたように呟くグレイに、オズワルドは項垂れる。
「それができてたら、さっき聞いてる。」
「相変わらず、奥手だね。初恋拗らせておかしくなっちゃってるんじゃない?」
「煩い。」
揶揄うでもなく述べるグレイに、オズワルドはため息を零す。
「上手くいかないんだ。あいつが相手だと。出会いが出会いなだけに・・・・今更態度を変えられないし。」
「だからって、あんな態度じゃ平行線だよ?幼子が好きな子の気を惹きたくて、意地悪してるのと変わらない。ヘンリー皇子の方が、よっぽど上手くヴィクトリアと話せるんじゃない?」
グレイの正論に、オズワルドは二の句が告げない。ソファーに身を委ね天井を仰ぐと、「あ~ーー!!」っと呻き声を漏らす。
「俺はいつまで、俺様なんだ!ガキかよ!?あぁガキだよ!クソったれ!!」
オズワルドも15歳だ。いつまでも傲慢で尊大な俺様皇子なままではない。帝王学も学んでいるし、王族としての心得も備えている。自分の在り方に苛立ちが募り、思わず悪態をつく。
「それは、君が決めた事だろ?オズワルド皇子。君が幼さの残る、傲慢で慢心な皇子でいるから、アイツらもおとなしいんだ。それに、あまりヴィクトリアに構いすぎるのも・・・・。他の候補者も同様に気をかけるべきなんじゃないの?」
グレイは、手にした珈琲をオズワルドの前に置くと、その対面に腰を下ろす。それをチラリと見遣り、オズワルドはぼそりと弱音を吐く。
「忌々しい限りだな。俺に力がないばかりに・・・・。」
「だから、今付けているんだろ?賢い愚者でいる時期だ。」
「・・・・わかってる。」
オズワルドもわかってはいるのだ。何時までもこんな態度では、ヴィクトリアに好意など持って貰えないと。最初は正直自惚れていた。皇子で顔もいい自分に惚れないわけがないと。惚れている筈だと。それが、ヴィクトリアの淡々とした態度に嫌でも気付いた。
ー嫌われている。
思い返せば、あの会話もこの会話もヴィクトリアは何時も素っ気なく、目を合わせれば嫌そうな顔を浮かべる。グレイ的には、其処がいいらしいが、オズワルドはそうじゃない。オズワルドは、ヴィクトリアに笑って欲しいのだ。初めて恋した彼女の笑顔。それが見たいし、そうさせるのは自分でありたい。そう思うのに、目で追うだけでなかなか声が掛けられない。会話をすれば、喧嘩腰。
「最悪だ。俺様云々の前に、俺自身が有り得ない。実力も伴わない自惚れた馬鹿な皇子で・・・・。俺様を通すならもっと力を・・・・いや、それじゃ不味いのか・・・・ガキなのが悔しい。」
「いっそ告白して、さっさと振られちゃえば?彼女に執着しすぎるのは、お互いによくないでしょ。」
こくっ。と珈琲を啜りグレイが告げる。
「お前なー。なんで俺が振られる前提なんだ!?」
「え?振られないの?」
「いや、振られる・・・・間違いなく振られる。」
「でしょ。」
「そういうお前だって、今のままじゃ振られるからな。グレイ。」
カップを手に取り、珈琲を見つめた。この二ヶ月で、オズワルドも現実が見えるようになっていた。この恋は、このままだと脈がない。ーっと。苛立ちと焦燥から、オズワルドはグレイに八つ当たりするように言葉を投げた。
「僕は、今を楽しんでるから。彼女とどうにかなりたいわけじゃないし。彼女の反応を見るのが面白いだけ。」
グレイは、重たく長い睫毛をゆっくりと下ろし、口元に弧を描き顎に手を添える。
「大体。恋とか愛とか。僕に分かるわけないしね。彼女は他より面白い。それだけだよ。あわよくば手に入れたいとは思うけど。」
クスクスと笑うグレイに、(そうやってお前が誰かを手に入れたい。と思う事自体、有り得ない事なんだが。)っと感じたが、オズワルドはそれを口にはしなかった。
「しかし・・・・あの二人、アルテに何しに行くんだ?」
会話を戻すオズワルドに、グレイは「そうだねー。」っと顔をあげる
「デートなんじゃないかな?くっついたり別れたりの時期だからね。」
「は?」
「ウィッツの子達、レクリエーション後で浮き足立ってるからねー。吊り橋効果でうっかり芽生えたチープな恋なんて、すぐに醒めて別れるのが落ちなのに・・・・。」
グレイの辛辣な言葉に、オズワルドは同意はしなかった。
「デート・・・・だと?」
余裕のない顔を浮かべるオズワルド。ソファーから立ち上がると、グレイに詰め寄り叫んだ。
「グレイ!明日は出掛けるぞ!アルテに行く!いいな!!」
「あー・・・・僕もかぁ・・・・ほんとさっさと振られてくれないかなぁ・・・・。」
休日を潰される事が確定したグレイは、微笑を讃えながらぼそりと呪詛を吐くのであった。
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拗らせストーカーは、悪魔に呪われた。
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