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第2章
一方通行ベクトル
しおりを挟むハンスが消えた方向を見つめますわ。あれは間違いなくハンスだった。そして、その横にいたのは・・・・たぶんルビアナ。
「お嬢。大丈夫か?なんか顔色悪ぃけど。」
レオニダスの声に、はっとしますわ。いけない。私ったら、こんなところで顔に出すなんて。
「なんでもありませんわ。ホホホ。」
大丈夫ですわ。別にハンスを街でみかけたからたとか。ルビアナと一緒にいたのを見たからとか。手を繋いでたからとか。二人が付き合ってる事に気付いたからとか・・・・・・そんな事で、ショックを受けてるわけじゃありませんのよ?
そうですわ。ハンスが誰を想って誰と付き合おうが・・・・それは自由ですわ。私が勝手に想っているだけ。一方的に気持ちを押し付けているだけ。考えてみれば、ハンスも大人ですのよ?恋愛のひとつやふたつしていておかしくありませんわ?むしろ、結婚だってできる歳ですのに・・・・・・。私が無理に束縛している・・・・・・
「お嬢。手・・・・。」
「え?」
「そんな風に力入れてたら、爪のあと残るぞ?綺麗な手してんだから、傷つけんのやめとけって。」
握りしめていた手を、無理矢理に開かされましたわ。
「ほらみろ。跡になってる。」
レオニダスがため息を付きながら、私の手を擦る。うっ。確かに痛いですわ・・・・・・。私ったらいつの間にこんなに強く握り締めていたのかしら
「お嬢の気持ちわからねーでもねーけどな。」
「へ?」
「好きな奴が、自分以外の奴と手を繋いで歩いてるのみたら・・・・そりゃ動揺するだろ。」
「えっと?・・・・レオニダス?」
なんの話かしら?レオニダスが真面目な顔して、恋愛っぽい事を語っているような・・・・・・。
「ハンスが好きなんだろ?だから、さっきの光景目にしてショック受けてんだろ?無理に平気な振りしなくていいって。俺も気持ちわかるから。」
ぽんっと肩に手を置き、うんうんと軽く頷くレオニダス。
「俺も好きな奴いるから。お嬢の気持ちすげーわかるよ。ってか、ハンスの奴。俺達の誘い断って出掛けるなら、せめて日をずらすか場所考えろよな。目にするお嬢の身にもなれっての。」
ハンスに向かってブツブツと文句を言うレオニダス。私を気遣ってくれているのかしら。・・・・それに気持ちがわかるって・・・・。
「まっ。お嬢も気にしすぎないようにしろよな。うん。大丈夫だから、心配すんなって!気をしっかりもてよ?お嬢。」
にっと白い歯を見せ、笑うレオニダス。
「貴方・・・・・・。」
「ん?」
「貴方、私を励ましてるの?貴方もハンスが好きなのに・・・・ライバルにそんな風に塩を贈って・・・・」
塩対応な私に、塩を贈って・・・・お人好しすぎますわ。恋愛のライバルなんて、蹴落とすのがセオリーですのよ?弱っているならその傷口に粗塩を練り込むくらいでないと、勝ち組になんてなれませんわ。
「お馬鹿ね。勝手に落ち込んだ私なんて、ほおっておけば宜しいのに。そんなんじゃ、ハンスを振り向かせる事なんてできませんわよ?」
「いや、ちょいちょい気になる言葉があるんだけど。お嬢・・・・俺がハンス好きって・・・・友としての意味で言ってるよな?」
口元を引き攣らせ、眉間に皺を寄せたレオニダスが、恐る恐るといった様子で私に尋ねますわ。何を聞いてくるのでしょう。そんなの決まってますわ。
「恋愛的な意味ですわ。貴方、ハンスが好きなのでしょう?」
だから、私の気持ちもわかるのよね。うんうん。同志ですわ。ライバルであり、同志同朋。ハンスに恋をし、ハンスの心を望む乙女と騎士(見習い)ですわ。
「ちっげーーーーよ!!!何言ってんだお嬢!!好きの意味がちがーーーーーーーう!!!」
真っ赤な顔をし、物凄い剣幕で私に詰め寄ってきますわ。もう、そんなに焦らなくても大丈夫ですのに。
「誤魔化さなくても大丈夫ですわ。私、恋の在り方には理解がある方ですのよ。」
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
違う。その好きじゃない。
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