転生悪役令嬢の前途多難な没落計画

一花八華

文字の大きさ
90 / 113
令嬢執事ハンスの受難

受難5~病んでるハンスの境界線~

しおりを挟む

 天罰なのだろうか。お嬢様のお願い事を断った天罰が降ったのだろうか。もしくは、隠し事をしているせいなのか・・・・。休日を終えてから・・・・色々ありすぎて精神的に限界が近い。特に・・お嬢様に避けられているのがきつい。


 この数日、会話どころか、目すら合わせてもらえない。ルビアナ嬢に頼んだのか、土壁に隠れて移動したり・・・・俺を見かけるとレオニダスを連れて脱兎の如く逃げる。本人的に、こそこそと忍んでいるつもりなのか。それ、逆に目立ってますよ。お嬢様。

 逃げられると、追いかけたくなる。追い詰めて、捕まえて、問い詰めて、逃げ出さないように繋いで・・・

「ハンス。お前、目がマジでヤバいぞ」

 教室で机に突っ伏していたら、レオニダスが声をかけてきた。お前、最近お嬢様とよくいるよな。そこは、俺の場所なんだが。いっそ此処でレオニダスを消したら、お嬢様の隣に戻れるだろうか。

「・・・・うわっ。なんか今背筋に寒気がっ。風邪でも引いちまったかな? 」
「それはないだろ。・・・・馬鹿は風邪を引かない」

 脳内で5回程レオニダスを消したが、残念ながら目の前にいるレオニダスは消えなかった。ちらりとお嬢様の方を覗きみる。


 お嬢様は、ルビアナ嬢と話しをしている。羨ましい。俺も話しをしたい。

「ハンス・・・・俺の話し聞いてる?俺、今魔法の練習を・・・・から、・・・・を・・・・えて欲しいんだけど・・・・」

 お嬢様とルビアナ嬢が、教室をでた。もうすぐ授業が始まるというのに。仕方ないので、後を追う。お嬢様の学園生活のサポートをする為に俺はここにいる。これは、俺の仕事だから。

「おい!ハンス!何処に行くんだよ!? 」


 後方で、レオニダスが叫ぶ。

「救護室。お嬢様が体調を崩してるから。Mrsシャーウッドにそう言っておいてくれ」

「は?はあ? 」


 ちょうどいい。お嬢様を捕まえよう。捕まえて、ちょっとばかし隔離して、話しをしよう。

 限界だ。

 理由もわからずに避けられるなんて耐えられない。


 レクリエーションからずっと不運が続いている。これもそれの一環なのだろうか。最終的にお嬢様に捨てられるんじゃ・・・・。そんな思考に辿りつき、焦燥に胸が潰れそうになる。

 限界だ。

 


◆◆◆



 お嬢様を捕まえた。



 廊下の曲がり角。俺の腕の中に飛び込んできたお嬢様。

やっと捕まえた。

「お嬢様。廊下はあれほど走ってはいけないと・・・・。怪我をされたらどうするのです」

 抱き締める腕に力が篭ってしまう。

 離したくない。このまま攫ってしまいたい。

 俺の幸せの為に、お嬢様を奪ってしまおうか?お嬢様は、俺が好きなんだろう?なら、このまま攫って囲って閉じ込めてしまえばいい。俺だけを見るようにすればいい。お嬢様の幸せ?傍にいられないなら・・・・そんなモノどうでも・・・・


 醜く、どろどろとした気持ちを抱えたままお嬢様を抱き締める。どんどんどんどん黒く染め上げられていく俺の内側。

お嬢様の震えに気付き、ハッとする。

俺はナニを考えていた?

こんなのだから、ブルーテス様に牽制されるんだ。あの方は、心からお嬢様の幸せを願っている。俺みたいな歪んだ人間と違っていて。お嬢様と同じで真っ直ぐで眩くて。

生きる世界が違う。


 

「お嬢様・・・・本当に・・・・どうされたのですか?顔色も悪い。授業も始まってますが・・・・今日はこのまま寮に戻られた方が・・・・」

 ここ数日、ずっと顔色が悪い。目の下にクマもできている。あまり寝むれていないようだ。お嬢様は、何かに思い悩んで苦しんでいる。・・・・それを俺には隠そうとしている。隠されている事がショックだ。悩みを打ち明けてもらえず、避けられ続け・・・・お前は不要だと言われているようで・・・・




「放っておいてちょうだい。貴方に関係があって? 」

 ぐるぐると暗闇に囚われる俺に、お嬢様が言い放つ。

「私・・・・ハンスといたくありませんの。離して下さる?傍に寄らないで」


 睨まれ、腕と言葉で拒絶された。


聞き間違いだろうか?
聞き間違いであって欲しい。

頭がうまく働かない。
真っ白だ。
真っ白になって、黒くなる。



「・・・・貴方が傍に居るのが・・辛いのよ。だからお願い。ハンス。私の執事を辞めてちょうだい」


 ああ。そうか。お嬢様は、俺が不要になったんだ。俺以外を見て、世界を広げて欲しい。そう願っていた筈なのに。喜ばしい事の筈なのに。頭を鈍器で殴られ、心は鉛のように重い。


ーお前は、いらない。


お嬢様から告げられる事が、こんなにも苦しいだなんて・・・・。


「・・・・嫌です」

 気付けばそう吐き出していた。ずっと隠していた本音。





「嫌です。・・・・嫌だ。俺はっ・・・・俺は」
 

「俺は、お嬢様から・・・・離れたくないっ」



お嬢様。
俺の居場所を取らないで。

 






 
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!

弥生 真由
恋愛
 何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった! せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!  ……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです! ※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...