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令嬢執事ハンスの受難
受難4~屈折~
しおりを挟む注文を済ませ店をでる。装飾品は、バレッタにした。それならお嬢様の負担にならないし、身につけやすいだろう。
俺の用が済んだ。学園に戻るか話しをしようとしたら、ルーファはルビアナ嬢に交際を申し込んだ。俺の目の前でするので、反応に困った。しかも、「嫁に来て下さい!」って・・・いきなり求婚する馬鹿が何処にいる!っと突っ込みたかったが、我慢した。そういやお嬢様もいきなりの求婚だったな・・・・俺は、当時、理解が追いつかず固まってたっけ。
ーっと思い出し苦笑していたら、ルビアナ嬢は、案の定困惑し固まっていた。
「ごめんなさい。私、ルーファ君の事よく知らないし、それに・・・・」
「なら、これから知って欲しイ!友達!友達としてでもいいから、オレの事知っていって!お願い!」
ルーファの勢いに押され、ルビアナ嬢は思わず頷いてしまっている。このままアルテの街を回るというので、俺はそこで二人と別れた。
予定もないので、学園に戻ろう。できればお嬢様を探したかったが、アルテの街で見つけるのは至難の技だ。頭の中では、四六時中お嬢様の事を考えてしまう。初めて会ったあの日。あのキラキラと輝く碧瞳に見つめられたあの時から、俺の中をお嬢様が陣取って、出ていってくれない。
「ハーンスは、ヴィクっちが好きなんだよネ?」
装飾品の相談をしていた時に、ルーファにそう問われた。無言でいたら、
「両想いな癖に、なんで付き合わないの?」
と問われた。
「お嬢様の想いと、俺の想いは、似ているようで違うからな。」
仕方なくそう返す。
お嬢様の想いは、真っ直ぐでキラキラしてて、懸命で眩しい。その真っ直ぐさが、俺には眩し過ぎて・・・・直視できない。
俺の想いは、屈折してて中は嫉妬と渇望でドロドロと汚れている。【執事】という仮面の下の俺は、醜く鬱屈とし、狂気に満ちていて・・・・
お嬢様は、【恋に恋をしている】。俺のこんな醜い劣情を知らない。お嬢様が知れば、きっと幻滅するだろう。
「ヴィクっちは、あんなにハーンスが好きなのに?」
俺の返答に、ルーファは何故?っと更に問いかける。そんな事・・・・お前に関係無いだろ?
「・・・・俺がお嬢様と付き合う事は、ない。」
思わずイラつき、そう断言したら・・・・ルーファはなんとも言えない顔で俺を見つめた。
「応えるつもりはないのに・・・・優しくするだなんて・・・・ハンスって案外残酷な奴だネ・・・・。」
俺の描いたデザイン画を、指でなぞりながらルーファが呟いた。胸にその言葉が深く突き刺さる。言われた意味も、ルーファの言いたい事もわかる。俺はそれに何も返せず。黙って下を向くしかなかった。
俺はいつでもお嬢様を想っている。想っている癖に、拒絶しきれない。幸せを願っているのに、欲してしまう。矛盾が俺の中で渦巻く。お嬢様に嫌われれば楽になれるだろうか?嫌われる勇気を持てない。
俺の世界は、お嬢様で回っている。
お嬢様に嫌われたら、俺は世界に絶望してしまうだろう。
ああ。お嬢様に早く会いたい。
馬車に揺られながら、俺はその事だけを考えていた。
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