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第3章

裏番は、金髪ドリル!

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「お嬢、サイズ間違ってねーか?それ?」

 半袖シャツの前を大きく開け、夏仕様になったレオニダス。教室に入った私を見て、開口一番に口にするのがそれですの!?

 ふふふ。それ、私が太ってるって言いたいのよね?体型に服のサイズが合ってないって・・・・このお馬鹿わんこ!目敏いわね!別に間違ってないわよ!間違ったのは、私の体型管理ですわ!

「レオニダス・・・・私に喧嘩を売ってるのかしら?ふふふ。宜しくってよ。ちょうど運動をしなくてはならないと思っていたところですわ。その喧嘩・・・・言い値で買って差し上げますわ!」

 ダイエットもかねて、少しばかりやり合うのもいいですわね。新しい魔法の的になって下さるのね。手加減はしなくってよ!おーっほっほっほっほ!!


「売ってねーてば!お嬢に喧嘩売るような、命知らずな奴、この学園にいねーだろ!?」

 扇子を片手に、微笑む私。それを見て、慌ててキャンキャンと尻尾を巻く駄犬。

「なによ。その言い方ですと私、まるで有名人みたいじゃないですの」

 私、ひっそりと日陰に咲く野の花のような令嬢ですわ。学園を裏から牛耳る、裏番みたいな言い方はよしてちょうだい。

 憤慨する私の顔を何とも言えない顔で見つめてくる八つの瞳。

「いや、お嬢は有名だろ。無自覚かよ」

なぜ、呆れたように言うの?レオニダス。貴方、最近私に突っ込み入れてきますわね。私、いつボケ担当になったのかしら。身に覚えがありませんわ。

「・・・・ヴィーは、その・・・・色々目立つよね。綺麗だし、そのなんというか、目を惹きつけられるというか・・・・」

ルビアナ。目を逸らして呟くのはなぜ?ねぇ。ちゃんと目を見て話てちょうだい。私はここよ?

「うん。ヴィーちゃんってば、外見も中身も行動も派手だから、目立たないわけがないよねー」

机に肘をつき、顎に手を添え話すフィロス。

「派手って、私の何処が派手ですの!?こんな慎ましやかで、清楚の塊な私ですのよ!?お兄様だって、爽やか王子として人気ですわ!その妹の私が、派手でケバいだなんて!一体誰がそんな事を!!」

 皆さん、ちょっと酷くありません?確かに悪役令嬢な私ですけれど、フィロインにも陰湿なイジメはしていないし、取巻きだって連れてませんわ!権力を笠に着て、横暴や我儘だってしてないし、至って真面目な普通の生徒ですのよ!?

「お嬢様。これまでのご自身の行動について、胸に手をあて考えてみては如何でしょうか?」

 傍に佇むハンスが、そっと声をかけてきますわ。これまでの行動?別に変な事はしていませんわ。ハンスは、一体何が言いたいのかしら?

 小首を傾げ、ハンスを見つめる。

「・・・・【校内を駆回る発光物と少女】【皇子発火事件】【水晶破裂】【暴走風に舞い上がるスカート】【びしょ濡れの美少女】【ユニコーンの乙女】・・・・」

 ハンスの口から、羅列されていく事柄。
 あら、何かしら・・・・私、どれも知っている気がしますわ。

「校内を駆回る発光物って・・・・」
「あーそれ、私の事かな?ほら、四月の頭にヴィーちゃん追いかけ回したじゃない。興奮して、光っちゃったんだった。あれ目立ってたよね」

 てへぺろっと、舌を出しウィンクするフィロス。ああ、そういえばそんな事もありましたわね。ハンスの裏切りで捕縛され、今に至るわけですけれど。

「皇子発火事件は、オズワルド皇子ね。あれは、びっくりしたわ。あのせいで、Mrsシャーウッドに罰則活動をさせられて、その上、グレイ様に騙されBMRに入部する羽目に・・・・」


 あの腹黒悪魔に取り憑かれたのも、あの頃ね。早く悪魔払いしなくては。夏休暇に、聖地巡りでもしようかしら。野菜スティック聖剣青汁聖水の効きが最近良くないのよね。悪魔に耐性ができたみたい。野菜ソムリエ魔祓士にでもなれば、近寄って来ないかもしれませんわね。

「水晶破裂は、ハンスでしょ?それに、暴走風はそこのお馬鹿ですわよね。私、どれも関係ありませんわ」

 後の二つは、私ですけれど・・・・。

「どれも、お嬢が関わってるだろ」
「なっ!?好きで関わってませんわ!」
「騒ぎの中心に金髪ドリルって有名だぜ?」
「濡れ衣よ!」
「たしかに良く濡れてるよな」
「そっちの濡れるじゃなくってよ!お馬鹿!!」

 誰が、透け濡れの方と言いました!?ぬーれーぎーぬーよー!?濡れ衣!

「たまたま、私の側で起こった事件ばかりじゃない!私が元凶じゃありませんわ!」

「アルファフォリス学園の騒動の裏に!金髪ドリルあり☆」

 フィロスが、ウィンクしながらポーズを決めて叫びますわ。ちょっと!おふざけは赦しませんわよ!?

「ですから!別の金髪ドリルよー!私は、派手ケバ裏番じゃありませんわー!!」

「他の金髪ドリルって・・・・お嬢様以外何処に・・・・」

 聞こえない聞こえない。ハンスの残念な声も、ルビアナの憐れむ視線も、茶化すフィロスも、バカ犬の余計な突っ込みも!なーんにも聞こえませんわ!


 あぁ、お兄様の耳に入りませんように!切に・・・・切に願いますわ!!

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