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第3章

ぱんつ見せて(る)よヴィクトリアちゃん

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 春の花々が終わり、世界は緑に彩られていく。アベリアやジキタリスの花々がぽつぽつ咲き始め、空は蒼く深みを増す。風の薫りが運ぶ緑は、夏の訪れを知らせてくれますわ。

「ふふふ。ヴィーちゃん夏服可愛い」

 鏡の前に立つ私に、頬を緩ませ話しかけてくるフィロス。

「ありがとうフィロス。あら、貴女は夏服は着ないの?」

 見れば、フィロスは長袖のまま。流石にローブは脱いでいるけれど、暑くないのかしら?

「うーん。私寒がりなんだよね。すぐに体調崩しちゃうし」

 眉尻を下げ「夏服可愛いけど、私には着れそうにないや」と残念そうに呟くフィロス。そうね。膝丈の白いワンピースのようなセーラー服。愛らしいフィロスが着れば、その魅力は更にアップするに違いないわ。

 私?私が着ると・・・・なんというか、少し如何わしいコスプレのようよ?ウゥッ。何がイケナイのかしら?

 肉付きの良くなってきた体型のせい?いいえ、入学前に採寸していたせいね。この夏服、胸の辺りとウェストが苦しい。スカートの丈も、合わせた時よりも上がってしまってますわ。それに、太って・・・・コホン。むちむちとしてきた太ももを隠す為に履いたニーハイのチョイス。間違えてたかしら?

「ヴィーちゃん。柔らかくて美味しそう」

「うっさいですわ!フィロス!どうせ太りましたわよ!ええ!調子に乗ってクリームコロッケばかり食べた報いですわ!因果応報!自業自得!自縄自縛!後悔先に立たず!ですわ~~!!」

 頬を伝う心の汗。いいえ。血の涙ですわ。くっ!殺せ!甘い誘惑に勝てず、ぶくぶくと肥え太った雌豚な私をひとおもいに殺ってちょうだい!!

「えー?魅力的だよー?特にこの靴下とスカートの間にちらりと覗く、むっちりした太ももとか・・・・」

「どうせ、むちむちでポニョポニョですわよー!!ぱっつんぱっつんのぽちゃぽちゃですわよー!!」

「ヴィーちゃん。落ち着いて。そこまでいってないから」

「言わなくてもわかりますわー!!」

 ああ、嫌ですわ!夏服嫌い。私もフィロスみたいに長袖でいたいけれど・・・・ただでさえ、汗っかきなこの体質。少しでも涼やかな格好をしなくては、汗濡れ必須ですもの!

「くっ!背に腹は変えられないとは、この事ですわね!!」

 こんな事でしたら、ハンスの忠告をきちんと聞いておくべきでしたわ。いえ、元はといえばハンスが悪いのですわ!ハンスとルビアナの逢い引き事件(誤解でしたけれど)で、傷心の私は、ヤケ食いに走ったのですもの!丁度良い事に、大量のお菓子を買い溜めましたものね!アルテの街で!お土産用も私のお腹の中に収まりましたわ!きっちりかっちりぜーんぶね!その結果がこれよ!!ガッデム!!

 床に手と膝を付き、ガックリと項垂れる私。

「ヴィーちゃん。ぱんつ見えるよ。ってか見えてる」

「放って置いてちょうだい。私、ぱんつよりも大切な物を無くしてしまったのですわ」

 華麗で美麗で麗しい、淑女なヴィクトリア・アクヤック・・・・夏を前にしてぶくぶくと肥え太るとは・・・・ああっ!私のくびれ・・・・何処にいきましたの?戻ってきなさい。お戻りになって!!ナウ!!

「ぱんつより大事ってなに?ぱんつ無くしたら大変だよー?ぱんつ大事だって」


 ぱっつんぱっつんの制服を身にまとい、自責の念に打ちひしがれる私の側で、ぱんつぱんつと連呼するスレンダーなヒロイン。

 そのカオスな状況は、待ち合わせ場所に来ない私達を呼びにきたルビアナに発見されるまで続いたのですわ。








□■□■□■□■□■□■□■□■□

ぱんつは、大事だよ?
無くしたら大変だよ?


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