狐メイドは 絆されない

一花八華

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狐メイドは、悪女を目指す

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なにをーーーー!?
なにをする気ぞーーー!?
儂、今世年齢まだ9歳ぞーー!?

身の危険を感じ、逃げ出そうとしたところ パッと離れられた。
そして、おでこに柔らかい感触が。

「なぬっ!」
「今、お主…儂のおでこに 接吻を…」

ぼわっと尻尾の毛が逆立つ。

「無視…もうしちゃだめですよ。」

にこっと笑うセイ。儂は、首を高速で上下にふる。
こやつの蠱惑は、あなおそろしい。

「冗談は、これくらいにしときましょうか。」

うぐぐっ。こやつはこうやっていつも儂をからかう。本当に腹立たしい。だから儂は、早く大人になって セイを見返してやりたいのじゃ。

「こども扱いするでない。」

口を尖らせ、むくれる儂の頭を わしわしとセイがなでくりまわす。

「こどもですよ。たまもさんは、こどもです。急いで大人になろうとしなくていいんです。」
「精神は、体に依存するんです。前世の記憶があったとしても…今の貴女は 守られるべきこどもなんですから。」

「むぅ。儂は、大人になって美悪女になるのじゃ。」
「なら 尚更、急がずゆっくり悪女を目指しましょう。」

「いい女っていうのは、時間をかけて育つモノでしょう?」



ぽんぽんと、頭を軽く叩かれる。こういう扱いが、不満なのに…



「さっ。そろそろおやつにしましょうか。」

儂の気も知らんと、セイが 手を差し出してくる。

「今日は、ブラウニーですよ。」

ブラウニー!セイの作るブラウニーは、最高なのじゃ!
ふへへ。あの甘ったるく ちょっぴりほろ苦いチョコケーキを頬張りながら、セイの淹れた レモンティーでまったりしよう。


「そうじゃな。儂は、焦らず美悪女を目指すぞ。それまで、主は せいぜい儂に利用されるがよい。」

ふふん。と不適に笑ってやる。どうじゃ?悪女らしいじゃろ?

「はい。どうぞ僕を 好きに利用して下さいね。」
 

にこにこと笑うセイは、本当に幸せそうじゃ。
何がそんなに嬉しいのじゃろうか?

うーむ。やっぱり、こやつは ようわからぬ。
まぁ、悪い気はしないがのぉ。


いつか美悪女になった暁には、一番に陥落してやるから待っておれよ。



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