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狐メイドは、慕われる
狐メイドは愛しの我が君
しおりを挟むワタクシには、想い人がいます。その方は、とても美しく愛らしく、それはもう目に入れても悔いのないくらい素敵な方でいらっしゃいます。
「クロミツ~。」
ああ!ころころと転がる鈴の音のような愛らしい声!我が君!クロミツはここです!ここにいます!
「く~ん。」
ガサガサと木のうろから這い出て、我が君の姿を確認。藍色のワンピースに白いエプロン。ぴょこんと飛び出たお耳とその滑らかで美しい毛並みを誇る、フサフサの尻尾。今日も完璧な美少女です!我が君!
「なんじゃ、そこにおったのか。クロミツ。」
にこっと微笑むその笑顔。まさに雷に打たれたような衝撃!ズッキューん!100満ボルトの輝きです!
「今日は、おいなりさんじゃぞ。ふふふ。この揚げがよぉ味が染みておってな。とても美味なのじゃ。ほれ、食すがよい。」
我が君の小さな手の平にのせられた茶色い食べ物。甘くいい匂いがします。地味な外見とうって代わり、とても美味しそうです。ええ、我が君と同じくらい美味しそうな食べ物です。
ーはぐはぐはぐはぐ。
「おいおい。クロミツ。そんな焦らずとも誰も取ったりせぬ。ゆっくり食せ。喉に詰めるぞ。」
ー甘い。美味しい。
「クロミツ。怪我の方はどうじゃ?少しはよくなったかのぉ。」
ぽふぽふ。我が君が、私の頭をぽふぽふしてきます。他の者にされれば、噛み付き案件ですが、我が君にされると・・・・どうしてでしょうか、もっと・・もっとたくさんぽふぽふして欲しくてたまりません。我が君。もっとクロミツにぽふぽふして下さい!そのちっちゃなお手手でクロミツの体を撫でくりまわして下さい!
「きゅ~ん。」
「ふふふ。クロミツは愛らしいのぉ。」
いえ!愛らしいのは貴女です!ごろんと仰向けになり、お腹を差し出します。スタンバイOKです。さぁ!お好きになさって下さい!さぁ!
「むぅ。やはり傷はあまりよくなっておらぬようだな。」
ワタクシの腹の傷を見て、我が君が顔を顰めました。ああっ。失態です。我が君にこんな顔をさせたい訳ではなかったのに。
「すまぬな。儂に妖力があれば、このような傷。痕形もなく消してやれるのに・・・・今の儂は、何の力も持たぬただの狐のメイドじゃ。」
「くぅーっ・・・・。」
「セイに見せれば、お主の怪我も治してやれるかもしれぬが・・・・」
たまに我が君の口からでる、セイという名前。我が君は、そのセイという人物に行動を制限されているようです。こんな幼い可憐な美少女を、このような格好をさせ軟禁しているセイという人物。変態に違いありません!親元から引き離し、幼子をメイドとしてこき使うなど、なんたる悪趣味で下劣な輩なのでしょうか!クロミツが万全であれば、その喉元に食らいつき、闇に屠ってやるというのに・・・・・・。
「だめじゃな・・・・セイは野良狐は嫌いじゃからなぁ。本当は主を連れて帰りたいのじゃが・・・・」
ー野良狐?我が君・・・・何か勘違いをなされていませんか?私は、野良狐ではありませんよ?ワタクシは・・・・
「たまもさん。」
「ひゃっ!」
ー男の声です。・・・・それを耳にした我が君は、飛び上がる程驚かれました。敵ですか!?我が君、早くクロミツの後ろへ。手負いですが、ワタクシが貴女をお守りします。貴女に助けられた命・・・・貴女のモノです。このクロミツ、貴女様の盾であり剣であります。
「グルるるるるる。」
「ああっクロミツ!だめじゃ!でてきては!」
目の前に対峙する男・・・・白が混じる黒髪。虚ろな黒目と金の瞳・・・・ううっ金の方は、見るとゾワリと毛が逆立ちます。モノクルで隠されてますが、ダメなヤツです。これはダメなヤツ。青白くひょろっとした男。得体の知れない恐怖が、全身を巡ります。
「・・・・へぇ。珍しいモノを拾ったようですね。」
「グルるるるるる。」
我が君に仇なすモノであるなら、どんな相手でもひきません。ええ、もとより一度死にかけた身。ここで朽ちても悔いはありません!
「セイ!コヤツは儂の可愛い下僕なのじゃ!野良狐ではない!じゃから見逃してくれ!」
ふわっ!我が君!首に抱きつかないで下さい!嬉しい!嬉しいけれど、これじゃあいつにとびかかれない。ーってセイ?こいつがセイなのですか!?この得体の知れない恐ろしい男が、変態セイ!!
「・・・・わかっていますよ。」
ーぞくっ!
「これは野良狐ではありませんよ。たまもさん。銀狼です。」
「へ?」
「珍しいですね。銀狼を見るのは私も初めてです。」
「野良狐では・・・・ないのか。」
「ええ。野良狐ではありませんね。」
「そうか、クロミツは銀狼なのか。」
「クロミツ?・・・・たまもさん。名を与えたのですか?」
「うむ?ここに黒いぽってんが三つあるじゃろ?黒が三つでクロミツじゃ。」
「わふっ!」
我が君からいただいた、大切な名前です!誰にも差し上げませんよ!奪わせませんよ!
「・・・・あー。それに血も分け与えちゃってるようですね。忠誠も誓われちゃってると・・・・」
「血?ちゅうせい?なんの事じゃ、森の中で血だらけじゃったコヤツを助けはしたが、血なんか飲ませてないぞ?ちゅうはしてしもうたかもしれぬが・・・・」
「・・・・ちゅうはした?」
ーヒィッ!今一瞬ブリザードが吹き荒れましたよ!?ワタクシ、命が飛びましたよ!?何ですか!?この男!瞳で命を狩れるんですか!死神ですか!
「・・・・色々と気に食いませんが・・・・ソレ・・眷属になっちゃってるみたいです。」
「へ?眷属?」
「はい。主従契約がなされてますね。仕方ありませんね。連れて帰りましょう。」
ヤレヤレとため息を零す、セイという男。
「連れて帰ってよいのか!?眷属という事は、儂のお供という事か!?」
ぱぁっと顔を綻ばせ、ぴょんぴょんと跳ねる我が君。尻尾が揺れる度、ワンピースが!ああっ!ちょっと可愛すぎです!なんですか!この可愛い生き物は!
「嬉しいですか?たまもさん。」
「うむ!嬉しいぞ!ありがとうなのじゃ!セイ!」
変態男のセイは、我が君の笑顔をとても優しい顔で見つめています。なんですか?ただの変態じゃないのですか?こういった輩は執着が酷く、自分以外に対象の関心が向く事を嫌う筈では・・・・これはむしろ・・・・。
「クロミツ・・・・ですか。」
「わぅっ。」
ううっ。頭を撫でられました。苦手です。苦手ですが、逆らえません。本能が逆らうなと言っています。
「クロミツ・・・・たまもさんの番犬・・・・いえ、家族として・・たまもさんを宜しく御願いしますね。」
「わふ!!」
「ん。いい子です。」
傷はあっという間に治されました。あんな酷い傷だったのに・・・・やはりこのセイという男・・・・只者ではありません。
「儂のクロミツ~。儂のお供クロミツ~。」
っと色々疑問に思う事もありますが、我が君・・・・たまも様のそばに居られる事になった方が重要です。ああ愛らしい。癒しです。この不肖クロミツ。命に変えてでも、たまも様をお守り致します!
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