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第三話、子どもを助けて連れ帰ったら八岐大蛇でした
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その日朝陽が会社から帰宅しようとすると、会社の前に小さな姿に戻ったオロが立っていた。対面したまま、何かを言いたげにして困った表情をしているオロに朝陽が手を差し伸べる。
「帰るぞ、オロ」
人目につかないようにオロを抱き上げて背に乗せた。
「朝陽、怒ってる?」
恐る恐る聞いてきたオロの頭に手を回して、短くなってしまったその頭髪に指を絡める。
「怒ってないよ」
ホッとしたようなオロの様子が背後から伝わってきた。朝陽からの反応が怖かったのだというのが分かり、罪悪感が心に芽生えた。
誤魔化すように、朝陽は別の話題を振る。
「オロは何でここに居るんだ? お前が元々居た場所は、ここからじゃ遠いだろ?」
手が空いた時間を使って、朝陽は八岐大蛇のことをちゃんと調べていた。オロと出会う前までは気にかけてもいなかったので、良い調べ物にもなり、朝陽としても興味深かった。
オロは静かに朝陽の肩に両手を乗せて視線を落とす。
「何度か時代は変わったけれど、いつからなのかは分からない。ずっと呼ばれているような気がしていて、気がつけば剣のある場所にいた。でも、中身は空っぽでボクの求めてたモノじゃなくなってた。その後くらいかな。奴らに追われるようになって、今度はここに来てた。朝陽は……ボクのこと嫌い? 一緒にいるの迷惑?」
出会った初日に比べてオロの声音が淡々としているのが分かり、朝陽はオロの心が沈み込んでいる事に漸く気が付いた。一体自分は何をしているのだろう、と己を叱咤する。
「そんな事ない。俺が大人気なかっただけなんだ。ごめんなオロ。お前も俺の番なんだし遠慮せずに堂々と部屋に居ていいんだよ。オロの事、邪魔だなんて本気で思ってない。悪かった」
肩口に濡れた感触があったが、朝陽は気が付かないフリをした。知らない内に傷つけてしまっていたらしい。
「今度さ、纏った休みが取れたら、昔お前が住んでいた処《ところ》にでも行ってみるか? 今こうしてここに居るって事は、ずっと帰ってないんだろ?」
「え、いいの?」
八岐大蛇が住んでいたとされる天《あま》が淵《ふち》のある県は、ここからはだいぶ離れた場所にある。それなのに何て事ないように言った朝陽の言葉が、オロはとても嬉しかった。
「旅行ついでだ。どうせ宿代と移動代も俺の分しかかからないから問題ない。気にするな」
「うん。ありがとう朝陽」
「まだ先の話になるから申し訳ないけど……。あ、帰ったらアイツらにも声をかけてみるか。置いてったらアパート周辺更地にしそうだし」
都市ごと事故物件とかシャレにならない。
「朝陽はやっぱりスサに似ている。ボクにこうして優しくしてくれるのはスサと朝陽だけだ」
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「朝陽の背中、温かい」
「おい、食べるなよ? あれは家の中限定だからな⁉︎」
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→第四話、晴明編へと続く
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