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第六話、引越し先はいわく憑き物件。浄霊したら神聖な間になり過ぎて、ついに出来ちゃいました
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***
——まだケツと腰が痛い。
結局異界で五人に貪り食われた朝陽は恒例の如く五回ほど気絶させられた。
まだ下半身を中心とした患部に甘い疼きが走っている。それなのにもっと体力をつけろと言われたものだから殺意が湧いてくるどころの話ではない。
——いや、アイツらの事はもういい。仕事しよ。
頭を切り替えた。
「何それ怖っ! 取り壊した方がいいんじゃないの?」
女子社員の怖がる声が聞こえてくる。ホラー話でもしているのかと朝陽が思っていると、次に発せられたセリフに耳を傾ける事となった。
「そこ一軒家で事故物件て訳じゃないんだけど、皆んな一週間も経たずに出て行っちゃうんだよね。お祓いしても効かないみたいでさ、建て替えようにも作業中に事故ばかり起こるからそれも無理なんだよ。だから親戚がめちゃくちゃ困ってるって言っててさ」
話の中心にいるのは、同期で入社した赤嶺という男だ。
「赤嶺、その物件て家賃いくらだ?」
「え、桜木? 今は分からないけど月五万って言ってなかったかな?」
普段喋らない朝陽が突然大きな声を出したものだから、赤嶺を含めた全員が驚いたように朝陽を見ていた。
——五万‼︎
「でもマジでヤバい物件だぜ?」
朝陽は今住んでいるワンルームに月八万は払っている。それよりも安くてしかも一軒家とくれば、朝陽が飛びつかない訳がなかった。赤嶺の席まで足早に移動する。
「会社とはどれくらい離れてるんだ?」
一つ問題があった。いくら安いとはいえ、交通が不便な他県とかは流石にきつい。
「五駅くらいじゃなかったかな?」
「俺借りたいんだけどダメか?」
即決以外なかった。条件が良すぎる。
「ええっ。いや、有難いんだけど本当にヤバいんだって。おれが言うのも何だけど、やめといた方がいいぞ」
「俺んとこの実家、神社だからそういうの見慣れてるし対処法も分かってるから平気だ。共存も可能。貸してくれると本当に本当に助かるんだけど親戚の人に交渉して貰えないか?」
「え、本気?」
赤嶺が訝しげに問いかけた。
「今すぐ引っ越したいくらいには本気だ」
真っ直ぐに正面から見据える。
自分で祓えるからとは言わなかった。視えない側の人間からの仕打ちは嫌と言うほど知っている。
「桜木がそこまで言うなら……」
「ありがとう。助かる!」
朝陽は思わず赤嶺の手を取って包み込む。赤嶺は仄かに頬を染めて固まっていた。
「おい朝陽。誰が生者まで誑《たらし》しこめと言った。お前、自分が俺の物だという自覚はあるのか?」
急に背後から将門に抱きしめられて、今度は朝陽が体を硬直させた。
「ごめん。ちょっとトイレに行ってくる」
急ぎ足で向かい、誰もいないのを確認してから朝陽は将門を振り返った。
「将門何で付いて来てんだよ!」
「散々やりまくったからな。へばってないか見に来ただけだ」
「あー、確かに手加減て言葉を知らない誰かさん達のせいで、死ぬほど腰とケツが怠いけど?」
「ほう、その抱かれまくった体で今度は生者に番を作る気か?」
「は? 何でそうなるんだよ。俺は普通に仕事しに来てるだけだ。変な事言うな」
「なら、誰これ構わずむやみやたらに触れるのはやめておけ。さっきの男のように道を踏み外しかける被害者が出るぞ」
「何だよそれ。意味わかんねーし。俺はもう仕事に戻る。話しかけても反応しないからな」
そこまで言われなきゃいけない理由も分からない。腹が立った朝陽は足早にその場を後にすると勤務に戻った。
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