【完結/BL】霊力チートのΩには5人の神格αがいる

架月ひなた

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第七話、暗転と亀裂

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◇◇◇


「ねえ朝陽遅くない?」
 キュウの言葉に全員顔を上げた。
 仕事でどれだけ遅くなろうと、朝陽は夜の八時には家に帰ってきていた。
 それがもう夜の十時を過ぎている。
「狐、朝陽のいる場所が分かるか?」
 将門からの問いに、キュウが視線を落とす。
「さっきからずっと同じ場所にいるんだよね。白い壁と天井に囲まれてる。だから動く乗り物に乗っている可能性は低い」
「そこは俺たちも入れそうか?」
「分からない。とりあえず行ってみよう」
 全員で移動し、朝陽の所へ向かう。
 朝陽は突き飛ばされて階段から落ちた後、救急病院に搬送されていた。
 皆がそこへ着いたのは、ちょうど手術が終わってひと段落した後だった。
「朝陽っ!」
 ベッドの横からオロが声を掛ける。
 しかし、朝陽の体はピクリとも動かない。
 そんな朝陽を見て、ニギハヤヒが口を開いた。
「おかしい。朝陽の魂が入っておらん」
「どういうことだ?」
「分からん。だが、相手の思念が残穢となって朝陽の体に巻きついている。気配を辿れば朝陽の元へ行けるかもしれんが……。複雑に絡み合っている故、下手すりゃ朝陽の体と魂を繋いでいる糸を切り兼ねん」
 ただこのまま待つ事しか出来ないのは歯痒すぎる。だが、現状ではそれが最適解だった。
「おかしいと言えば今いる家もそうだな。見つける度に潰してはいるが、カメラが十数台仕掛けられている」
「カメラ?」
 将門の疑問に対して、キュウが聞き返す。
「ああ。撮影用のカメラだ。朝陽と前に住んでいた部屋にあったものとは別の用途があるやつだ」
 それはストーカー被害に遭った時に仕掛けられた盗聴器の事だった。
 晴明とニギハヤヒが何かを考え込むように自らの顎に手をやる。
「それならそのカメラを設置した奴に朝陽は魂だけ連れて行かれたって事ない?」
「どうだろな。今いる家を朝陽に貸し出したのは普通の人間だ。確かに少しだけ感の強い所はあるが気弱な方だろう。室内にカメラを設置するなど考える性質に見受けられなかった。見張ってた限りでも、誰かと連絡を取ったり怪しい素振りも一切なかったしな。家を貸すように仕向けた人物と、朝陽を連れ出した奴らが手を組んでいる可能性の方が高い。どちらにしろ、朝陽が目を覚ましてから確認してみないと分からん」
「そうだね」
 それぞれがベッドに横たわる朝陽に視線を送った。



◇◇◇




 暗闇の中で朝陽の意識は揺蕩っていた。
 ぬるま湯に浸かっている様な妙な感覚が朝陽を緩く刺激している。急に視界が開けて、懐かしい風景が目に飛び込む。それは小学校低学年あたりの記憶だった。
 ——ああ、夢か。
 自分自身を第三者視点で見ているのに気が付いて、朝陽はそう思った。
『嘘つき、朝陽お前あっち行けよ!』
『俺は嘘なんてついてない!』
 生者と死者の区別がつくようになったのは小学校高学年辺りからだった。この頃はまだ区別が付かずに、よく周りに嘘つき呼ばわりされて、朝陽は虐めの対象になっていた。
『この村にはオレたち以外の子どもはいねえんだよ!』
 幼い頃からよく一緒に遊んでくれていた子が、死者か物怪の類いだと分かったのは、そんなやり取りがあったからだ。
 朝陽はそれ以来その子とよく遊んでいた裏山に行くのを辞めてしまった。
 ——キュウは人間じゃないのか?
 生者じゃないという事実が受け入れられなかった。
 どこか裏切られた気に勝手になって、朝陽は押し入れの中に篭るなりひっそりと泣いた。
 博嗣の前で泣くと余計な心配をかけてしまう。それが嫌だった。あと『また遊ぼうな』と自分で言っておきながら、嘘にしてしまった事を後悔もしていた。
 一度も嘘をつかずに生きていく事なんて無理に等しいのは分かっている。皆、大なり小なり嘘をついて生きているものだ。それでも朝陽は苦しかった。
 朝陽を嘘つき呼ばわりして弾き者にした村の子ども達も嘘で身を固めていなければ、己の固定概念すら無くなってしまうのを理解せずとも肌で感じ取っていた。だから自分自身を守る為に朝陽を攻撃した。それは朝陽とて同じで、自分を守る為に約束を反故にして記憶すら曖昧にしてしまった。
 ——ごめんキュウ、もう会わない。
『嘘つき』
 罵倒される声から逃げる様に両耳を手で塞いだ。〝嘘〟を吐いた自分と向き合うのが辛かった。また、そんな愚かな自分を認められなかった。
 蓋をした記憶に、また重ねて蓋をする。何もかも忘れるように。
 ——ああ、そうか。忘れる様に仕向けたのは俺だったんだ……。
 漸く思い出す事が出来た。
 また場面が変わり、朝陽は今度は何処かの校舎内にいた。
 高校生の時だ。朝陽に新しい友人が出来た。ちゃんとした人間だ。
 その男も霊が視えると言っていたから、同じ境遇にいるのが嬉しくて、朝陽は色々と素直に話してしまった。
 だが、相手が〝視える〟と言っていたのは実は嘘で、単に朝陽の気を引きたかっただけだったと言う事実を知る。朝陽が男からの交際を断ると、逆上した相手に今までの会話を含めて全てを第三者にバラされてしまった。
 その日からまた嘘つきだと笑われる日々が続いていく。朝陽はそれ以来、生きている人間との間に壁を作って、自ら歩み寄る事もやめてしまった。そこで意識は浮上した。



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