【連載中/BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

架月ひなた

文字の大きさ
15 / 25

15、誰!?

しおりを挟む


 夕食会が終わり、風呂を終わらせた後でベッドの上に腰掛けていた。
 風呂は無理やり別々に入ったからか、先程からグライトの機嫌が悪い。ホワイトタイガーの姿なので可愛い以外の何ものでもないけれど。
 手触りの良い毛を撫でて思いっきり一日が終わる楽しみの一つになりつつあるモフモフタイムを堪能する。

「グライトさ、もしかしてあの銅像が原因って分かっていたのか?」

 不機嫌なグライトに、何とか気を逸らさせようと銅像の話を持ちかけた。

「ああ。水は形を留めない流動質……とはいえ一定の通り道というのがある。それに対して、地面や銅像などの固定物はその場にしか留まれない。その水の通り道に銅像を建てたばかりに水の行き場所が無くなり、気の流れが悪くなっていたからな。そこを破壊してやれば元の流れに戻るというわけだ」

 ——なるほど。

 本当に喉が渇いただけで破壊した訳ではないと知り感心した。

「お前って凄いよな。崖の時も今回の事もあれって魔法? それとも川の時に言ってた五大元素がどうのってやつ?」
「俺……」

 グライトが深くため息をついて、一度言葉を切った後に続ける。

「この際だからハッキリ言っておくぞ。お前は勘違いをしている。崖の時も昼間も流してやったが、あれは俺がやったんじゃなくて千颯お前だぞ。お前は精霊術師として抜きん出ているばかりかそれ以上だ。まさか元素そのものを扱えるとは思ってもみなかった。この短時間で使ったのは風と水。もしかしたら他も使えるかもしれんな」

 顎を撫でてやるとグライトが気持ち良さそうにグルルと喉を鳴らした。

「オレ? いやいやいやいや、それこそ勘違いじゃないか? オレにそんな力はないよ。ただの一般市民だし」
「これだから無自覚は困る。とにかく俺じゃない。その内嫌でも認めさせてやるから楽しみに待っていろ」

 困るのはこっちだ。ホワイトタイガーの姿でも、グライトが目を細めて不敵に笑うと雰囲気イケメン臭がたち込めていて眩しい。眼福どころか目に毒だ。モフモフで可愛い筈なのに……。

「グライトはモフモフの方が可愛いぞ?」
「突然何の話しだ」
「なんかこう……今はイケメン臭がすると言うか……爆発しろ……間違えた。目が痛いというか、もう色々とさ、勘弁してください」
「千颯の言葉は時折り良く分からん。お前の言葉を借りれば、俺は今そのモフモフとやらの姿だと思うが?」

 ふふん、と鼻を鳴らされる。

「そうなんだけどさ」
「何だ?」

 吐息混じりにグライトの首に抱きつく。

「まあ、いいや。今日はもう寝よう?」
「そうだな」
「おいで、グライト。今日はお詫びと褒美も兼ねてたくさんマーキングしていいぞ」

 そう言うとグライトが無言のまま見つめてきた。真意を探ろうとしているのか瞬きもせずに見つめられる。

「どうかしたのか?」
「いや……」
「あ、でも食用みたいに齧ったり食べたりするのは無しな。痛いのも血も嫌いだ」
「……」

 急に黙り込んでしまったグライトがそっぽ向いたまま目を閉じる。

「あれ? マーキングしなくて良かったのか?」
「したい時にする」

 ——え、何それ。俺さまツンデレ様?

 ツンが九割だけれど。
 存外に気分屋らしい。「おやすみ」と言葉をかけると程よい眠気に誘われ、赴くままに同じように目を閉じた。
 朝になり、紅点どころか紫色に変色した鬱血痕が上半身に数えきれないほどあるのが分かって「やり過ぎだ!」とグライトを叱る羽目になったが……。





 ***




 二日後、厚意にずっと甘えているわけにもいかなくてグライトと村を出た。
 途中いくつかの村や街を通って野宿したり、宿に泊まったりと繰り返す。この世界に来て、二週間近く経過しているので野宿もだいぶ慣れてきていた。

 ——こういう自由気ままな暮らしも楽しいかもしれない。

 グライトがいるので心細くはないし、現在逃亡中の身ではあるが、こんな風に旅をする事がなかったので全てが新鮮にうつった。拠点を持たない生活も中々いいものである。
 チラリと視線を上げてグライトの顔を窺い見た。
 あんなにマーキングマーキング言っていたグライトが必要最低限の接触しかして来なくなったからだ。こうして肩を並べて歩いていても、初めの頃より少しだけ距離が空いている気もする。

 ——どうかしたのかな?

「グライトさ、最近マーキングしなくなったよな。アレは契約して初めだけの儀式みたいものだったのか?」
「いや…………そうでもない」
「?」

 歯切れの悪い回答に首を傾げる。ここのところこんな調子でどこか様子がおかしい。

 ——知らない内にオレが何かしたとか?

 少し心配になってきて、何かあったっけ? と逡巡する。

「あのさ、もしかしてオレなんかした? やらかしてるんなら言って欲しい。オレ、人の気持ちとかそういうのに疎くて……分からないから」

 ニホンにいた時がそうだった。
 一生懸命仕事を覚えようとこなしている内に、嫌味を言われているのにも気が付かずに受け答えしていたみたいだ。ヘラヘラしていた結果部内の雑用係みたいなポジションになってしまい仕事を押し付けられ始めた。
 気まずくて俯きがちに言葉を紡いでからもう一度グライトを見る。すると真摯な眼差しと視線が絡む。

「千颯は何もしていない。ただ俺が物思いに耽っていただけだ。気にせずに千颯は千颯の思うままにすればいい」

 フワリと笑みを浮かべられる。久しぶりに見たグライトの笑顔に何故か心音が跳ねた気がした。

「そっか! それなら良かった」

 心底ホッとして同じように笑みを浮かべる。

「あ。グライト、次の街が見えてきたぞ!」
「そうだな」

 次の街も中々華やかそうだ。
 今までは西洋のような街並みだったが、今度の街はどこか中華っぽいイメージがある。色彩的に赤が似合いそうで、初めて見る雰囲気を放つ道や壁、建物を遠目ながらも興味津々に眺めた。

 ——うわ、なんか凄い楽しみだ。

「あれ~? ちはや? ちはやじゃん!! 嘘、何でこの世界にいるの?」
「え……?」

 期待に胸を膨らませていると、唐突に背後から声がして、思いっきり抱きしめられてしまう。体格差があるのか声の主の体重を支えきれずに思いっきりつんのめってしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...