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15、誰!?
しおりを挟む夕食会が終わり、風呂を終わらせた後でベッドの上に腰掛けていた。
風呂は無理やり別々に入ったからか、先程からグライトの機嫌が悪い。ホワイトタイガーの姿なので可愛い以外の何ものでもないけれど。
手触りの良い毛を撫でて思いっきり一日が終わる楽しみの一つになりつつあるモフモフタイムを堪能する。
「グライトさ、もしかしてあの銅像が原因って分かっていたのか?」
不機嫌なグライトに、何とか気を逸らさせようと銅像の話を持ちかけた。
「ああ。水は形を留めない流動質……とはいえ一定の通り道というのがある。それに対して、地面や銅像などの固定物はその場にしか留まれない。その水の通り道に銅像を建てたばかりに水の行き場所が無くなり、気の流れが悪くなっていたからな。そこを破壊してやれば元の流れに戻るというわけだ」
——なるほど。
本当に喉が渇いただけで破壊した訳ではないと知り感心した。
「お前って凄いよな。崖の時も今回の事もあれって魔法? それとも川の時に言ってた五大元素がどうのってやつ?」
「俺……」
グライトが深くため息をついて、一度言葉を切った後に続ける。
「この際だからハッキリ言っておくぞ。お前は勘違いをしている。崖の時も昼間も流してやったが、あれは俺がやったんじゃなくて千颯お前だぞ。お前は精霊術師として抜きん出ているばかりかそれ以上だ。まさか元素そのものを扱えるとは思ってもみなかった。この短時間で使ったのは風と水。もしかしたら他も使えるかもしれんな」
顎を撫でてやるとグライトが気持ち良さそうにグルルと喉を鳴らした。
「オレ? いやいやいやいや、それこそ勘違いじゃないか? オレにそんな力はないよ。ただの一般市民だし」
「これだから無自覚は困る。とにかく俺じゃない。その内嫌でも認めさせてやるから楽しみに待っていろ」
困るのはこっちだ。ホワイトタイガーの姿でも、グライトが目を細めて不敵に笑うと雰囲気イケメン臭がたち込めていて眩しい。眼福どころか目に毒だ。モフモフで可愛い筈なのに……。
「グライトはモフモフの方が可愛いぞ?」
「突然何の話しだ」
「なんかこう……今はイケメン臭がすると言うか……爆発しろ……間違えた。目が痛いというか、もう色々とさ、勘弁してください」
「千颯の言葉は時折り良く分からん。お前の言葉を借りれば、俺は今そのモフモフとやらの姿だと思うが?」
ふふん、と鼻を鳴らされる。
「そうなんだけどさ」
「何だ?」
吐息混じりにグライトの首に抱きつく。
「まあ、いいや。今日はもう寝よう?」
「そうだな」
「おいで、グライト。今日はお詫びと褒美も兼ねてたくさんマーキングしていいぞ」
そう言うとグライトが無言のまま見つめてきた。真意を探ろうとしているのか瞬きもせずに見つめられる。
「どうかしたのか?」
「いや……」
「あ、でも食用みたいに齧ったり食べたりするのは無しな。痛いのも血も嫌いだ」
「……」
急に黙り込んでしまったグライトがそっぽ向いたまま目を閉じる。
「あれ? マーキングしなくて良かったのか?」
「したい時にする」
——え、何それ。俺さまツンデレ様?
ツンが九割だけれど。
存外に気分屋らしい。「おやすみ」と言葉をかけると程よい眠気に誘われ、赴くままに同じように目を閉じた。
朝になり、紅点どころか紫色に変色した鬱血痕が上半身に数えきれないほどあるのが分かって「やり過ぎだ!」とグライトを叱る羽目になったが……。
***
二日後、厚意にずっと甘えているわけにもいかなくてグライトと村を出た。
途中いくつかの村や街を通って野宿したり、宿に泊まったりと繰り返す。この世界に来て、二週間近く経過しているので野宿もだいぶ慣れてきていた。
——こういう自由気ままな暮らしも楽しいかもしれない。
グライトがいるので心細くはないし、現在逃亡中の身ではあるが、こんな風に旅をする事がなかったので全てが新鮮にうつった。拠点を持たない生活も中々いいものである。
チラリと視線を上げてグライトの顔を窺い見た。
あんなにマーキングマーキング言っていたグライトが必要最低限の接触しかして来なくなったからだ。こうして肩を並べて歩いていても、初めの頃より少しだけ距離が空いている気もする。
——どうかしたのかな?
「グライトさ、最近マーキングしなくなったよな。アレは契約して初めだけの儀式みたいものだったのか?」
「いや…………そうでもない」
「?」
歯切れの悪い回答に首を傾げる。ここのところこんな調子でどこか様子がおかしい。
——知らない内にオレが何かしたとか?
少し心配になってきて、何かあったっけ? と逡巡する。
「あのさ、もしかしてオレなんかした? やらかしてるんなら言って欲しい。オレ、人の気持ちとかそういうのに疎くて……分からないから」
ニホンにいた時がそうだった。
一生懸命仕事を覚えようとこなしている内に、嫌味を言われているのにも気が付かずに受け答えしていたみたいだ。ヘラヘラしていた結果部内の雑用係みたいなポジションになってしまい仕事を押し付けられ始めた。
気まずくて俯きがちに言葉を紡いでからもう一度グライトを見る。すると真摯な眼差しと視線が絡む。
「千颯は何もしていない。ただ俺が物思いに耽っていただけだ。気にせずに千颯は千颯の思うままにすればいい」
フワリと笑みを浮かべられる。久しぶりに見たグライトの笑顔に何故か心音が跳ねた気がした。
「そっか! それなら良かった」
心底ホッとして同じように笑みを浮かべる。
「あ。グライト、次の街が見えてきたぞ!」
「そうだな」
次の街も中々華やかそうだ。
今までは西洋のような街並みだったが、今度の街はどこか中華っぽいイメージがある。色彩的に赤が似合いそうで、初めて見る雰囲気を放つ道や壁、建物を遠目ながらも興味津々に眺めた。
——うわ、なんか凄い楽しみだ。
「あれ~? ちはや? ちはやじゃん!! 嘘、何でこの世界にいるの?」
「え……?」
期待に胸を膨らませていると、唐突に背後から声がして、思いっきり抱きしめられてしまう。体格差があるのか声の主の体重を支えきれずに思いっきりつんのめってしまった。
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