『婚約破棄されたので冷徹公爵と契約結婚したら、徐々に甘くなってきた件』

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第七章 第二王子と第四王子

【第91話:最強の館と、最弱の王子】

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 ノクターンの朝は、軍のように早い。

 わたくしは少し遅れて中庭へと出ると、そこにはすでに“異変”が始まっておりました。

「――暗黒魔人ルネ! この魔王ジーク=ダークネス=グランベールが、編み出した"最強魔王超絶剣技"を受けてみるがよい!」

 大声で叫びながら、ぐいっと右腕を突き出す少年。
 
 それは、ノクターンに来て三日目のジークフリート王子その人。

 漆黒のマント(実は執務室のカーテンをこっそり流用)を翻し、眼帯までつけて、今朝はさらに“魔王度”が増していました。

「……今日は一段と拗らせた格好してんな」

 ルネが木刀を肩にのせて、眉間に皺を寄せる。

「フッ、これが真の我だ。いざ尋常に勝負――」

 言い終わる前に、ジークはマントの裾を自分の足で踏んで、見事に前のめりに転倒しました。

「ぬぉわぁぁあっ!」

「……」

「わ、我は無傷……ふ、ふふ、これも演出だ。油断させるための!」

(だいぶ盛大に鼻をぶつけてらっしゃるのですけれど……?)

 おそるおそる近づくわたくしに、ルネはぽつりと一言。

「木刀、握る前に倒れた奴は初めて見たな」

 その後サクッと返り討ちに遭い退散していきました。

 その日のうちに、ジークは次なる挑戦へ。

「レオポルドよ! 我と勝負をするのだ! 魔王の血が……たぎっておる!」

 レオポルドが元気よく「了解ですっ!」と答え、ふたりは庭の周囲を走る“持久力試合”に突入しました。

 ……開始から一分で、ジークはゼェゼェと音を立てて膝に手をつき、

「……ま、待て、我の……魔力が……(酸素が)」

 対してレオポルドは、じんわりと汗をかきながらも満面の笑顔で振り返ります。

「ジーク王子っ、あと十周ですよっ!」

「十っ……? ま、まて、それは魔族の修行か何かか……?」

 すでに瞳がうるんでいます。

 なんとか十周走り終えた頃には息も絶え絶えといった様子でした。
 
 さらにその後、ジークはアレクに捕まり"魔王的詠唱呪文日記"にダメ出しをされていました。

「その演技、“闇の業火に焼かれし悲哀の咆哮”というには……魂の震えが足りぬっ!」

 アレクは、頭上でぐるりとバチュン!とマントを回して、芸術的にダメ出し。

 ジークの唇がぴくぴく震えます。

「……何故だ?!なんか闇の業火とか咆哮とかカッコイイだろ!!」

 極めつけはミレオとの会話。
 
 “哲学勝負”という名目で、ジークが得意げに思春期真っ盛りの質問を投げかけます。

「ミレオ殿!!“生きる”って何だと思う?」

「……うーむ、難しいこと聞くね……」

「先に断っておくけど、あくまで個人的な意見でいいかい?」

「うむ。もちろんだ!どんな意見でも魔王的に受け止めてやろう!」

「なら、僕の個人的な意見を言わせてもらうと"生きるとはきっと知ること"だと思うよ」

「生きるって経験の連続でしょ?」

「う、うん」

「何かをしても、しなくても。途中で辞めても、やり切っても。そこまでの経験は知れるでしょ?だったら"知るために生きる"ならすべて目的達成じゃない?」

「途中でやめても?無駄じゃないの?」

「そうだと思うよ。ただ初めては一回しかないからどの終わりを知りたいかは選ばないといけないかもね」
 
 ミレオが優しく笑うと、ジークの肩がストンと落ちました。

「……今のもダメだったのだな……」

(……あくまでも一意見であって諸説ありますわね……)

 こうして、挑戦一日目。
 
 ジーク=ダークネス=グランベール殿下は、ノクターンのメンバー相手に――全敗でございました。

 でも、ほんの少しだけ。
 
 彼の目に浮かんだ光が、わたくしには――なぜか、愛おしく見えたのです。

(さて、次はどんな勝負を仕掛けるおつもりかしら?)

 中庭の敗北ラッシュから逃げるようにして、ジークはわたくしに向かいこう言いました。

「も、もう今日はこれで十分だ……! 我の魔力ゲージが尽きた……」

 ……いいえ、それはただの体力切れですわよ、ジーク。

 とはいえ、挑戦はまだ続くようで――

「セシリア! 我はついに見つけたのだ! 真に比べるべきものは“頭脳”にこそあると!」

 わたくしは肩越しに微笑みました。

「まぁ、それは素晴らしいご判断ですわね。では、お相手は……」

 視線を移す先には、掃除用具を抱えた小柄な少年の姿。
 
 ノクターン家の見習い執事、トーマス。

「君だ! 覚悟するがよい、少年! 我が“禁断の知識(カンニングなしの勝負)”をもって相手をしてやろう!」

「は、はい……!?」

 案の定、指名されて困惑しているようです。

 けれど、彼はトーマス。

 セシリア塾第一期生(?)であり、努力の申し子。
 
 見かねたわたくしは、控えめに声をかけました。

「トーマス、少しだけお時間を。ジーク様と“簡単ななぞなぞ対決”をしてくださるかしら?」

「……はいっ、奥方様のお願いでしたら」

 そうして始まった“異色の知略戦”。
 
 テーマはなぞなぞ。
 
 まさかの両者互角の応酬で、周囲の騎士たちがざわめきます。

「目は4。鼻は9。では口はいくつか?!」

「……それは……味覚(三覚)で3?」

「む、見事だ!」

「ジーク様もすごいです、魚釣りが好きな人が気にしているアクセサリーはなんでしょうか?……」

「ぬ?……チョーカー(釣果)だ!!」

 まさかの賢いジーク、爆誕。

 最初はガタガタと緊張していたトーマスも、次第に表情を引き締め、勝負は白熱していきました。

 最後の問題は――

「“たたいたり、はいたりすると立つもの”とは?」

「……む?なかなかの問題だな……?」

「リリーわかった!!ホコリだよ!!」

「フッ……まさか、おぬし、なぞなぞの心得があるのか……!」

「奥様、リリーすごい?」

「えぇ、とってもお利口さんね」

「うひひ、にぃに!ほめられたよ!!」

「うん、よかったね」

 最終的には、両者ともに全問正解。
 
 その場にいたミレオが「これは引き分けかな」と言ってくれたことで、決着となりました。

「……おぬし、只者ではないな……」

 ジーク様が感心したように呟くと、トーマスは戸惑いながらも、嬉しそうに微笑んで――

「は、はい……ありがとうございます、ジーク様……」

(……なんだか、とても良い雰囲気ですわね)

 それは、わたくしが今までに見たことのない“穏やかなジーク”でした。

 無理に虚勢を張ることもなく、ただ素直に認めて、笑う。
 
 ほんの少しだけですが――彼の中の“鎧”が、剥がれ落ちたのでしょう。

(ふふ……その調子ですわ、ジーク)

 ◇
 
 その日の午後、ノクターン邸の裏庭では“お遊び”と称された、やや本気の「アスレチックレース」が始まっておりました。

 企画者はレオポルド。対象年齢は五歳から十五歳。
 
 コースにはミレオ特製の「安全なぬかるみ」や、アレクがデザインした「美しさも兼ね備えた障害物(芸術的に意味不明)」まで配置され、全体的にカオスな仕上がりとなっております。

「スタートです!」

 トーマスが笛を吹き、ジークとリリーが同時に飛び出しました。

 リリアナ・ストリングス嬢――御年三歳とは思えぬ脚力と跳躍力で、第一障害の“ゴロゴロ丸太”を軽々と飛び越えます。

 対するジーク様はといえば、

「ふははははっ、我の魔王的運動神経、今こそ目覚め――うおっ!?」

 案の定、顔から滑って土まみれに。

「リリーかっちゃうもんねーっ!」

 そのまま次のアスレチックへリリーが駆けていきます。

 ジークは顔を拭いながら立ち上がります。

「ぬぅ……よかろう、我の底力、今こそ見せるときっ!」

 何がどうしたのか、突然加速するジーク。

 第二障害、アレクの謎オブジェ(タイトル:『風に舞う幻想』)を“風情皆無”の勢いでぶち抜き、ラストスパートに突入。

 最終地点の鐘を鳴らしたのは――

「ふははははっ! 勝った! 我が勝利したぞぉぉおおっ!!」

 ジーク、三歳相手についに初勝利。

 ……その瞬間。

「え、えぐっ……うわあああああんっ!」

 後ろで、リリーがしゃがみこんで号泣しておりました。

「っ、な、なぜだ!? 勝ったのは我! 悪くないのは我なのにっ!!」

 明らかに動揺しまくるジーク殿下。

 その顔は勝利の余韻どころか、今にも泣きそうでございます。

「ど、どうすれば……な、泣き止め……そ、そなたの魔力が不安定だったのか? 我のオーラにやられたのかっ……!?」

(ちがいます。単純に“負けて悔しかった”だけです)

 わたくしが慰めようとリリーに向かおうとした時

「ど、どうすればいい?」

 と、狼狽えるジークに対してピタリと泣き止みリリーが言います。

「リリーのけらいになって!」

「リリーそれはダメだよ」

 と、トーマスが慌ててとめます。

「じゃあ、なかま!!」

「う、うむ。それならばよかろう。ならばトーマスとリリーは我の四天王の座を与えてやろう!!」

「えっ?!僕も!!?」

 驚くトーマスを尻目にリリーは大喜びです。
 
「じゃあ、リリーはおひめさまやるー!」

 泣き止んだリリーが、満面の笑みでジークに抱きつきました。

「きょうからリリーのまおーさまなの!」

「な、なにっ!? 我はみんなの魔王になる予定なのだが……? これが噂の束縛系か……!?」

「……三歳相手に何言ってんだ」

 とあきれ顔のルネ副団長。

「モテモテとはこういうことかーーっ!!」

 周囲、爆笑。

 わたくしはそっと額を押さえつつ――でも心の奥で、なんだかあたたかなものが芽吹いた気がいたしました。

(あなた、今日だけでどれだけ大事な“負け”と“勝ち”を覚えたのかしらね)

「……なぁ、セシリア」

 勝利(?)から数時間後、夕陽に染まる中庭で、ジークがぽつりと呟きました。
 
 その顔には、疲労と混乱と、少しだけ――希望のようなものが混ざっています。

「なぜ、みんな怒らないのだ? 失敗ばかりだったのに……我は、“王族”なのだぞ?」

 思わず足を止めたわたくしの横で、ジークは真剣な瞳をしていました。

「王宮では、こんなことをすれば“愚か者”だと笑われる。父上も母上も、兄たちも、誰も本気で我を見ようとしなかった」

 小さな手が、芝をつかみます。

「でも……今日は、違った。我の失敗に、本気で付き合ってくる奴らばかりだった。怒らず、見下さず、ただ――ついてきた」

「……どうしてだ?」

 わたくしは、そっと腰を落とし、隣に並びました。

「それがノクターン家だから、ですわ」

 ジークがわたくしを見る。

「ノクターン家は、“育てる”ことに本気なのです。だから、失敗は許される。でも、“諦めること”だけは許されません」

 ちょうどそのとき、庭の隅からルネ様の低い声が響きました。

「――魔王様よ。泣き言は、あと十本、剣を振ってからにしろ」

 ジークの肩が、びくんと跳ねます。

「な、なぜだっ! 今日はもう我の体力は風前の灯なのだぞっ!?」

「その火は、薪を足せばまだ燃える。さぁ立て」

 ルネ様の冷淡な言葉は、なぜかそのまま“信頼”のように響きます。
 
 彼は、どんな者に対しても、やるべき努力を惜しみません。

「我は魔王だぞ!? 王子だぞ!? その我に、まだ鍛錬を強いるのか!?」

「――貴様が“本物の魔王”になる気があるならな」

 言い切ると同時に、木刀が放られました。
 
 反射的にそれを受け止めたジーク様の手が、ぐらつきながらも――止まりませんでした。

「……これが、真の魔王になるための修行か……」

 夕陽の光に照らされて、彼の顔に影がさします。

「ふ、ふふふ……面白いじゃないか。いいだろう! 見ておれ、ノクターン家よ! 我が新たなる“覇道”の第一歩、ここに刻まれたっ!」

 ……そして、その直後。

「うぎゃああああっ! う、腕が、腕がああぁ、つったぁぁ!!」

 いつものジークに戻りました。

 わたくしは、くすりと笑いながら立ち上がりその姿を、少しだけ誇らしく見つめたのでございます。

(さぁ、“真の魔王”教育の始まりですわ)
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