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夜食
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「お腹すいたな……」
薄暗い廊下を歩きながらシアはぽつりと独り言を漏らす。
時間帯はとっくの深夜に回っているが書類仕事がなかなか終わらず、気分転換に軽く食事しようと厨房までやってきた。
業務用魔導冷却保存庫──通称『魔冷蔵庫』を開けて食材を漁る。
「……お!」
奥に立派な肉の塊が置かれてあった。
「鶏肉かぁ……」
真っ先に唐揚げが頭に浮かんだ。しかし──。
『こんな深夜にカロリーの高いものを食べたら体に悪いよ!』
良心の自分がそう警告する。
『良いじゃん良いじゃん!お腹空いているんだし好きに食べたって!』
悪心の自分がそう誘惑にかける。
『大体吸血鬼は血が栄養なんだからそんなもの食べたって意味無いじゃないか!』
『美味しければ栄養なんて関係ないんだよ!!』
シアは鶏肉を取り出すと、贅沢に一口大に切り分けていく。
『まだやる事が残っているのに脂っこいもの食べたら胃もたれしちゃうよ!』
『胃もたれ上等!快楽を前に誰も逆らえないんだ!』
砂糖、醤油、味醂、おろし生姜を纏めて混ぜて少しの間だけ寝かせる。
『軽くお腹を満たしたいなら雑穀スープで良いじゃないか!』
『誰があんな低カロリーで味気ないもの食べるか!』
少し寝かせたお肉を卵、片栗粉に付けていざ油へ投入。
ジュワ~という音と共に芳醇な香りが鼻腔を刺激する。
『やっぱり深夜に体に悪い食べ物はダメだ!』
『くどい!体に悪い食べ物こそ至高!』
カラッと揚げた唐揚げをお皿に乗せて豪快にマヨネーズを掛ける。
カロリーは最高の調味料。カロリーは人生の喜び。
唐揚げを一口で頬張るとカリッとした食感と共に肉汁が溢れてくる。
生姜醤油の風味が油っ気を中和して絶妙にマッチしてとても美味しい。あっという間に一個平らげてしまい二個目に手を伸ばす。
ああ……止まらない!!
「はっ!?」
厨房の入り口にいつの間にかフィドゥが立っていた。
「あ、兄上、どうしてここに…!?」
「いや…腹が減ったから軽く食事をと思って。……まぁ、料理した事ないから生肉をちょっと……」
「流石兄上、夜食がワイルド過ぎる」
人狼種は基本肉食獣である。ので、生で血肉を喰らうのはなんら問題。あくまで王としての体裁の為にマナーを守っているだけで。
「兄上も食べる?」
「良いのか?」
「多めに作ったからね」
揚げたての唐揚げをフィドゥに差し出す。
香ばしい揚げたての匂いが鼻腔とお腹を的確に刺激してくる。
肉に齧り付くとカリッとした食感と共に肉汁が溢れてくる。噛むたびに肉の旨みがじんわりと舌の上に広がり、次いで生姜の風味と醤油の味付けが口の中に広がる。
「どう?」
「うま……」
「ふふ。良かった。……あ~、これでレモンサワーがあればな~」
「まだ仕事が残っているんだから流石にアルコールは控えろ」
「分かってるよそれぐらい」
「酒は作れんが、レモネードぐらいだったら作れるぞ」
「じゃあそれで我慢するか」
ササッとレモネードを作ってシアに手渡す。そして乾杯して再び唐揚げに齧り付いた。
「はぁ……。なんで深夜のカロリー飯はこんなに美味いんだろうな」
「そうだねぇ…やっぱり背徳は蜜の味なんだよ」
軽く雑談を交わしながら次々唐揚げを平らげていく。
本当は一人で唐揚げを食べるつもりであったが、やはり最愛の兄と共に食べる夜食の方が数段美味しかった気がした。
「ふふ。たまには二人だけでこっそり夜食を食べるのも良いね」
「そうだな。機会があったらまた」
仲睦まじく身を寄せながら、二人は厨房を後にするのだった。
薄暗い廊下を歩きながらシアはぽつりと独り言を漏らす。
時間帯はとっくの深夜に回っているが書類仕事がなかなか終わらず、気分転換に軽く食事しようと厨房までやってきた。
業務用魔導冷却保存庫──通称『魔冷蔵庫』を開けて食材を漁る。
「……お!」
奥に立派な肉の塊が置かれてあった。
「鶏肉かぁ……」
真っ先に唐揚げが頭に浮かんだ。しかし──。
『こんな深夜にカロリーの高いものを食べたら体に悪いよ!』
良心の自分がそう警告する。
『良いじゃん良いじゃん!お腹空いているんだし好きに食べたって!』
悪心の自分がそう誘惑にかける。
『大体吸血鬼は血が栄養なんだからそんなもの食べたって意味無いじゃないか!』
『美味しければ栄養なんて関係ないんだよ!!』
シアは鶏肉を取り出すと、贅沢に一口大に切り分けていく。
『まだやる事が残っているのに脂っこいもの食べたら胃もたれしちゃうよ!』
『胃もたれ上等!快楽を前に誰も逆らえないんだ!』
砂糖、醤油、味醂、おろし生姜を纏めて混ぜて少しの間だけ寝かせる。
『軽くお腹を満たしたいなら雑穀スープで良いじゃないか!』
『誰があんな低カロリーで味気ないもの食べるか!』
少し寝かせたお肉を卵、片栗粉に付けていざ油へ投入。
ジュワ~という音と共に芳醇な香りが鼻腔を刺激する。
『やっぱり深夜に体に悪い食べ物はダメだ!』
『くどい!体に悪い食べ物こそ至高!』
カラッと揚げた唐揚げをお皿に乗せて豪快にマヨネーズを掛ける。
カロリーは最高の調味料。カロリーは人生の喜び。
唐揚げを一口で頬張るとカリッとした食感と共に肉汁が溢れてくる。
生姜醤油の風味が油っ気を中和して絶妙にマッチしてとても美味しい。あっという間に一個平らげてしまい二個目に手を伸ばす。
ああ……止まらない!!
「はっ!?」
厨房の入り口にいつの間にかフィドゥが立っていた。
「あ、兄上、どうしてここに…!?」
「いや…腹が減ったから軽く食事をと思って。……まぁ、料理した事ないから生肉をちょっと……」
「流石兄上、夜食がワイルド過ぎる」
人狼種は基本肉食獣である。ので、生で血肉を喰らうのはなんら問題。あくまで王としての体裁の為にマナーを守っているだけで。
「兄上も食べる?」
「良いのか?」
「多めに作ったからね」
揚げたての唐揚げをフィドゥに差し出す。
香ばしい揚げたての匂いが鼻腔とお腹を的確に刺激してくる。
肉に齧り付くとカリッとした食感と共に肉汁が溢れてくる。噛むたびに肉の旨みがじんわりと舌の上に広がり、次いで生姜の風味と醤油の味付けが口の中に広がる。
「どう?」
「うま……」
「ふふ。良かった。……あ~、これでレモンサワーがあればな~」
「まだ仕事が残っているんだから流石にアルコールは控えろ」
「分かってるよそれぐらい」
「酒は作れんが、レモネードぐらいだったら作れるぞ」
「じゃあそれで我慢するか」
ササッとレモネードを作ってシアに手渡す。そして乾杯して再び唐揚げに齧り付いた。
「はぁ……。なんで深夜のカロリー飯はこんなに美味いんだろうな」
「そうだねぇ…やっぱり背徳は蜜の味なんだよ」
軽く雑談を交わしながら次々唐揚げを平らげていく。
本当は一人で唐揚げを食べるつもりであったが、やはり最愛の兄と共に食べる夜食の方が数段美味しかった気がした。
「ふふ。たまには二人だけでこっそり夜食を食べるのも良いね」
「そうだな。機会があったらまた」
仲睦まじく身を寄せながら、二人は厨房を後にするのだった。
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