ある魔王兄弟の話し

子々々

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酔っ払いの理由※

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「兄上ぇ、足舐めて?」
「…………」

白磁の肌をほんのり朱色に染めながら、シアはご機嫌に足をフィドゥに突き出した。
シアは珍しく酔っていた。
就寝の準備をしていた時、突然ドアを破壊してフィドゥの寝室に侵入してきた。
いきなりの暴挙もそうだが、普段深酒しない弟がここまで酔っぱらうなんて珍しい。
シアは酒に強い、というわけではないが、飲む量を自分できちんと決めているので泥酔することはないのだが。
寝ようとしていたフィドゥをベッドから引き摺り下ろし「おすわり!兄上おすわりだよ!」と床に座る事を強要されて大人しく従ったらこれである。

「……お前がここまで酔っ払うなんて珍しいな」
「酔ってなんかいないよ私はぁ!」
「嘘つけ!めちゃくちゃ酒臭いぞ!一体どれくらい空けたんだ!?」
「知らなーい」

そう言いながら爪先でフィドゥの顎を撫でてから喉仏までつう、と滑らせる。

「っ……何があったんだ?」
「さぁ、何があったんだろうね」

そう言いながら唇に爪先を押し当ててきた。

「…………」

フィドゥは観念して口を開け、親指に舌を絡ませた。
指の形も爪の形も綺麗に整えられ、ほんのりと甘い香りがする。指の腹を舌でくすぐるように舐めると、シアはふふ、と満足そうに笑った。
そして満足したのか、ゆっくりと指を引き抜く。
引き抜いた親指にはフィドゥの唾液が絡みついていた。それをうっとりと眺める。今度は人差し指を同じようにしゃぶる。
ちゅぷちゅぷと音を立てて舐めながら目線だけを上げるとシアの表情は恍惚に満ちていた。
それから中指、薬指、小指と一本一本丁寧に舐め上げていく。
自分の命令に従って熱心に足を舐め続けるフィドゥを見て満足そうに微笑んだ。
そして口から引き離すと、今度はそのままフィドゥの股間に足を置いた。

「っ……おい、シア」

慌てて止めようとするが、シアは足裏に感じる確かな昂りにうっとりしながらぐりぐりと刺激を与え始めた。

「おい待て……ぐぅっ!?」

止めようとシアの足を掴むが、足指で服の上から屹立を挟まれてしまう。
そしてそのまま器用に足の指を使って刺激を与え続ける。
何度も踏みつけるような動作を繰り返しつつ、親指で時折揉むように動く。
足裏全体ですり潰すような動きにフィドゥは歯を食いしばって堪えていた。
やがて先走りの液でズボンがすっかり濡れてしまっている。
脱ぎたいが、そうすると多分機嫌を損ねてしまう。

「ん、ふ、くぅ……」

フィドゥが必死に耐えている姿を見てシアは恍惚の表情を浮かべた。
そして足の親指と人差し指で屹立を挟み込みそのまま器用に上下に擦りあげる。
先走りが潤滑油となってスムーズに動く足指によって与えられる刺激に、ついに耐えきれずフィドゥは射精してしまった。ズボンを穿いているので、まるで粗相したかのように汚れてしまった。

「あはは!兄上がお漏らししたぁ!」

そう言って腹を抱えて笑うシアに、フィドゥは溜め息を漏らす。

「兄上!もっともっと気持ち良くしてあげる!」

そう言って、今度は直でフィドゥの屹立を両足で揉み始めた。敏感になった屹立に直の刺激は強すぎた。
思わず嬌声をあげてしまいそうになり、唇を噛み締めて堪える。
その様子を見てシアは益々上機嫌になって手の動きを速めた。
先走りと精液で濡れそぼった屹立をにゅちにゅちと音を立てて揉みしだく。時折足指で挟み込むようにして上下に擦りあげると面白いくらいにフィドゥの腰が跳ね上がった。
そしてあっという間に果ててしまった。
フィドゥの荒い息が部屋に木霊する。

「兄上。足を綺麗に舐めとって。出来たらご褒美あげる」

そう言って、精液塗れの足を再び口元に寄せる。
自分が吐き出した精液を舐めるのには抵抗がある。しかし、すっかり快楽で思考は溶かされ、ご褒美という言葉に抗えず足に纏わりつく白濁を舐め始めた。苦くて、青臭くて、とても美味しいとはいえないそれを丁寧に舐めとっていく。
シアの白い足裏にも舌を這わせて綺麗にする。足の甲から指先まで丹念にしゃぶると、シアは満足そうに微笑んだ。

「良く出来ました。じゃあ、約束通りご褒美あげる」

するりと、自ら服を脱ぐ。白い裸体を何の惜しげもなく晒し、無防備なままベッドの上で横になる。

「おいで?兄上」

フィドゥは勢いのままにシアの上にのしかかった。
はぁはぁと興奮を隠す事なく荒い呼吸を繰り返すフィドゥにシアが微笑みかける。その表情はまるで聖母のように美しく慈愛に満ちていた。だがその瞳の奥に有るのは慈悲ではなく、絶対的な支配だった。その支配に従い、フィドゥはシアの唇にそっと口づけをする。軽く触れ合うようなキスを繰り返していく内に自然と舌を絡めとっていく。
ぴちゃぴちゃと水音を立てながら互いの唾液を交換しあう。口端から銀色の糸を引いて唇が離れるとそのまま首筋から鎖骨へと舌を移動させる。そして胸の飾りにしゃぶりつき、もう片方を指で摘まんだりするが、シアは何一つ抵抗しない。
それどころか胸の刺激に小さく喘ぐ。
ふと、シアの股間を見るとそこは興奮の兆しを示していた。
その事に気が付くとフィドゥは迷わずそれを口に含んだ。
突然の行動に流石のシアも驚いて声を上げるが、すぐに快楽によって上書きされてしまった。
じゅぷじゅぷと音を立ててしゃぶる度に硬さを増すそれを夢中になってしゃぶり続ける。口の中でどんどん大きさを増すそれのせいで呼吸がしづらくなるが、それでも口を離すことなくしゃぶり続けた。
やがて限界を迎えたのであろうシアが小さく呻いた。
それと同時に口の中に勢いよく吐き出された白濁を飲み込む。
こくり、と喉を鳴らして全て飲み干すとようやく口を離した。
そして再び胸の飾りにしゃぶりつく。今度は先程よりも強く吸い付き執拗に攻め立てる。もう片方の胸を爪で軽く引っ掻くように刺激を与えると面白いくらいに体が跳ねた。すると程なくしてシアは再び果てた。

「あ、あぁん、あ──!」

甲高い声を上げて絶頂を迎えるシアに、フィドゥはまだまだ満足できないといった様子で今度は下肢に手を伸ばす。そして既に濡れそぼった後孔に指を入れると中を広げるように動かした。その度にビクビクと反応する姿が可愛らしくて仕方がない。
そしてしこりを見つけてそこを押し潰せば先程よりも甲高い悲鳴をあげた。

「あ、そこっ……だめぇっ!」

しかしフィドゥはそれを無視して執拗に攻め続ける。それに加えて再び勃ち上がってるそれを掴み乱暴に擦りあげるといよいよシアは余裕を無くした。

「あ、あぁっ!いっちゃう、またいっちゃう!」

そう叫びながらシアは再び果てた。しかしそれでもなおフィドゥの手の動きは止まらない。むしろどんどん速くなっていった。

「やぁああぁあっ!あにうえ!もう、もうでない!でないからぁ!やめ、あぁぁああぁああっ!!」
「まだ出るだろ?」

敏感になったそこを無遠慮に擦りあげられるのはあまりに刺激が強すぎて意識を飛ばしてしまいそうになる。
そしてトドメと言わんばかりに前立腺を強く押し潰した瞬間、尿道から勢い良く潮を噴き出した。

「あ、あぁああぁああっ!!」

ガクガクと震えながら絶叫する。
シアの潮噴き姿に満足してフィドゥはようやく手を離した。
シアは強すぎる快楽に腰がガクガクと痙攣してしまっている。

「あ、兄上…流石に、やり過ぎだよ…」
「ご褒美あげると言ったのはお前だろ?」

片足を持ち上げ太ももにチュッと口付けた。そしてそのまま間に割って入ると、ひくつく後孔に亀頭を押し当てる。そして一気に貫いた。
ずぷり、と音を立てて侵入してきたそれにシアは歓喜の声を上げた。待ち望んでいた刺激を与えられて身体は歓喜に打ち震える。
そのまま激しく抽挿を繰り返すと結合部からはぐちゃぐちゃと水音が響いている。その音に興奮を覚えたのか更に締め付けを強くした。それに応えるようにフィドゥも動きを速める。パンッ!パァン!!と肌同士がぶつかり合う音が響く中、シアは何度も絶頂を迎えていた。

「あ、あぁあっ!兄上のおちんちんきもちいっ!」

すっかり快楽に溺れてしまったシアは自ら腰を振り始めた。その淫らな姿にフィドゥも興奮を隠しきれず更に奥へと突き上げる。すると結腸口に亀頭が当たったのかシアは一際大きな声で鳴いた。
そのままぐりぐりと押し付けると堪らないといった様子で身を捩らせる。
そしてラストスパートをかけるように激しく抽挿を繰り返すと限界を迎えたようだ。ビクビクと体を痙攣させて絶頂を迎えたと同時に中に熱い飛沫を注ぎ込んだ。
ずるりと引き抜くと栓を失ったそこからはどろりと白濁が流れ出してくる。その感覚にシアは小さく喘いだ。

「シア」

名前を呼んで優しく口付ける。あまりの心地よさに目をトロンとさせる。
そしてアルコールが完全に回りきったところで静かに眠りに就いた。

「…………」

フィドゥは絹のような触り心地の良い髪を撫でる。シアがあそこまで酒を飲む以上理由があるのは間違いないだろうが、果たして弟は喋ってくれるのだろうか。
そう思いながら、フィドゥはシアを抱きしめながら眠りに就いたのだった。

「──結局、なんであんなに深酒したんだ?」
「それがさぁ、私の不注意で数年間大事に大事に育ててきたアクアリウム全部枯らしちゃって……もう悲しくて悲しくてヤケ酒しちゃったんだよ……」
「………………そうか」
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