意識してよ、慎くん

おおいししおり

文字の大きさ
1 / 1

***

しおりを挟む
 未緒みおとは小学校に上がる前からの長い付き合いであり、ただの幼馴染。

 桃色の艶のある髪に、華奢な体格からよく女子に間違えられることが……確かに、そこら辺に居る女子よりも可愛いとは思う。

 ただの幼馴染みの関係――それ以上、同性の友達である俺は望んではいけないと思っていた。
 本格的な思春期、中学を迎えるまでは。

「……ひゃあっ!」

 夜間、耳元で小さな悲鳴が耳を擽った。
 同じ部屋、同じ空気に同じ寝床を共有している中で突然……いや、正確には三十分ほどから心臓のバクバク音が落ち着き気がしない。


 学校を終えた週末。
 だたの友達である泊まりと題して俺の家に来ていた未緒は雷に怯えた声音のまま、俺の腕をパジャマごと引っ張っては続けた。

「いっ、今近くに雷落ちたよね⁉」
「大丈夫。光ってから音がするまで時間が掛かってたから、意外と遠い」

「で、でも……」

 何か言いたそうな未緒は口をもごもごとするだけで、そこからの反論はない。どうやら納得してくれたらしい。

「……しんくんは雷、怖くないの?」
「まあ。もう、高校生だし」
「うっ。それだとおれが小っちゃい子って言われてるみたい……ひっ!」

 再び窓の外が光っては雷が落ちる。
 幼い頃から雷に対して変わらない反応、可愛い。

 一人称に至っては最近唐突に僕からおれにクラスチェンジしたがまだ言い慣れていない感が凄くて、何というか尊い。

「むぅ。慎くんってば、人が怖がってるのに笑うなんて酷いっ!」
「ごめん。……こうすれば、少しは怖さは軽減される?」

 それは無意識だった。俺の左手が未緒の右手を包む。所謂、手繋ぎってやつをただの男友達にやってしまった。

「あっ……うん。慎くんの、硬くて大きいけど、凄く、落ち着くね」
「えっ?」

 ふ、深い意味はきっとない。
 というか、あってたまるか。だって、俺と未緒はただの幼馴染であって同性だからそんな関係を望んではいけない。


 ……いや、出来れば俺だって未緒ともっと――。

「さ、さあ。もう寝よう!」

 そう、これはただの添い寝だ。
 例え、隣に好きな人がいても叶わぬ恋であることはもう何年も前から知ってる。

 ――と、刹那。未緒が俺の頬を両手で包んだ。

「っ、未緒……?」
「……どうして」


「え?」

 ぎゅっと未緒の両手に力が入ったのを感じる。もしかして、怒って……?

「……もう、馬鹿。――意識してよ、慎くん」
「は? 馬鹿って……えっ、てか意識って!?」

 プチパニック。
 まさか未緒から直接そんな単語を言われるなんて思わなかったし。つか、まるでそれだと……。

「えっ! ええっと、な、何でもないよ。……お、おやすみぃ!」

 勢いのまま逆方向を向かれた。わかりやすくも明らかな動揺。

 嗚呼、愛おしい……じゃなくて!
 ここでおちょくるような悪足掻きの追求をしてもいいが、正直嫌われるのは出来れば避けたい。

「……おやすみ、未緒」

 深くは問わない。今の関係を保つなら、これに限るだろう。だって俺たちはただの幼馴染で同性の友達、それ以上は何もないのだから。

 それでも、これだけは。こう思ってしまうことだけは許してくれ。


「好きだよ、未緒――」

 今も、これまでも。これからも、ずっとお前の側にいたい。この気持ちを素直に伝える未来に、賭けて。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

鳥籠の夢

hina
BL
広大な帝国の属国になった小国の第七王子は帝国の若き皇帝に輿入れすることになる。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

ポメった幼馴染をモフる話

鑽孔さんこう
BL
ポメガバースBLです! 大学生の幼馴染2人は恋人同士で同じ家に住んでいる。ある金曜日の夜、バイト帰りで疲れ切ったまま寒空の下家路につき、愛しの我が家へ着いた頃には体は冷え切っていた。家の中では恋人の居川仁が帰りを待ってくれているはずだが、家の外から人の気配は感じられない。聞きそびれていた用事でもあったか、と思考を巡らせながら家の扉を開けるとそこには…!※12時投稿。2025.3.11完結しました。追加で投稿中。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...