美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

文字の大きさ
204 / 216

手塩にかけて

 私のお気に入りの床座の部屋では、今日も穏やかな時間が流れていた。
 私の膝に頭を乗せているラグトさんの髪を撫でると、彼は目を閉じ嬉しそうにする。

「髪切ってスッキリしましたね」
「へへ、もうすぐサキちゃんとデートだから、バッチリ決めたよ~」

 そんな私たちの所に、ユウが遊びに来た。

「お勉強いっぱい頑張った?」
「うん!ヴェル父さん、おかし作ってくれるって!」

 おやつまでの時間を持て余しているユウは膝枕を羨ましがり、寝転がるラグトさんのお腹をペチペチ叩く。

「ぼくも母さんのおひざのりたい!」
「だめ!俺の番だから!」
「父さんずるいー!」

 子供にも譲らない彼に私はクスクス笑いながら、少しむくれてしまったユウを片腕で抱き寄せる。

「今はお父さんに譲ってあげて?昨日お仕事でいっぱい疲れちゃったんだって」
「そっかぁ……じゃあ母さんは、ぼくのおひざのっていいよ!」
「ありがとう!……ん?お母さんが乗るの?」

「じゃあ」の意味が分からずに、私は首を傾げる。

「だって母さんもつかれてるんでしょ?さっき、は~……ってため息してたもん」
「!?」

 ユウの言葉に驚き、飛び起きたラグトさんは私の肩を掴む。

「サキちゃん、疲れてるのにこんなことさせてごめんね!!」
「え、私は全然……」
「何か嫌なことあった!?ヴェルストリアがなんかした!?」

 真っ先に疑われたヴェルくんの不服そうな顔と、昨夜その彼にされた色々なことが頭をよぎったが、今はとりあえず置いておく。

「ヴェルくんのせいじゃないですよ。疲れてるわけでもなくて」

 私は少し迷ったけれど、正直に言うことにした。

「庭でミニトマトを育てているんですけど」
「ああ、あの隅っこのところね」
「もうそろそろ収穫できるかなってさっき見たら、下に落ちて鳥に食べられていたんです……」
「え!?マジ!?」

 ラグトさんと、ユウも大きなショックを受けている。

「ぼくのトマトとられちゃったの!?」
「ユウだけのじゃないけど……。うん、ごめんね。楽しみにしてくれてたのに」

 一緒に水やりもして成長を見守っていたので知ったら悲しむと思って、いつ言おうか悩んでいたのだ。
 とりあえず二人を連れて庭に行き、その現状を見せる。

「あー、だいぶ食われちゃってる……」
「はい……。この上の方の赤く熟してきたところが駄目になっちゃって……」

 全部の実が一気に熟してくるものでは無いので、今の段階で収穫できそうな物たちが鳥に奪われてしまったということだ。

「あ、みて!ちょうちょとれた!」

 ユウが突然、捕まえた蝶々を差し出してきたので、私は一歩下がりラグトさんを前に出す。

「珍しいやつじゃん!何て名前だっけ?」
「ピロパタ……なんとか!」
「あはは!父さんも忘れちゃったな。でもむやみに採っちゃ駄目だから、観察する時だけだよ」

 お父さんに優しく諭されて、ユウは蝶々を放しお別れした。

「ユウ……後でしっかりお手て洗おうね」
「はーい」

 虫を大袈裟に嫌っているわけではないが触れたくは無いし、鱗粉の付いた手で家の中をあちこち触られるのは勘弁してほしい。
 スッとラグトさんの隣に戻ったら、彼に笑いながら頭を撫でられた。

「はは、サキちゃん可愛い」
「もう、何がですか」

 話をトマトに戻し、三人で土の上にある残骸を片付ける。

「もったいないー……ぼく、いちばんに食べたかった……あのカピカピにするやつ……」
「ドライトマトね。ユウはあれ、凄く好きだもんね」

 私は最初はサラダで食べたかったな……。

「でも、鳥さんもたべちゃうくらいおいしかったんだね!」
「!」

 ユウの前向きな言葉に私たちは顔を見合わせ、笑みを零す。

「そうだね!上手に育てられてたなら良かった!」

 気持ちを立て直し、一緒に他の花たちの世話も終わらせた。

「まだ赤くなってないのは無事だから、それは守りたいんですけど」
「うーん、俺は分からないから、先輩に聞くしかないなぁ」

 というわけで、夜に帰ってきたミスカさんに相談した。

「そうか、もう収穫時期だったのか。すまない、俺がちゃんと管理していなかったせいで」
「ミスカさんのせいじゃないですよ!」

 彼が最近忙しかったので、主に世話をしていたのは私だ。
 農作物を育てたのは初めてだったのでこういう被害が起きることを考えられていなかったが、きちんと彼に聞いておくべきだった。

「ミニトマトは実をつけ始めた頃に防鳥用の網を張るんだ。支柱を立てて、全体を囲うようにする」
「なるほど!」

 家にあるものを使って、彼が早速用意してくれた。

「これで大丈夫だろう。余程大きな鳥でなければ壊れることもない」
「ありがとうございます!」

 今回は失敗してしまったが、育てる上で色々対策が必要なのだと教訓が得られたのは大きい。
 ミニトマトもまだこれからいっぱい採れるし!

「ユウのためにドライトマト作ろうと思ってるんです!ミスカさんは何が良いですか?」
「そうだな……。俺はマリネが食べたい」
「良いですね!ふふ、楽しみ~」

 ルンルンと話しながら二人で家に戻る。

「ラグトさん!対策ばっちり出来ました!」
「おお!良かったー!」

 問題が解決し、私のため息も無くなった。

「これで安心してサキちゃんの膝に乗れる~」
「ふふ、どうぞ」

 床座の部屋でまたラグトさんの頭を膝に乗せると、扉のところからミスカさんがジッと見ている。

「せ、先輩……なんすか?」
「……」
「譲らないっすよ!」
「……」

 子供には勝てたが、先輩には勝てなかった。

「ミスカさん、どうですか?」
「……とても心地いい」

 今度はミスカさんの頭を乗せながら、彼の髪を撫でる。

「お仕事お疲れ様でした」
「ありがとう。こうしてもらえると……本当に疲れが取れる」
「このまま寝るのは駄目ですよ」
「……気をつける……」

 ミスカさんが若干危うく目を閉じている中、私は横でめそめそしているラグトさんの髪も撫でる。

「ラグトさんも手伝ってくれてありがとうございます」
「うぅ……サキちゃん~……」

 子供と植物と……夫のお世話。
 私の毎日はとても充実している。
感想 66

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。