美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

文字の大きさ
8 / 200

おやつの時間

しおりを挟む
「んー何作ろう……」

 食堂に着き、さっそくエプロンをして料理を考える。

「ラグトさん食べたいものありますか?」
「俺はね……って俺の分も作ってくれるの?!」

 ありえない、みたいな顔をされてちょっと心外だ。ついて来てもらって自分のだけ作るような人じゃない。

「そのつもりだったんですけど……お腹空いてないですか?」
「い、いや!めっちゃ空いてる!甘いのがいいかな、俺」

 頭を何度も縦に振るラグトさんは驚きながらも嬉しそう。嫌な訳じゃなくて良かった。

「わかりました!じゃあさっそく作ってきますね!」
「俺も手伝うよ?」
「荷物運んでくださったお礼も兼ねているのでラグトさんは座ってて下さい」

 渋々頷いたラグトさんはキッチンの扉に一番近い席に座った。
 甘いもの……パンケーキにしようかな。
 生地を混ぜて、焼いてる間にソースを作って……。
 完成したものを食堂へ持っていくとミスカさんも一緒に座っていた。

「あ、サキちゃん!先輩も来ちゃったけど……追い出す?」

 馬鹿、とミスカさんが頭を小突きラグトさんが大袈裟に痛がっていて、思わず笑ってしまう。

「多めに作ったので三人分ありますよ、どうぞ」

 ミスカさんとラグトさんの前にパンケーキを出し、紅茶を淹れる。
 二人が横に並んで座っているので私は反対側に向かい合う形で座った。

「これパンケーキだよね?こんなにフワフワなの初めて見た!」
「美味い……なんで分厚くなるんだ?」
「卵白を泡立てて混ぜるとボリュームが出てふわふわになるんです」

 私も二人と一緒に食べる。
 ん~美味しい!
 この世界にもハンドミキサーがあって助かった。

「ごちそうさま」
「ほんと美味かった!」

 あっという間に食べ終えて、私のお腹もいい感じに満たされた。
 二人とも喜んでくれて良かった。

「サキ、顔に生クリームついてる」
「えっ、ほんとですか」

 ミスカさんに言われて頬のあたりを触るがよく分からない。

「もうちょっと左だよ」
「いや反対から見たら右だろ」

 二人が色々言うものだから余計に分からなくなってしまった。

「もう、そんなに言うなら取ってくださいよ」

 私が冗談でムッとした顔をしてそう言うと、二人は急に後ろで顔を寄せ合い私に聞こえない声で話し始めた。

「拗ねてる顔も可愛いっすね」
「ああ、じゃあ俺が取ろう」
「いやいや、俺のほうが近いっすから。俺がやります」

 何故かジャンケンが始まって、ラグトさんが勝ったらしくガッツポーズをしている。
 あれ、自分で拭きに行こうと思ってたんだけど……というかジャンケンこの世界でも同じなんだ。
 本当に取ってもらうことになってしまって慌てるが、あまりに真剣な表情でジャンケンをしていた二人に冗談ですとは言いづらかった。

「じゃあちょっと失礼……」
「お、お願いします」

 ラグトさんが手を伸ばしてきたので、私は目を閉じ彼に顔を近づける。
 下唇と頬の表面をなぞるように親指で拭われ、くすぐったくて少し声が出てしまった。
 恥ずかしいなーなんて思っていたけどラグトさんの手が顔から離れる気配がない。

「ラグトさん?」

 私が目を開け声を出すのと、ミスカさんがラグトさんの首根っこを掴むのが同時だった。

「いでででっ!」
「ラグト……」
「先輩だってどうせ同じ……痛っ!」

 よくわかんないけど、生クリーム取れたならいっか。
 二人が揉めてる間にお皿を片付け布巾を持ってくる。

「ラグトさんありがとうございます、これで拭いてください」
「うん、どういたしまして。……顔触っちゃってごめんね」
「ふふ、なんで謝るんですか。ちょっとドキドキしましたけど」
「っ……」

 そのまましばらく彼と見つめ合っていると、ミスカさんの咳払いが聞こえた。

「俺たちは戻るとするか。あいつらをずっと走らせとくのも悪いからな」
「鍛錬の内容テキトー過ぎでしょ!?やけに来るの早いと思ったらそんな……ちょ、髪引っ張んないでくださいよ!」

 二人はこちらに手を振って仲良く帰って行った。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

処理中です...