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サキとの出会い(ラグト)
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物心ついた時から俺は醜いのだと分かっていた。散々悪口を言われ、殴られて。最初は抵抗していたが六歳になる頃にはもう諦めていた。
「お前ほんと醜いよな!」
「はは、俺も知ってるー」
「こいつ自分で認めてるのかよー!」
何を言われても気にしていないフリをして明るくかわす。そうしているうちにいじられ役として上手く周囲に溶け込めていた。
でもやっぱり色々言われると辛くて無理やり笑顔を作るのにも疲れて、俺は町を離れて黒騎士団に入った。
ここには自分と同じような容姿の人ばかりで、初めてミスカ先輩に会った時も安心したんだ。
あぁ、俺のほうがきっとマシだと。
しかしそうじゃなかった。
先輩は圧倒的に強かった。年上を相手にしても怯むことなく剣を振るい勝利を手にする姿は、今まで出会った誰よりもカッコよく見えた。
俺もこの人のように強くなりたい。容姿で馬鹿にしてきた人たちを見返せるくらいに。
そう心に決めていたのだが、この黒騎士団に女の子が住むことになったという話を聞いて、そして今、その子と対面して正直動揺した。
「めっちゃ美人!」と思わず声出してしまう程の目を引く黒髪黒目、可愛らしい顔立ち、小柄な体。男の理想を具現化したような容姿にドキッと胸が高鳴る。
だからこそ、周りからさぞ優遇されてきたであろう彼女にどんなことを言われるのか考え怖くなってしまった。
「はじめましてラグトさん、ここでお世話になっているサキです。あの……私は大丈夫なのでお顔は隠さないでください」
え?想像していた反応と違う?
当たり前のように挨拶をし、顔を見せても良いと。信じられなかったが、尊敬する先輩の前でうじうじしているのもカッコ悪い。
どうにでもなれ、と顔を隠していた手を退ける。
俺の顔を見たサキちゃんは怖がらず、それどころか目を輝かせ嬉しそうに笑った。
キュンとした。
その後も照れてしまい終始おちゃらけた態度だった俺にも彼女は優しく何より誠実に接してくれて、俺の胸はずっとキュンキュンしぱなっしだった。
サキちゃんと話していると楽しくて自然と笑顔になる。彼女も笑顔にしたくなる。
浮き足立っているのがバレていないか心配だった。
食堂に着くと、サキちゃんは俺の分も一緒におやつを作ってくれると言う。
すごく嬉しくて手伝いたかったけど「お礼」だと言われてしまって、それも嬉しかったので大人しく座って待っていた。
「ラグト、まだ居たのか」
「先輩!?」
「サキが何か作っているのか」
ちょうどサキちゃんがキッチンから出てくる。
「お待たせしましたー!」
机にはふわふわのパンケーキ。
サキちゃんが!俺のために!作ってくれたパンケーキだと思うとそれはもう輝いて見えた。
結局先輩も食べていたけど。
朝飯も美味しくてびっくりしたけど、やっぱり本当に料理上手なんだな……。
すっかり食べ終えると、ふとサキちゃんの唇の端にちょんと生クリームが付いてしまっているのに気がつく。
先輩が彼女に伝えるが、なかなか場所が分からないようで不思議そうな顔をしている。そして少し拗ねたように「取ってくださいよ」と言った。
くるくる変わる表情も可愛くてずっと見ていたいが、この状況ではそうもいかなくなった。
どちらが生クリームを取るのか……二人は真剣な眼差しで睨み合う。約一分間の接戦の末、俺は勝利を手にした。
先輩はあまり表情には出ないが相当悔しそうだ、というか後が怖い。しかし女性に無関心なはずのミスカ先輩がサキちゃんのことになると行動力が増しているように思える……。
「ちょっと失礼……」
俺が手を伸ばすと彼女は目を伏せ、こちらに顔を寄せた。黒く長いまつ毛に見惚れながら、なるべく触れる面積が少ないようにと親指だけ出してそぉっと近づける。
触れるか触れないか、いや、これは触れているのか?生クリームの表面では?
距離感が分からなくなって手に力が入ってしまうと、不意にふにっと柔らかいものに指先が触れた。可愛らしい小さな唇。
わっ……!!
手が震わせながらそのまま優しく横になぞった時だった。
「んっ……」
彼女の唇がキュッと堪えるように動く。
えっっ??
可愛い、こんなに可愛い人が目の前にいるなんて、今触れているなんて信じられない。このまま時間が止まってしまえばいいのに。
先輩に首を締められるまで俺は天国にいた。
鍛錬に戻った俺は先輩に執拗に虐められながらもサキちゃんのことで頭がいっぱいだった。
こんな容姿の奴に触れられても気にせず、「ドキドキした」なんて顔を赤らめて言われたら……。
あぁー!もう、めっちゃ好き!!
出会ったばかりで好きになるなんて俺は軽薄な男なのかもしれない。でもなんと言われようと構わない。もう他の女性なんてどうでもいい。
ずっと胸がキュンと締め付けられて苦しいんだ。それがとてつもなく幸せで。
幼い頃の無理やり笑っていた俺が遠くに消えていく。
いつの間にか俺の笑顔は作り物じゃなく本物になっていたんだ。
「はぁー……っ、よし!」
俺は彼女を幸せには出来ないけど、笑顔にすることはきっと出来る。その為の努力なら、俺はいくらでもやってやる。
「お前ほんと醜いよな!」
「はは、俺も知ってるー」
「こいつ自分で認めてるのかよー!」
何を言われても気にしていないフリをして明るくかわす。そうしているうちにいじられ役として上手く周囲に溶け込めていた。
でもやっぱり色々言われると辛くて無理やり笑顔を作るのにも疲れて、俺は町を離れて黒騎士団に入った。
ここには自分と同じような容姿の人ばかりで、初めてミスカ先輩に会った時も安心したんだ。
あぁ、俺のほうがきっとマシだと。
しかしそうじゃなかった。
先輩は圧倒的に強かった。年上を相手にしても怯むことなく剣を振るい勝利を手にする姿は、今まで出会った誰よりもカッコよく見えた。
俺もこの人のように強くなりたい。容姿で馬鹿にしてきた人たちを見返せるくらいに。
そう心に決めていたのだが、この黒騎士団に女の子が住むことになったという話を聞いて、そして今、その子と対面して正直動揺した。
「めっちゃ美人!」と思わず声出してしまう程の目を引く黒髪黒目、可愛らしい顔立ち、小柄な体。男の理想を具現化したような容姿にドキッと胸が高鳴る。
だからこそ、周りからさぞ優遇されてきたであろう彼女にどんなことを言われるのか考え怖くなってしまった。
「はじめましてラグトさん、ここでお世話になっているサキです。あの……私は大丈夫なのでお顔は隠さないでください」
え?想像していた反応と違う?
当たり前のように挨拶をし、顔を見せても良いと。信じられなかったが、尊敬する先輩の前でうじうじしているのもカッコ悪い。
どうにでもなれ、と顔を隠していた手を退ける。
俺の顔を見たサキちゃんは怖がらず、それどころか目を輝かせ嬉しそうに笑った。
キュンとした。
その後も照れてしまい終始おちゃらけた態度だった俺にも彼女は優しく何より誠実に接してくれて、俺の胸はずっとキュンキュンしぱなっしだった。
サキちゃんと話していると楽しくて自然と笑顔になる。彼女も笑顔にしたくなる。
浮き足立っているのがバレていないか心配だった。
食堂に着くと、サキちゃんは俺の分も一緒におやつを作ってくれると言う。
すごく嬉しくて手伝いたかったけど「お礼」だと言われてしまって、それも嬉しかったので大人しく座って待っていた。
「ラグト、まだ居たのか」
「先輩!?」
「サキが何か作っているのか」
ちょうどサキちゃんがキッチンから出てくる。
「お待たせしましたー!」
机にはふわふわのパンケーキ。
サキちゃんが!俺のために!作ってくれたパンケーキだと思うとそれはもう輝いて見えた。
結局先輩も食べていたけど。
朝飯も美味しくてびっくりしたけど、やっぱり本当に料理上手なんだな……。
すっかり食べ終えると、ふとサキちゃんの唇の端にちょんと生クリームが付いてしまっているのに気がつく。
先輩が彼女に伝えるが、なかなか場所が分からないようで不思議そうな顔をしている。そして少し拗ねたように「取ってくださいよ」と言った。
くるくる変わる表情も可愛くてずっと見ていたいが、この状況ではそうもいかなくなった。
どちらが生クリームを取るのか……二人は真剣な眼差しで睨み合う。約一分間の接戦の末、俺は勝利を手にした。
先輩はあまり表情には出ないが相当悔しそうだ、というか後が怖い。しかし女性に無関心なはずのミスカ先輩がサキちゃんのことになると行動力が増しているように思える……。
「ちょっと失礼……」
俺が手を伸ばすと彼女は目を伏せ、こちらに顔を寄せた。黒く長いまつ毛に見惚れながら、なるべく触れる面積が少ないようにと親指だけ出してそぉっと近づける。
触れるか触れないか、いや、これは触れているのか?生クリームの表面では?
距離感が分からなくなって手に力が入ってしまうと、不意にふにっと柔らかいものに指先が触れた。可愛らしい小さな唇。
わっ……!!
手が震わせながらそのまま優しく横になぞった時だった。
「んっ……」
彼女の唇がキュッと堪えるように動く。
えっっ??
可愛い、こんなに可愛い人が目の前にいるなんて、今触れているなんて信じられない。このまま時間が止まってしまえばいいのに。
先輩に首を締められるまで俺は天国にいた。
鍛錬に戻った俺は先輩に執拗に虐められながらもサキちゃんのことで頭がいっぱいだった。
こんな容姿の奴に触れられても気にせず、「ドキドキした」なんて顔を赤らめて言われたら……。
あぁー!もう、めっちゃ好き!!
出会ったばかりで好きになるなんて俺は軽薄な男なのかもしれない。でもなんと言われようと構わない。もう他の女性なんてどうでもいい。
ずっと胸がキュンと締め付けられて苦しいんだ。それがとてつもなく幸せで。
幼い頃の無理やり笑っていた俺が遠くに消えていく。
いつの間にか俺の笑顔は作り物じゃなく本物になっていたんだ。
「はぁー……っ、よし!」
俺は彼女を幸せには出来ないけど、笑顔にすることはきっと出来る。その為の努力なら、俺はいくらでもやってやる。
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