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囚われの身
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閉じ込められて男が去ってから数十分後。
手足の痺れが落ち着き、ようやくまともに立ち上がることが出来た。
鎖はだいぶ長く、一番奥にある扉までは届きそうにないが、その他は動き回ることが出来る。部屋の中を見るとベッドの他に風呂もトイレもあり、高級そうなテーブルや椅子が置かれてある。しかもクローゼットには色んなドレスが入っている。
まるで誰かが住むように整えられていて、それが私なのだと思うと途端に気持ち悪くなった。
その後は拘束されていることを除けばほとんど自由に過ごせて、たまに食事が出された。
作ってくれた人には申し訳ないが毒が入っているかもと思うと口にできず、一睡もしないまま抜け出すことをひたすら試みたが叶わなかった。
半日以上経って夕日が出る頃あの男がまたやって来た。
「やあ、私と結婚する気になったかい?」
「なりません」
待てば私の気持ちがあっさり変わるとでも思っているのか。
男がこちらに近づいてくるので私は後ずさるがベッドまで行き着いてしまう。
「君の出生はいくら調べても出てこない。赤騎士団に居る私の甥から聞いて初めて知ったよ。勿論他には漏らさないように言ってある。私は君を助けたいんだ」
「助ける……?」
「あの黒騎士団に阻まれてまだ誰とも結婚していないのだろう?一人も夫が居ないというのは危険すぎる。私なら君を守れるんだ。甥も君を好きだと言っていたがまだあいつにそんな力はないからな」
そう言い鼻で笑う。
この男でも赤騎士団の人でも、私はどちらもごめんだ。
「私にはもう恋人がいます」
「君が外に出たという記録はない、誰とも会っていないはずだ」
え……初めて赤騎士団の人に会った時から今までずっと監視していたの……?
中での様子は知らないのだろうが黒騎士団の人の出入りは把握しているみたいだ。
「黒騎士団の連中と付き合っているなんてことはないだろう?」
「……そうだと言ったら?」
「ははは!そんな嘘はつくものじゃない。君は特別だ、その容姿があればどんな貴族も欲しがる!競りにかければ莫大な金が動くほどの価値がある。あんな奴らとは天と地の差があるんだ」
「っ!」
人を売買するだなんて、どこまで非人道的なんだと睨みつける。
「大丈夫、そんなことはしないさ。君をその危険から守ろうと言っているんだ。君の気に入る男がいれば好きなだけを結婚していい。足りなければ用意しよう。その中に私一人を加えてくれという話だ」
「嫌です」
「美しい君をこの手で愛してあげられるんだ!それに君のその容姿を引き継ぐ子が我がノクダーム家に産まれれば後世に残る宝となる!」
彼は興奮したように私の手を掴んできた。
あまりの嫌悪感で背筋がゾッとして、振り払おうとしたが無駄に力が強くて動かせない。
「離してっ……私は貴方の子なんて産みません!」
自分勝手な理想ばかり押し付けてきて、私の気持ちなど一切考えていない。こんな最低な人と私の恋人たちとも、それこそ天と地の差がある。
私の断る意思が固いことを理解してか、彼はため息をつき急に可哀想な目で私を見る。
「しかしなぁ、君は断ってももう帰る場所は無いんじゃないのか?」
「……え……?」
「今まで頼っていた黒騎士団、誰も君のこと探していないそうじゃないか。これだけ時間が経ったのに音沙汰無い、君のことはもう諦めたんだろうね」
「そんなこと……」
あるはずない。彼らが私を見捨てるなんて。
「私はあいつらを訴えることだって出来る、君を監禁していたとね。私の権力があればすぐに処罰となり黒騎士団は解散だ」
「嘘言わないで!」
「嘘になるかどうかは君が決めれるんだ。私の提案を飲めば訴えもしない。なんならこれから黒騎士団が困ることが無いように援助も惜しみなくしよう」
「……っ」
黒騎士団は彼らの居場所だ。それ自体が無くなってしまうかもしれないと考えると焦りが生まれた。
助けに来てくれるって信じてる。でも……。
一瞬、私が受け入れれば、と思ってしまった。
その戸惑いで抵抗していた体が緩み、隙を付かれてベッドに押し倒されてしまう。
「どうやら納得してくれたみたいだね」
「ちがっ、やめ……」
太った男の重い体がのしかかる。
本当に無理やりされてしまうという危機を身で感じ、今まで強気で反発してきた心が一気に恐怖に塗り替えられる。
全身が震える。息が詰まる。
怖い、助けて、お願い……。
興奮した男の吐いた息が首元にかかる。
「や、やだ……かえりたい……」
皆がいる黒騎士団へ帰りたい。
涙がぽろぽろ溢れてくる。
「泣き顔もなんて愛らしい……」
「いやっ……!」
手足の痺れが落ち着き、ようやくまともに立ち上がることが出来た。
鎖はだいぶ長く、一番奥にある扉までは届きそうにないが、その他は動き回ることが出来る。部屋の中を見るとベッドの他に風呂もトイレもあり、高級そうなテーブルや椅子が置かれてある。しかもクローゼットには色んなドレスが入っている。
まるで誰かが住むように整えられていて、それが私なのだと思うと途端に気持ち悪くなった。
その後は拘束されていることを除けばほとんど自由に過ごせて、たまに食事が出された。
作ってくれた人には申し訳ないが毒が入っているかもと思うと口にできず、一睡もしないまま抜け出すことをひたすら試みたが叶わなかった。
半日以上経って夕日が出る頃あの男がまたやって来た。
「やあ、私と結婚する気になったかい?」
「なりません」
待てば私の気持ちがあっさり変わるとでも思っているのか。
男がこちらに近づいてくるので私は後ずさるがベッドまで行き着いてしまう。
「君の出生はいくら調べても出てこない。赤騎士団に居る私の甥から聞いて初めて知ったよ。勿論他には漏らさないように言ってある。私は君を助けたいんだ」
「助ける……?」
「あの黒騎士団に阻まれてまだ誰とも結婚していないのだろう?一人も夫が居ないというのは危険すぎる。私なら君を守れるんだ。甥も君を好きだと言っていたがまだあいつにそんな力はないからな」
そう言い鼻で笑う。
この男でも赤騎士団の人でも、私はどちらもごめんだ。
「私にはもう恋人がいます」
「君が外に出たという記録はない、誰とも会っていないはずだ」
え……初めて赤騎士団の人に会った時から今までずっと監視していたの……?
中での様子は知らないのだろうが黒騎士団の人の出入りは把握しているみたいだ。
「黒騎士団の連中と付き合っているなんてことはないだろう?」
「……そうだと言ったら?」
「ははは!そんな嘘はつくものじゃない。君は特別だ、その容姿があればどんな貴族も欲しがる!競りにかければ莫大な金が動くほどの価値がある。あんな奴らとは天と地の差があるんだ」
「っ!」
人を売買するだなんて、どこまで非人道的なんだと睨みつける。
「大丈夫、そんなことはしないさ。君をその危険から守ろうと言っているんだ。君の気に入る男がいれば好きなだけを結婚していい。足りなければ用意しよう。その中に私一人を加えてくれという話だ」
「嫌です」
「美しい君をこの手で愛してあげられるんだ!それに君のその容姿を引き継ぐ子が我がノクダーム家に産まれれば後世に残る宝となる!」
彼は興奮したように私の手を掴んできた。
あまりの嫌悪感で背筋がゾッとして、振り払おうとしたが無駄に力が強くて動かせない。
「離してっ……私は貴方の子なんて産みません!」
自分勝手な理想ばかり押し付けてきて、私の気持ちなど一切考えていない。こんな最低な人と私の恋人たちとも、それこそ天と地の差がある。
私の断る意思が固いことを理解してか、彼はため息をつき急に可哀想な目で私を見る。
「しかしなぁ、君は断ってももう帰る場所は無いんじゃないのか?」
「……え……?」
「今まで頼っていた黒騎士団、誰も君のこと探していないそうじゃないか。これだけ時間が経ったのに音沙汰無い、君のことはもう諦めたんだろうね」
「そんなこと……」
あるはずない。彼らが私を見捨てるなんて。
「私はあいつらを訴えることだって出来る、君を監禁していたとね。私の権力があればすぐに処罰となり黒騎士団は解散だ」
「嘘言わないで!」
「嘘になるかどうかは君が決めれるんだ。私の提案を飲めば訴えもしない。なんならこれから黒騎士団が困ることが無いように援助も惜しみなくしよう」
「……っ」
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助けに来てくれるって信じてる。でも……。
一瞬、私が受け入れれば、と思ってしまった。
その戸惑いで抵抗していた体が緩み、隙を付かれてベッドに押し倒されてしまう。
「どうやら納得してくれたみたいだね」
「ちがっ、やめ……」
太った男の重い体がのしかかる。
本当に無理やりされてしまうという危機を身で感じ、今まで強気で反発してきた心が一気に恐怖に塗り替えられる。
全身が震える。息が詰まる。
怖い、助けて、お願い……。
興奮した男の吐いた息が首元にかかる。
「や、やだ……かえりたい……」
皆がいる黒騎士団へ帰りたい。
涙がぽろぽろ溢れてくる。
「泣き顔もなんて愛らしい……」
「いやっ……!」
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