美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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似合う服

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 最近は少しずつ暖かくなってきて、芽を出したチューリップもすくすく育っている。
 冬もあっという間だったな……。

「お嬢さん、頼まれた服はこの箱に入ってるから。ラグトの分もな」
「ありがとうございます!」

 ログさんが黒騎士団の荷物と一緒に、以前私たちがエバンさんに頼んだ服を持ってきてくれた。
 追加もあったのにこんな早く作ってもらえるなんて、流石職人さん。
 早速運ぼうとしたのだけれど、いっぱい注文してしまったのでだいぶ重かった。

「あ、俺が運びましょうか」

 荷物を確認していた団員さんが声をかけてくれる。

「お願いして良いですか?すみません」
「全然!そもそも女性がするような事じゃないですし……。俺たちにやらせてください」

 お言葉に甘えて、私の部屋の中まで運んでもらった。

「ラグトも新しい服を買ったんですか」
「はい!以前買ったものと合わせて作って貰もらったんです」
「俺たちはお洒落とかしないから……ラグトが着ているのを見て驚きました。正直カッコいいなと思ったんです。太っている人とはまた違う……本人に似合っているなって」
「そうですよね!服は自由に楽しむものですけど、周りからの印象を良くするものでもありますから」

 私がそう言うと彼はこちらを向き、照れながら話し出す。

「実は、サキさんに……」

 その時、後ろから勢いよく走ってくる足音が聞こえた。突然誰かに抱きしめられたと思ったら、クルッと私の視界が後ろを向いた。

「ちょっと……サキの部屋入って何してんの」
「りゅ、リュークさん!違くて……」

 リュークが団員さんから私を隠すようにして、睨み威嚇しているのだった。
 サッと二本の腕から抜け出した私は彼を止める。

「荷物運んでもらったの!今話している途中だから、邪魔しちゃ駄目」
「うぅ……」
「ごめんなさい、何のお話でしたか?」
「ええと……」

 団員さんはリュークをチラッと見て、怖々と話を再開する。

「そのラグトの服を見たら俺たちも興味湧いちゃって。お洒落って程じゃなくても服買ってみようかって話してたんです。だからサキさんにアドバイスを貰いたくて」
「そうだったんですね!嬉しいです!」

 笑顔で返事をしながらリュークを肘で小突くと、まだむくれている。

「これも届けに行きますから、ラグトさんの服も見せてもらいましょうか。そのほうが分かりやすいと思いますし」
「ありがとうございます!」
「リュークも行く?」
「……行く」

 リュークも連れて、早速ラグトさんの所へ向かう。

「そういえばこの前のミスカさんの用事、何だったの?」
「合同演習の時の書類渡してなかったからさ」
「急ぎじゃなかった?」
「うん!ギリセーフ!」
「ごめんね……」

 ラグトさんの部屋は寮の一階。
 昇り降りが無いのは嬉しいよね、毎日だし。
 私がドアをノックして声をかけると、すぐに開いて笑顔の彼が出迎えてくれた。

「あ、わざわざ持ってきてくれたの!ありがとう!」
「はい!あとお洋服についての相談があって」
「相談?」

聞き返したラグトさんは一緒に来ていた団員さんに気づき、余計不思議そうにする。
 とりあえず部屋にお邪魔して、早速事情を説明した。

「なるほど!ちょっと待ってね」

 服を取り出しベッドに並べていくラグトさん。
 彼の部屋に初めて入ったけど、ヴェルくんよりは物が多い気がする。
 ちょっとソワソワしちゃうな……。

「というか何でリュークさんもいるんすか?」
「サキの護衛」

 団員さんとラグトさんは色々話し合っていて、私もささやかにアドバイスをしていた。

「町に買いに行くの?」
「いや、ログさんに頼もうかなって。俺たちだけで行くのは……まだ勇気が無い」
「分かるわぁ……」

 ラグトさんは敬語を忘れがちなので歳が近い人はもう気にしていないそう。
 そもそも年齢と騎士歴がバラバラなので誰が先輩なのか後輩なのか曖昧で分かりずらい、とも言っていた。
 町へ行くのに躊躇いを感じている彼を見て、私は思いつき提案する。

「今度皆で行きましょうか」
「「え!?」」

 ……何か変なこと言ったかな?

「ほ、他の男とデートするの……?」

 リュークが特に大きなショックを受けている。

「えっ、違うよ!また護衛も兼ねて来てもらえば良いじゃない!」

 ラグトさんは納得し、リュークは「ヤダ!」と言う。
 意見が分かれるなぁ……ラグトさんはあんまりそういうの気にしないよね。
 とりあえずその件は保留して相談は終わり、団員さんは嬉しそうに戻って行った。

「このズボンせっかくだから着てみようかな」
「はい!」

 一度部屋から出ようとしたらリュークに後ろから抱きしめ止められた。

「いつも見てるんでしょ?わざわざ出ていかなくて良くない?」
「「え!?」」
「そんなに意識するものなの?」

 確かにそうかもだけど……。

「なんか……常識だと思って……」
「うん……着替える時も基本どっちかがシャワールーム入ってたね」

 考えてみればラグトさんの時だけかもしれない。これが普通じゃないのかな……?

「じゃあラグトは着替えて。その間サキは俺とキスしてよ」
「何で……っん」

 唐突にキスが始まる。

「着替えづらい!」

 ラグトさんは戸惑いながらも、なんとかせっせと着替える。

「サキちゃん……これどうやって留めるの?」
「え、あっ…ん、りゅーく……」

 全然止まってくれない……!

「ちょっと、俺だってしたいのに!」

 腰をリュークの腕で抱かれ動けない私の顔を、ラグトさんは自分の方へ向かせてキスをする。
 お陰でよりキスは止まらず着替えどころでは無くなっていた。

「ラグトはまだ着替え終わってないから駄目」
「リュークさんのせいっすよ!」

 これでは永遠に終わらないので、私は二人の口を手で塞いだ。

「もうやめて」
「はい……」
「ごめん……」

 ようやく解放されたので、私はラグトさんにズボンを留め方を説明する。

「ホックを引っ掛けてここはリボン結びをしてください。キツくないですか?」
「うん、ピッタリ!」
「おー!」

 リュークとパチパチ拍手をしながら眺める。

「カッコいいです!」
「ほんと!良かったー!」
「凄くカッコいいです!」
「ありがとう!」
「カッコいい……」
「サキ、何回言うの」

 またむくれたリュークが私の言葉を遮る。

「ごめん、つい……」
「俺がこれ着たらカッコいいって言ってくれるの?」
「うん!似合うと思う!リュークは白でも良いかもしれないね、上はカラフルに……」
「……ラグト、それ貸して」
「えっ!?」

 せっかく着たのにラグトさんはまた脱ぎ、今度はリュークが履いてみる。

「リューク……カッコいい……!」
「わーい!褒められた!」
「サイズ同じっすよね。へぇ……こんな感じなんだ……」

 客観的に見た時の様子が分かってラグトさんも満足そう。

「やっぱり脚長く見えるね!」
「ですね!腰周りもキュッとしてメリハリが合って良い感じ!」

 リュークは不思議そうに下を見ている。

「この服太ってる人には着れないよね。そう思うと俺たちのほうが色んな服着れるのかな」
「言われてみれば……じゃあ得しちゃってる?」
「はい!しちゃってます!」

 ラグトさんとハイタッチして喜ぶ。

「サキと居ると何でも幸せになるね!」
「サキちゃんありがとうー!」
「ふふ、私も皆と居ると幸せいっぱいだよ」

 抱きしめてくれる二人の温もりが春のように心地よい今日この頃だった。

「用事も済んだし、早速えっちしよ!」
「リュークさんその前にズボン脱いでください!」
「脱いでもしないからね!?」

 先日教訓を得て、私はさっさと部屋から抜け出した。
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