美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

文字の大きさ
108 / 200

再会

しおりを挟む
「サキさんおはようございます!」
「ヨルアノくん、おはよう」

 入団してから数日、ヨルアノくんはすっかり黒騎士団に馴染んでいた。

「今日はヴェルストリア居ないんですか?」
「うん、朝早くに出発しちゃって」

 騎士というお仕事だから勿論外へ行くことが多くて、一日二日居ない時もある。
 今日は一緒に寝ていたから眠い目を擦りながら見送ることが出来たけど。

「サキさんのご飯本当美味しいです!毎日食べれて幸せやわ……」
「良かった!いっぱい食べてね」
「ありがとうございます!」

 私も片付けを終え早速ご飯をよそう。そこへ、ラグトさんもご飯を食べにやって来た。

「おはようございます!」
「おはよう!一緒に食べよ!」

 二人で準備していると何やら視線を感じる。
 振り向くとご飯を食べ終えたヨルアノくんが傍に居た。

「あのっ!」
「え、俺?」

 ヨルアノくんに急に話しかけられたラグトさんは驚く。

「急にすみません。ラグトさん……ですか?」
「うん、どうかした?」

 ヨルアノくんは少し戸惑いながら話す。

「三年前に南部の村に来とりませんでしたか?」
「ああ、三番隊で遠征に行った時かな」
「あの時、俺も村に来とってラグトさんに助けてもらったんです」

 真剣な眼差しのヨルアノくんにラグトさんはしばらく考え込んで、思い出したようにパッと顔を上げた。

「ああ!あの家に居た子か!」
「そうです……!顔も薄らとしか見えとらんくて合ってるか分からんかったんですけど……」

 確信を得て安心したようだ。

「あの後アルデンの黒騎士団やって知って、俺もなりたいと思って来たんです」
「え、じゃあ俺を見て入団しようって……」
「はい!あの時は本当にありがとうございました!」

 その時のことは分からないけど、ラグトさんに救われた人が憧れて黒騎士団に来てくれたんだ。

「めっちゃ嬉しい……!わざわざ遠くから来てくれたんだ!」
「イヤマの護衛として訓練はしとって、もしかしたらいけるかもと思ったんです」
「それで入団試験も合格してるんだから凄いよ!わー!ありがとう!」

 ラグトさんとヨルアノくんは固い握手を交わす。
 感動の再会を果たしヨルアノくんは凄く嬉しそうに手を振って去って行った。

「サキちゃん……!」
「ふふ、良かったですね」
「うん!」

 ラグトさんも喜びのあまり私を抱きしめ飛び跳ねる。私は揺れながら彼の頭を撫でていた。
 ご飯を食べ始めてもラグトさんはにやけが収まらないみたいで、何度も私の肩に頭を擦り寄せる。

「へへ……嬉しいな。あの時初めての遠征だったんだよね」
「入団して初めてですか?」
「うん、まだ前には出れないから援護だったんだけど」

 その中で周りの家に取り残されていた人に気づき助けたのだそう。

「勝手に動くし背後取られて怪我するしでめっちゃ怒られたんだけどさ、初めて先輩に褒められたんだ」

 ミスカさんとの思い出もあるからこそ、ヨルノアくんに「ありがとう」と言ってもらえて余計に感慨深いのだろう。

「よし、仕事めっちゃ頑張ろ!今月は忙しいし」
「何かあるんですか?」
「もうすぐ祭りがあるから、黒騎士団はその警備で結構忙しくて」

 祭りと聞いて、盆踊りのような夏祭りが思い出されたが少し違うみたいだ。

「エーテル祭っていうんだ。エーテルはアルデンの国花で、春に種を撒いてその豊作を願う祭りだよ」

 アルデン各地の町でそれぞれ盛大に行われ、家庭でもお祝いをするそう。

「実はサキちゃんの誕生日のお祝いも、エーテル祭を参考にしたんだ。俺たちにとってはお祝いってこの祭りだからさ」

「キラキラの飾りはリュークさんが実家から借りてきてくれた」とラグトさんが言い納得する。
 一日の間に色々考えて用意してくれたんだなぁ……。
 楽しかった記憶が思い出されてついニコニコしてしまう。
 そういえばヴェルくんの誕生日ももうすぐだ。

「お祭りは何日なんですか?」
「16日と17日の二日間だよ」
「……ヴェルくんの誕生日と被ってる!!」
「え!?マジ!?」

 16日……お祭り真っ只中……。

「ヴェルストリアも……どっちかだったら休み取れるんじゃないかな?」
「そう、ですね……。でも皆忙しいのに申し訳ないな……」
「忙しいって言っても警備だけだから!俺たちが見回りしてるっていうのが大事なんだ」

 警察の人が立ってるだけでちょっとドキドキしちゃう時あったから、それと同じ感じかな。

「帰ってきたら聞いてみます……」
「うん……そっかぁ、誕生日……俺一年前はまだヴェルストリアと話したこと無かったんだな……」

 そういえば二人は食堂で会ったのが初めてだったよね。

「サキちゃんが居たから関わりが出来たっていうか、そのうち話はしてたとしてもきっと今みたいでは無いから」
「二人で居る時はどんな話をしてるんですか?」
「……ほとんどサキちゃんの話しかしてないな……」
「え、恥ずかしい……」

 内容を聞きたいけど聞きたくない。

「でも一緒に居て楽しいから、良かったなって思うよ。向こうがどうかは知らないけど……」
「ヴェルくんもラグトさんと話してる時、楽しそうですよ」
「そうかなぁ……?」
「ふふ、とっても仲良しに見えます」

 そんな話をして、夜帰ってきたヴェルくんに躊躇いながらも聞いてみる。

「16日……お祭りがあるって聞いたんだけど……」
「そうなんです……すみません、僕も今日気づいて……。休みは一応取れたんですけど」
「本当……!」
「ええ、でも僕が警備に当たるのがここからだいぶ遠い町なんです」

 全国各地の警備の為、朝から間に合うように前日に到着しなければいけないのだとか。

「なので、サキさんが良ければ前日に一緒に行って祭りを見たらどうかと思って」
「うん!誕生日にお祭りデートだなんて素敵だね!」
「!サキさんと……デート……!」

 ヴェルくんがぱぁっと笑顔になる。
 仕事にも間に合うし祭りも楽しめる、まさに一石二鳥だ。

「夜はヴェルくんたちはどこかに泊まるの?」
「はい、すでに宿が手配されているので」
「「……」」

 二人でハインツさんの所へ向かう。

「それで……サキも同じ宿に泊まれないかと?」
「その日のうちにサキさんが寮に戻るのは時間的にも難しいかと」

 馬車で片道三時間以上かかってしまうそうなので往復だけで一日がほとんど終わってしまう。

「……」
「「……」」
「分かった、宿には団員しか居ないから安全だろう」
「「ありがとうございます!」」
「あと護衛については……」

 やっぱり護衛は必要なんだ……ヴェルくん凄く不服そう。

「今回は人員が足りていないから団員に任せることは出来ない。あそこは王都の騎士もつくから……大丈夫とするか」
「それって……」
「ヴェルストリア、絶対に気を抜くなよ」
「はい!」
「何かあればすぐに他の団員と騎士を呼べ。一人で解決しようとするな」

 ヴェルくんはその言葉を噛み締め了承した。
 こうして二人きりでの誕生日デートが決まったのだった。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

処理中です...