美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

文字の大きさ
151 / 200

ヒューズ宅へ 2

しおりを挟む
 次の日からは邸宅の中や庭でミスカさんとゆっくり過ごしていた。
 寮とは違う環境だから目新しい物も沢山あって、そういうものを眺めているだけでも頭の中が新鮮になるというか、不思議とスッキリした気分になる。

「これは何ていうお花なの?」
「ジーリアと言って北のほうの国が原産のものですよ」
「初めて見ますね!」
「そうだな」

 広いお庭も庭師が二人がかりで毎日手入れをしているのでとても立派でどこを見ても美しい。

「サキ様とミスカ様もお花を育てていらっしゃるんですよね。余っている種がいくつかありますので、お好きなものがあれば貰ってください」
「ありがとう!ミスカさん、行きましょう!」
「ああ」

 また、お爺様の仕事がお休みの日には改めてゆっくりお話ができた。
 隠居したのに?と思ったが、「領を統治している甥の手伝い」をしているそう。詳しくは分からない。

「孫に続きまさかひ孫だとは。私ももうそんな歳か」
「そんな、まだまだですよ!私の居た世界だと結婚も出産ももっと遅くて、それこそひ孫なんて生きてるうちにあえるか分かりませんから」
「そうなのか?」
「昔はそうでもなかったらしいですけど、私の時代だと三十、四十代で結婚する人も普通でした」
「「!?」」

 お爺様もミスカさんも凄い驚いている。

「そうするとやっぱり子供を産むのも大変になりますから、私は早くに皆と出会えて良かったなって思います」
「そうだな、サキの体が一番だ。若いうちでも無理はしないでくれ」

 頭を撫でてくれるお爺様の手は温かい。子供を産むお婆様を傍で見て、育てた彼はその大変さも理解している。

「子供は思った以上に動き回るんだ。いつの間にか部屋の隅に居たりしていたな」
「周りに何も置かないほうが安全ですよね」
「それはそうだが閉鎖的な空間に閉じ込めるのは良くない。親が生活する空間で一緒にいるのが一番だが」

 ミスカさんがお爺様から真面目に教わっているのを私も一緒に聞く。
 こうやって上の世代の人から学んで伝わっていくことなんだよね。
 他に結婚している人にも色々聞いたりして、有意義な話がいっぱい出来た。

 食事の後はミスカさんとお風呂に入る。脱ぎ気しやすい服だけれど毎回彼がしてくれるので私は立っているだけだ。

「個室に湯舟も付いているなんて凄いですよね」
「基本シャワーのみだからな」

 しかも凄いお洒落。ホテルみたい。
 掃除大変そうだなとか思っちゃった。
 背の高い椅子をわざわざ用意してくれていたのでとても有難い。気遣いに感謝しながらやっぱり今日も彼に洗ってもらうのだった。

「髪くらいは自分で……」
「大丈夫だ。任せてくれ」

 お風呂の入り方忘れちゃいそう……。
 綺麗になったところで彼の胸に背を預けながらお湯に浸かる。

「あったかい……落ち着く……」
「この入浴剤というのは良いな。肌が綺麗になるのか」
「艶々になれますね!」

 ミスカさんは自分の肌が艶々になったのを想像して顔を顰めていた。

「私の居た世界には炭酸入りの物とかもありましたよ」
「たんさん?」

 あ、炭酸はないのか。あれは空気を…圧縮?してるのかな。技術が難しそう。

「お湯に溶けると発泡してしゅわしゅわってなるんです。凄く気持ち良いですよ」
「しゅわしゅわ……気になるな」
「飲み物でも炭酸のものがあって、飲むと口の中で弾ける感じで」
「それは大丈夫なのか……?」

 なんだか飲みたくなってきちゃった。いつかこの世界でも作られないかな。
 話し込んでだいぶ長風呂になってしまった。
 火照る体を冷まし、ミスカさんと並んでベッドに横になる。

「今日も楽しかったです」
「それなら良かった」

 でも……。

「……皆に会いたいな」

 ここに居るのはとても楽しいけれど、彼らが居ないとやっぱり違うなって思ってしまう。

「あいつらはそろそろ泣いてる頃だろう」
「ハインツさんも?」
「意外と裏では泣いているかもしれない」
「ふふ……見てみたいな」

 同じ家に住み毎日会えることの喜びと大切さを実感しながら一週間を終えた。


「今度は子供と一緒に来ますね」
「ああ。落ち着いたらで良いから。体に気を付けて」

 お爺様にそっと抱きしめてもらう。

「…やっぱりお父さんって感じもしますね」
「はは、若く思われて嫌な気はしないな。娘でも孫でも私の大切な家族だ」
「はい……!」

 使用人の皆も若干涙ぐみながら見送ってくれる。

「また来るから……そんな悲しそうにしないで」
「いや……もう心配で……」
「サキ様なら大丈夫です!月並みな言葉ですが…頑張ってください!」
「ありがとう……!」

 迎えに来てくれたハインツさんとミスカさんと馬車に乗り込み手を振って邸宅を後にした。

「…サキが人気者すぎる……」
「本当にな……。この可愛さと優しさなら当たり前なのだけれど……」
「ミスカさん、ハインツさん、どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ」

 私は隣に座るハインツさんにもたれ手を握る。

「ハインツさん、私の為にお仕事頑張ってくれてありがとうございます」
「!…ああ。サキの為ならいくらでも頑張れる。随分楽しめたようで、良かったよ」
「はい!朝お爺様に会ったら一番に抱きしめてくれて…」
「……そうか」

 邸宅での思い出も沢山できて、また気持ちを新たに黒騎士団寮での日々に戻ったのだった。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

処理中です...