美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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また一つ先へ

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 ヨルアノくんと付き合い始めて、今日でちょうど三か月。
 元々長い間共に過ごしていて恋人となり物理的な距離も近づいて、私たちは順調に仲を深めている……と思う。

「お邪魔します!」
「どうぞ」

 ようやく我が家に入れる許可を貰ったヨルアノくんは私と過ごす時にたまに来てくれる。
 ユウがお父さんと出かけて家に居ない時にこっそり……というと聞こえが悪いが、二人きりの時間を作れるようにという夫たちの配慮でもある。
 初めて来た時は一応客間に通したのだけれど、最近は私の部屋でソファに座って二人きりでゆっくり他愛ない話をしているのだった。
 しかし今日は私はだいぶ緊張していて、いつも通りの会話の中で上手く話を切り出すタイミングを見計らっていた。

「よ、ヨルアノくん」
「はい!」
「付き合ってから、その……思ってた感じと違う……みたいなのってある?」

 しどろもどろになりながら私がそう聞くとヨルアノくんは少しびっくりした様子で、その後真剣に考えて答えてくれた。

「サキさんの……ちょっと印象変わった部分はあります」
「つ、付き合う前はどんなふうだったの?」
「凛としとって……強い?言うたらあれですけど、俺の目標で憧れです」

 そんなふうに思ってたの!?自分から聞いちゃったの恥ずかしい……。

「私実際そんなにしっかりしてないから……幻滅しちゃった?」
「そうじゃないです!憧れであることには変わりないしずっと強くて美しいです」
「あ、ありがとう……」
「ただ……こうやって照れたり俺のことで精一杯になってくれてんがめっちゃ可愛くて」

 一度言葉を止めると隣に座る私をギュっと抱きしめ耳元で囁く。

「サキさんの色んな姿がもっと見たいです」
「っ……」
「もっと知りたいし、もっと触れたい」

 腕が緩み顔を見合わせると彼は楽しそうに笑った。

「欲張りになってもうた。一回触れると歯止めがきかんなぁ」

 彼は私に対して変わりなく、より好きでいてくれている。その想いを改めて確認して私は口を開いた。

「実はね、夫たちとも話してたんだけど……三人目作ろうかって」
「!」

 当たり前だけどヨルアノくんと恋人の関係の今、妊活はしない。彼とはまだ一度もそういうことをしていないし……。

「全然急いでる訳じゃないから、ただきっかけとして話がしたかったの。今じゃなくてもいつか……私はヨルアノくんと一番近い関係になりたい」

 彼と別れることは私は絶対にしたくない。それだけの信頼をすでに充分寄せているから。
 その考えを伝えると彼は嬉しそうに私を真っすぐ見つめた。

「サキさん、俺と結婚してください」
「……!」
「もう離れる気は無いです。一生サキさんの傍に居たい」
「うん……うん!」

 私は彼の首に腕を回し、彼は私の頭と腰を抱いて二人は唇を重ね合う。

「言わせてもうてすみません。俺もずっとしたかった、ずっと夢見てた」
「ありがとう……っ……ヨルアノくん大好き」
「大好きです……大好きや」

 角度を変え何度も与えられるキスの中でヨルアノくんはハッキリと言葉にした。

「愛しとる」

 私が同じ言葉を伝えることが出来たのは二人の息が絶え絶えになった後だった。


「プロポーズしておいてなんだけど……まだユウには何も教えてないの」

 夫たちは皆話し合いもして了承を得たけれど、ユウの気持ちが何より大切だ

「決まってない状態で話せないですもんね」
「うん。だから一回私からそれとなく聞いてみるね。その後ヨルアノくんから言ってもらいたくて」
「勿論です!」
「ヨルアノくんには凄く懐いてるから大丈夫だと思うけど」
「偉そうやけど自分でもそう思っとるんですよ。この前俺の絵くれたん、ほんま嬉しくて」

 照れくさそうにも喜びを顕わにする彼を見て、その時の飛び跳ねていた様子が頭に浮かびクスッと笑ってしまった。

「それなら良かった!お父さんたちよりヨルアノくんの絵を先に描くくらいだもんね」
「そうなんですか!?」
「あれ、聞いてなかった?」
「はい……せやから団長の視線が厳しかったんや……」

 まあこれに関しては夫たちがだいぶ可哀そうだったので許してあげて欲しい。ヨルアノくんは全く悪くないのだけれど。

「……皆もいつも言ってるの、ヨルアノくんなら大丈夫って」
「!」
「今までは仲間としてだったけど、家族としてもこれから上手くやっていけると私は思ってる。だから安心して、遠慮しないで良いから」
「はい……!」
「何かあったら私に言ってね」
「めっちゃ頼もしいですけど……出来るだけ喧嘩とかせぇへんよう頑張ります!」

 喧嘩……ヨルアノくんが怒っているところ想像できないなぁ。でもちょっと見てみたいかも……?
 私もヨルアノくんの色んなところを知っていきたいから。
 これから人生を共にする彼との幸せな未来を思い描き、隣を見ると目が合い自然と手を繋ぐ。
 私たちはまた新しい一歩を踏み出した。
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