ホームセンター店員、過労死して異世界へ。聖剣もフォークリフトも俺にはただの「道具」ですが?【ウェポンズマスター】のDIY無双

月神世一

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第三章 複合弓と貧乏歌姫

EP 4

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氷結と火炎旋風
​ 『GRUUUAAAAA!』
​ キメラの獅子の頭が大きく口を開け、灼熱の火炎弾を吐き出す。
 同時に、背中の山羊の頭からは漆黒の雷撃が、尻尾の蛇からは毒の霧が噴射された。
 三方向同時攻撃。
 逃げ場を失った冒険者たちが、絶望に顔を歪める。
​「――させねぇよッ!!」
​ ドゴォォォォンッ!!
​ 横合いから飛び込んだイグニスが、愛用の両手斧で火炎弾を叩き落とした。
 爆風が広がるが、竜人族の鱗を持つ彼には微風に等しい。
​「へっ! ぬるい火だぜ! 俺様のブレスの方が百倍熱い!」
「り、竜人!? 助けが来たのか!?」
​ イグニスが前線でヘイト(敵視)を集めている間に、キャルルが負傷者たちの元へ滑り込む。
​「今のうちに下がって! ここは危険です!」
「す、すまない嬢ちゃん……!」
​ キャルルが素早い動きで負傷者を岩陰へと誘導する。
 これで心置きなく暴れられる。
​ 俺は戦場を見下ろす大木の枝の上に陣取っていた。
 手には『複合弓(コンパウンドボウ)』。
 滑車(カム)が限界まで回転し、弦がキリキリと鳴っている。
​「(……ターゲット確認。敵の機動力、および多角攻撃が厄介だな)」
​ キメラは巨体の割に俊敏だ。
 イグニスが斧を振るっても、バックステップで回避し、蛇の尻尾でカウンターを狙ってくる。
 まずは、あの足を止める必要がある。
​「(魔力回路、接続。……冷却(クーリング)システム、起動)」
​ 俺は息を止めた。
 脳内で青いプログラムコードが走る。
 大気中の熱エネルギーを強制排熱。
 矢の先端に、幾何学模様の「四角い魔法陣」が展開される。
​ さらに、丹田から練り上げた【闘気】を矢に螺旋状に巻き付ける。
 魔法による「凍結」と、闘気による「貫通力」。
 ハイブリッド弾頭の装填完了だ。
​「ターゲットロック。……喰らえ」
​ バシュッ!!
​ リリーサーのトリガーを引く。
 滑車の働きで加速された矢は、音速に近い速度で空気を切り裂いた。
 キメラが反応する隙などない。
​「――『凍てつく一矢(フロスト・バイト)』!!」
​ カァァァァァァンッ!!
​ 矢が着弾したのは、キメラの足元――四本の足の中心地点だ。
 その瞬間、圧縮された冷気が爆発した。
​ パキパキパキパキッ!!
​ 液体窒素をぶちまけたような絶対零度の冷気が、地面ごとキメラの四肢を瞬時に凍結させた。
 地面と足が氷の枷で一体化する。
​『GYA!?』
​ キメラが飛び退こうとするが、足が動かない。
 無理に動けば、凍りついた肉ごと千切れることになる。
​「(物理法則だ。急激な冷却は物質を脆くする)」
​ 俺はすかさず通信を送るように叫んだ。
​「イグニス! 今だ! 熱膨張(ヒート・ショック)を叩き込め!」
「おうよ兄貴! 寒がってるなら、暖めてやるぜぇッ!!」
​ イグニスが斧を構え、その場で回転を始めた。
 遠心力と共に、彼自身の体から噴き出す紅蓮の炎が斧に纏わりつく。
 回転数が上がるにつれて、炎は巨大な竜巻へと成長していく。
​「燃え尽きな! 両手斧・全開(フルパワー)!」
​ イグニスは炎のコマと化して、動けないキメラへと突っ込んだ。
​「――『火炎旋風(バーニング・トルネード)』ッ!!」
​ ドゴォォォォォォォォンッ!!
​ 極低温で凍結したキメラの体に、超高温の炎と物理衝撃が直撃する。
 急激な温度変化による熱衝撃(サーマル・ショック)。
 鋼鉄のように硬いキメラの皮膚や筋肉が、ガラスのように脆くなり、砕け散った。
​『GYAAAAAAAAAA!!』
​ 三つの頭が同時に絶叫する。
 炎の竜巻に巻き上げられ、キメラの全身が焼け焦げ、あちこちから血が噴き出す。
​ だが――まだだ。
 さすがはAランク。驚異的な生命力で、キメラは前足の氷を砕き、ふらつきながらも立ち上がろうとしていた。
 獅子の目はまだ死んでいない。
​「ちっ、しぶとい野郎だ! 兄貴、俺の回転が止まった! トドメを!」
​ イグニスが叫ぶ。
 俺は二の矢をつがえようとしたが、ふと眼下を見た。
​ そこには、既に「発射準備」を完了し、クラウチングスタートの姿勢で待機している小さな影があった。
 俺はニヤリと笑い、弓を下ろした。
​「キャルル。……フィニッシュ(〆)はお前に任せる」
「了解です! とびっきりの一撃、行きます!」
​ キャルルが地面を蹴る。
 その足元で、俺が改造した『安全靴・改』のギミックが唸りを上げた。
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