ホームセンター店員、過労死して異世界へ。聖剣もフォークリフトも俺にはただの「道具」ですが?【ウェポンズマスター】のDIY無双

月神世一

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第三章 複合弓と貧乏歌姫

EP 8

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質屋と権利書
 下町の路地裏にある『質屋ドワーフの金槌』。
 鉄格子越しのカウンターには、頑固そうなドワーフの店主が座り、ルーペを目に当てていた。
 彼の目の前には、ルナが作り出した純金のインゴットと、宝石のネックレスが積まれている。
 そのカウンターにしがみついているのは、全身を小刻みに震わせているリーザだ。
「お、お、お願いしますぅ……。こ、これで……お金を……」
 リーザの声は裏返り、顔面は蒼白で、額には脂汗が滲んでいる。
 誰がどう見ても「借金取りに追われて、家の家宝を泣く泣く持ち出した哀れな娘」だ。
 演技指導の必要すらない。彼女は今、本当に(リベラという借金取りに追われて)必死なのだから。
 店主は数分間、じっくりと鑑定を続けた後、ルーペを置いた。
「……本物だな」
 店主が重々しく頷く。
「しかも、こいつは年代物のハイエルフの細工か? 純度も加工も見事だ。盗品じゃねぇだろうな?」
「ち、違いますぅ! おばあちゃんの形見なんですぅ! でも、今日中にお金がないと……マグロ漁船に乗せられちゃうんですぅ!!」
 リーザが半泣きで叫ぶ。
 その迫真(本音)の訴えに、疑り深いドワーフも毒気を抜かれたようだ。
「……まあいい。質草としては一級品だ。相場なら金貨二千枚は堅いが、質入れなら半額の千枚だ。利息は十日で一割。いいな?」
「は、はいぃ! ありがとうございますぅ!」
 商談成立。
 カウンターの奥から、ずっしりと重い革袋が差し出された。
 金貨一千枚。日本円にして約一千万円相当の大金だ。
 店を出たリーザは、革袋を抱きしめたままへたり込んだ。
「し、心臓が止まるかと思いました……。これ、本当に三日で石に戻るんですよね? 私、詐欺の片棒を……」
「人聞きが悪いな。一時的に『担保能力が消失する』だけだ」
 路地裏の影で待機していた俺は、リーザを立たせた。
「行くぞ。次は『仕入れ』だ」
 ***
 次に向かったのは、街外れの安酒場だ。
 昼間から安いエールを煽っている、身なりのいい(だが服は擦り切れている)男がいた。
 没落貴族の男爵だ。
 彼は先祖伝来の土地を持っているが、今は借金まみれで酒に逃げているという情報を、リベラから得ていた。
「あんたが、北の荒地の持ち主か?」
 俺が声をかけると、男爵は虚ろな目でこちらを見た。
「……なんだ貴様は。あの土地なら売らんぞ。あそこは我が家の誇り……」
「金貨一千枚」
 俺はリーザから受け取った革袋を、テーブルにドスンと置いた。
 重厚な音が、酒場の喧騒を一瞬で消し去った。
「即金だ。あの草木も生えない岩山に、これだけの値を付ける物好きは俺たちくらいだぞ」
 男爵の目が釘付けになる。
 喉がゴクリと鳴る音が聞こえた。
 誇り? そんなものは目の前の現ナマの前では紙切れ同然だ。
「……け、権利書はここにある」
 男爵は震える手で懐から羊皮紙を取り出した。
 俺は中身を確認する。間違いなく、ゴルド商会が狙っている開発エリアの隣接地区だ。
「商談成立(ディール)だ」
 俺は権利書をひったくり、代わりに金貨の袋を押し付けた。
 男爵は袋を開け、金貨の輝きを見て狂喜乱舞している。
 彼は知らない。自分が手放した土地が、数時間後に倍の値段に跳ね上がることを。
 ***
 最後の仕上げだ。
 俺は作業着(ポロシャツ)の上に、どこかで見繕った『測量士』風のベストを羽織り、高級レストラン『金の豚亭』へと入った。
 ここは、ゴルド商会の幹部や、情報屋がたむろしている場所だ。
 俺はカウンターの端に座り、わざとらしく大きなため息をついた。
「ふぅ……参ったなぁ。あんな『数値』が出ちまうとは」
 俺は懐から、偽造した『魔力分布図』と『地質調査書』を取り出し、カウンターに広げた。
 そして、独り言のように(だが周囲に聞こえる音量で)呟く。
「北の荒地、ただの岩山かと思ったら……地下深くに『ミスリル鉱脈』と『温泉源』の反応があるなんてな」
 ピクリ。
 近くのテーブルで食事をしていた男たちの耳が動いた。
「こいつは一大事だ。今のうちに土地を買い占めておけば、億万長者だぞ……。誰にも聞かれないようにしないとな」
 俺は慌てて書類を隠すふりをして、その中の一枚――最も重要なデータが書かれた紙を、わざと床に落としたまま店を出た。
 店を出て数秒後。
 背後で、男たちが床の紙に群がる気配がした。
 そして、誰かが店を飛び出し、ゴルド商会の方角へと走っていく足音が聞こえる。
「……撒き餌(フィッシング)完了」
 俺は路地裏で待機していたリーザたちの元へ戻り、ニヤリと笑った。
「魚が食いついたぞ。……さあ、いよいよ本番(オークション)だ」
 俺はリーザの背中をバンと叩いた。
「行け、リーザ。お前は今、この街で一番価値のある土地を持つ『カモ』だ。震えてる暇はないぞ」
「は、はいぃ! もうどうにでもなれですぅ!」
 リーザは権利書を胸に抱き、ゴルド商会の本社ビルへと向かう。
 その後ろ姿を見送りながら、俺は無線代わりの通信魔石に向かって言った。
「キャルル、イグニス。出番(スタンバイ)だ」
『了解ですわ! おほほほ!』
『おう、いつでも行けるぜ!』
 舞台は整った。
 あとは、悪徳商人が欲望という名の落とし穴に落ちるのを待つだけだ。
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